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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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今できる事



「子狐丸。私、今更大変なことに気がついたの」

「どうしたの!?」

「現世では数日とはいえ、学校を休んでるけど大丈夫なのかな…」

「本当にものすごく今更だね」

仕方ないじゃない。色々ありすぎて考えてる余裕もなかったのだから。子狐丸にも一因はあるんだよ?受け入れると決めたのは私だけど…。

なにより、唯一現世と繋がりのあるスマホも置いてきちゃってるんだもん…。

仮に持ってきてたとして使えたか?と言われたらわからない。 

でもテレビが見れてるからもしかしたら使えたかも?


だけど、あのスマホはあくまでも借り物。

オーナー名義で契約してくれている物だから、カフェに置いてきたんだよね。

だってオーナーの意向に背く決断をしているのに、持っていけるわけがない。


「子狐丸は何か知らない?」

「九城の当主代行が瑠璃の保護者として手続きしたから大丈夫」

「当主代行って誰?」

「凪といって、九城家に仕える筆頭家の当主。妖狐のハーフだよ」

「藤崎さんとはまた別の家?」

「うん。凪は東風家だね」

「はい?」

東風って…オーナーも同じ名字よね。珍しい名字だし、まさか…。


「他にもいくつも仕えてる家はあるけど、最大の二家が東風と藤崎」

「もしかしてオーナーって関係者?」

「え?それは知らない。名字が同じってだけだし違うんじゃないかな」

子狐丸にはわからないか…。妖怪は名字とかないらしいし。

次、オーナーに会ったら聞いてみよう。教えてくれるかはわからないけど。


「学校に手続きしてくれたって…何をしてくれたの?」

「そこまでは聞いてない」

雪乃さんに聞けばよかった…。おそらく休学とかそういうのだろうけど、はっきりしないのも気持ち悪い。次に会えたら忘れないように聞こう。


「藤崎さんは無事なの?」

「あいつも九城の家に戻ってるよ。仲間の報告を聞いた限り、信じていいと思う…」

「ほらぁ! だから言ったのに!」

「僕は少しでも瑠璃に危険があると判断したなら看過できないからね」

「そう…」

はっきりと言い切られてしまうと何も言い返せないわね。


「子狐丸の仲間については聞いていいの?」

「…僕が元々刀なのは話したよね?」

「うん。九城に伝わる子狐丸っていう刀でしょ? 私が知っている情報だと、とある家の依頼で三城家のお抱え鍛冶師が打った刀。作る時に妖怪が何人か手伝った…みたいなお伽噺は本で読んだよ」

「それで合ってるよ。依頼したのは九城家で、妖怪を貸し出したのも九城家。最強と名高い五代目九城家当主が所持してた刀だね」

「最強…?」

「瑠璃は五代目の力を継承してる。だから僕が刀に宿り妖怪として目覚めた」

「そ、そう…。 肝心の子狐丸の仲間については?」

「刀に小柄っていう小さな刃物が付属するのは知ってる?」

「鞘についてる小刀?」

「そう。あれが僕の直属の部下みたいな妖怪だと思ってくれればいい」

「私も会える?」

「…次の報告の時、一緒に行く?」

「うん。もし会えるのならお礼言いたいし…」

「わかった。…あまり会わせたくないけど…」

最後にボソッと子狐丸がつぶやいたセリフがちょっと気になった。会わせたくない…?どうしてだろう…。


会えばわかるか。

今は他にも気にしなくてはいけない事がある。それはやっぱり家族の事…。

両親や姉について複雑な思いはあるけれど、こんな結末を手放しに喜べるものでもない。

ひどい扱いを受けてきたとはいえ、一応身内なんだから…。

ある意味、実家から遠ざけられていたおかげで、私は汚い世界を見ないで済んでいたと思えば感謝してもいいかもしれないとさえ思える。


「ねぇ子狐丸、私が今現世に戻るのはよくない?」

「雪乃も言ってたけど、しばらくは後処理とかでごたつくし、巻き込まれないとも言えないからね」

「私にもなにかできないかな?」

「人同士の争いに瑠璃が巻き込まれるのは誰も望まないよ。瑠璃に何かあれば僕を始め、たくさんの人が悲しむ」

「…わかった…」

何かできたらと思ったのに。私はまだまだ無力なのね…。



ふぅ…。よしっ!

落ち込んでても仕方がない。今はこちらで出来ることをしよう。


「瑠璃!! 奈子が!!」

突然叫びながら駆け込んできたのは雪乃さん。まだこちらにいたのにびっくりだけど、それより奈子さんがどうしたの?

もしかして…。

「子狐丸、街のお医者様を呼んできて! 私は奈子さんの家に行くから!」

「わかった!!」

「瑠璃、奈子が…奈子が…」

「雪乃さん、一緒に行きましょう!」

取り乱す雪乃さんを引っ張るように奈子さんの家へ向かった。


雪乃さんは余程慌てて出てきたようで、扉も開けたまま。

お邪魔しますと一声かけて家に上がると、苦しそうな声が聞こえる。リビングだ!

「奈子さん、大丈夫ですか!?」

リビングのソファで苦しそうにしている奈子さん…。源さんは…お仕事だよね。

どうしよう…。先ずは少しでも楽になれるようクッションとかを用意して…。

「瑠璃、奈子は大丈夫なのか!?」

「私にもわかりません…」

身近に妊婦さんはいなかったもの…。

濡らしたタオルで汗を拭いてあげるくらいしかできない。


「瑠璃、連れてきた!」

「ありがとう!」

お医者様は奈子さんの経過をいつも診てくれている人だから任せて平気。

牛鬼という妖怪で、とってもグラマーなお姉さん。 

私達は診てくれてるのを大人しく見守る…。


「お湯とタオルをたくさん用意して! 急いで! 今日生まれるわ!」

「は、はい!」

子狐丸には源さんを呼びに行ってもらい、私は奈子さんの家のキッチンでお湯を用意。

雪乃さんはタンスをひっくり返すんじゃないかってくらい慌ててタオルを出してくれてる。



「お湯、できました」

「ありがとう。すぐにうちの助手が来るから、貴方達は家から出てなさい」

「はい、おねがいします…」 

私達が外に出ると、助手の女の子が荷物を抱えて走ってきた。この子も背はちっちゃいのにグラマーなんだよなぁ。

「あのー、先生は…」

「中で診てくれてます」

「わかりましたぁー。大丈夫ですからぁー安心して待っててくださいねぇー」


雪乃さんと二人、どうしていいかわからず、交わす言葉もなく祈るように待つ。

しばらくしたらドスンドスンとすごい地響きが…。源さんだ! 子狐丸ありがとう。

「連れてきたよ」

「奈子は!?」

「今はお医者様が診てくれてます。今日産まれると…」

源さんは家に飛び込んでいったけど、すぐに出てきた。追い出されたらしい…。


落ち着かない源さんには子狐丸がついててくれてる。

私に今できるのは祈るくらい。


…っ!? そんなの絶対にだめ!! お願い…。奈子さんと赤ちゃんが無事でありますように! 私に力があるというなら二人を守って!

強く強く願った想いは、自身に宿る妖力、それの大きな消費を感じた…。






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