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魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
四章 枯葉に眠る真実の歌
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✿ 第68話(後編):レシートの中身




 



「なーなぁハナサク。あの噂ってホンマなんかなぁ?」

「何の話ですか?」

「アオちゃんから聞いたんやろ、学園に呪使いがおるってヤツ!」



 先生への報告も終わり、あっと言う間に5月に入った。体育祭もいよいよ目前になって来た頃。

 そんな放課後、懲りずに小野田さんを「アオちゃん」と呼んでいる彼からそんな声が飛んできた。同じ図書委員の九条(くじょう)夏樹(なつき)さん、彼が噂話を大好きな事は1年関わってきた私も知っている。



「聞きましたけど、きっとまた噂に過ぎませんよ。去年の夏や秋だって、今の4年生(中1)がそんな話をしていたじゃないですか」

「でも、この前委員会で爆発とかあったやん。ハナサクは怖くないん?」

和泉(いずみ)先生や八雲(やくも)先生……他にも学園には沢山の大人が居るんです。もし居たとしても、直ぐに対処してくれますから」

「大人やな〜、俺はそんな風に思えんわぁ」



 去年の夏の出来事は、私と春風が原因で流れた噂ってのもあるけど。そんな事彼に伝える訳に行かない私は、誤魔化しながらもその会話を続けていた。

 小野田さんから聞いて、確かに最初は驚いた。でもそんな事を気にしていたって仕方が無い事だし、結局あれも魔道具に呪いが込められた影響という事になっている。誰がそうしたのか、それが故意かたまたまなのか……って所は分からないけれど。それも先生たち捜査部の人が対処してくれてるだろう。



「そんな事より手を動かして下さい、今日の返却はまだあるんですよ」

「分かった分かった」



 そう言って笑う彼に、私は軽くため息をついた。

 

 図書委員と言えば、この前春風と一緒に先代聖女様の話を聞く為に画策したけれど、松島先生とはあの日以来会話をしていない。たまに校舎で見かけるけど、先生はうちの学年の教師じゃないから。

 でも、あの日は色々と貴重な話が聞けた。春風から送られたメッセージに内容がつらつらと並べられていて、その中には気になる内容も記載されていたのだ。

 


『昼間さんは学生時代より、護衛の女の人といる時の方が幸せそうに笑ってたんだって。だから上手く行ってると思ってたのに事件があって先生は落ち込んでたんだけど、最近まで海外にいて何もできなかった。って言ってたの』


 

 仲良しな、聖女様と闇魔法師。

 まるで今の私たちみたい。



「どしたんハナサク、体育終わりでバテたん?」

「大丈夫です。いや、バテてはいますけど」

「ダメやーん!」



 そんな嫌な想像なんて直ぐに頭から吹き飛ばした。噂と同じで、こんなのはただの杞憂なのだから。



「……あれ、これ誰かの忘れ物?」

「どれですか」

「ほら。すごい難しそうな紙が置いてあるんよ!」



 九条さんに言われて近づいてみると、そのテーブルの端っこにはオレンジ色のクリアファイル。半透明な中に入っているのは、多分学園で先生が使ってるような書類。細かい文字がビッシリと詰まっていて、色んな本を読んでいる私にも内容はよく分からないものだった。さすが大人、子どもには分からない事を毎日色々こなしてるんだな。



「とりあえず、職員室で先生に渡して来ます。3年生って書いてあるから多分小学棟の物ですし」

「その方が良いよな、俺も行く!」

「私だけでも大丈夫ですよ?」

「いや、職員室って日直でたまに行くぐらいだから、俺も一緒に行きたいんよ。何だかワクワクすんな〜♪」



 行く気満々の彼をそのまま留まらせておく事も無理そうだったので、私たちは図書館から自分たちの過ごす小学棟へと一度戻る事にした。



 *




「1年風組の九条夏樹でーす!」

「花柳咲来です。図書館に落し物があったので、職員室へ届けに来ました」



 この前名乗りをしたばかりだから、高頻度で職員室に来るのは初めてな気がする。私たちがドアの所でそう言うと、その近くに立っていたのは丁度見知った先生だったのだ。



「あれ、九条くんと花柳さん」

「おぉ〜お和泉先生やん! こんにちはっ!」

「こんにちは。図書委員の仕事中だったのかな、忙しいのにわざわざ届けに来てくれてありがとう」



 そう言って私たちの方に歩み寄ると、先生は優しい笑顔を浮かべた。私が「誰のか分からないんですけど、小学棟の先生の物かと思ったんです」と言って、そのクリアファイルを手渡した。しかし私の持ち方が悪かったのか、ファイルに入っていた書類が少しだけ地面に落ちて行ってしまって。

 ひらりはらりと、風に乗って下へ降りてく。その中に1枚のレシートがあったらしく、細く小さいその紙が視界の中心に突き刺さる。そして一瞬、和泉先生の笑顔が固まった。



「……ごめんなさい、すぐ拾いますから」

「こっちこそごめんね、俺も拾うよ」

「はいハナサクっ! これも落ちたヤツや!」

「ありがとうございます、九条さん」



 そのレシートは魔道具の購入履歴。真ん中には『自動保存ペン』と書かれていた。よく売っている有名なメーカーのそれは、偶然にも爆発事故で破裂したあのペンと同じ商品だった。

 偶然なのか、分からないけれど。



「これは先生が渡しておくから、2人は戻っても大丈夫だよ」

「和泉先生、職員室の中は入れんの〜っ?」

「今回は無理だけど、また先生に用事があったらいつでもおいで」



 中まで入りたかったと残念そうに呟く九条さんを横目に、私は「わかりました」と一言だけ呟いた。何も気付いていない風に振舞って、先生の捜査の仕事には一切邪魔をしないように。



 

 

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