表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
四章 枯葉に眠る真実の歌
156/185

✧ 68.5話:笑って欲しい(稲山りん)







 最近、咲来(さくら)の様子が変。



「ねぇ咲来、ぼーっとしてどうしたのーっ!」

「あ、ごめん。なんでもない」

「次移動教室だから、理科の実験行こ〜」

「そうだね、もう行こうか」



 なんでもない。そんな言い訳を、私は今まで何回聞いたかなぁ。

 私は咲来とすずの事が大好きだし、(ひかる)陽太(ようた)の事も大好き。だからずっと笑顔で楽しく過ごしていて欲しいけど、そう上手くは行かないみたい。

 

 別に今だけの事じゃなくて、咲来はよく暗い顔をする。昔は幼馴染がみんなそういう時期もあったけど、今もそんな顔をしてるのは咲来だけ。最近の悩みは……爆発事故の事とかかな。よくぼーっとするようになったのはあの日からだから。それに、昨日の放課後に委員会を終わらせて帰って来てからは更に変。

 それは、体育祭前でへばってるってだけの態度じゃなかった。



「理科の実験楽しみだね〜」

鈴音(すずね)って、結構実験好きだよね」

「うん。陽太も好きって言ってたよ?」

「陽太は前の小学校の時、それこそ遠足みたいにはしゃいでたからなぁ」

「懐かしい……クラス違うからもう見れないもんね」

 

 

 いつも咲来は、隣で一緒に歩いてるのに自分だけ一歩下がってるような……そんな感じ。咲来は私たちと一緒に居たがらない。嫌いだからじゃなくて、好きだから居たがらない。咲来は自分の事を、私たちのを傷つける悪い子だと思ってるから。

 今だってそう。すずと咲来と私で歩いてるのに、咲来の気持ちだけはまだ教室に居るみたい。



「そう言えば今日のお昼ご飯、デザートにミニチーズタルトあるんだって! 私のやつ、咲来に分けてあげるっ!」

「え、いいよ。自分で食べて」

「何となく、今日はしょっぱい物の気分なんだよ〜」



 私がそう伝えると、咲来は素直に「じゃあ、まぁ……ありがとう」とお礼を言ってくれた。胸がポカポカ暖かくなって、私は「いいのいいの!」と明るく返す。そんな様子に、すずも微笑んでて。この光景が、私は大好き。

 

 ねぇ咲来、いつも咲来は私たちに悩みを話さないよね。それが、前の小学校に居た時は悲しい時もあったんだ。折角友達になれたのに、私は悲しい思いをしてる友達に何も出来ないんだから。

 

 でも、それは双子な輝も同じだった。私と一緒に出会った陽太とすずも同じ、咲来は優しいから誰にも話そうとしない。優しいから、自分1人で傷ついて終わろうとしちゃうんだよね。

 私はちゃんと分かってるよ。誰にも言った事無いけど、小学1年生の頃に咲来が泣いてる所を見た事があるの。その隣には、輝も座ってた。



『最近泣いてなかったのに、どうしたの?』

『……』

『嫌な事されたなら、俺が怒るよ!』

『……違うの。私ね、また上手く出来なかった。りんちゃんが、折角楽しくお話してくれたのに……どうしても話すのが怖くて、どうしたら良いか分からなくて。ねぇ輝、私の魔法、誰にも痛いって思わせたりしてないよね』

『大丈夫だよ。咲来の魔法は普通だし、誰も傷つけないって。咲来にそんな事出来るわけないじゃん』

『そう、だよね……絶対、そうだよね』



 あの時は知らなかったけど、小5になった今なら分かるの。咲来は闇の魔力があるから、私たちと話すのが怖かったんだって。



「……どうしたの?」

「ううん、早くお昼食べたいなーって。ねぇすず?」

「そうだね。あと1時間頑張ろ〜」

「おーっ!」



 今の咲来は、自分の魔力をどう思っているんだろう。魔力のせいで、私たちから離れようとしてたの? 私は本人に聞かないし、無理やり話して欲しいとも思わない。それでも1人で抱え込まないで欲しいって思っちゃうんだから、やっぱり私はワガママな子なのかも。




『……あのね。私、この人と相棒契約したの』

 

 

 懐かしいな、もうあれも1年前になっちゃうね。春ちゃんと相棒契約したって聞いた時、本当に嬉しかったんだよ。だって、私たち以外とあんな風に喋ってる所なんて初めて見れたんだから。段々春ちゃんへの敬語も無くなって、他の同級生とも喋るようになって。最近は春ちゃんとライバルにもなっちゃって、学園で笑ってる日も増えた気がする。


 きっと咲来にも、困った時に頼れる人が出来たんだよね。好きだから言えない〝家族や私たち(幼馴染)〟じゃなくて、誰にも言えないような事も相談出来るような相手。

 私は幼馴染の事が大好きだし、出来るなら私が相談相手になりたかった。お手伝い出来るならなんだってしたかった。でも、ちょっぴり悔しいけど、私にそれは無理だから。

 

 大好きだから、ずっと笑ってて欲しい。でも、これをみんなに直接言ったら恥ずかしがるかもしれないから……だから、私はこうやって態度で伝えるの。私が笑ってるとみんなも笑顔になってくれるし、とっても心がポカポカになって、私も幸せな気持ちになれるの。



「ねぇ、私のタルトもあげよっか」

「鈴音がそれ言い出すと、だいたい最後は5人分が私に回ってくるんだけど」

「あははっ、咲来ってば愛されてる〜っ!」

「もう……りんまで茶化さないでよ」


 

 今の悩みも、昔から続いてる悩みも……全部全部、咲来の中から晴れて無くなってくれますよーに!





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ