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魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
四章 枯葉に眠る真実の歌
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✤ 第67話(中編):湖までの小さな冒険





 大きな虎がすやすやと眠っている。毛が白くて縞模様は黒いホワイトタイガーと言う動物で、名前は『にゃこ』と言うらしい。確かに、こうして寝ている姿は猫っぽくてすごく可愛い。その後ろに居るのはライオンで、フサフサのたてがみが風になびいている。凄くカッコよくてつい見惚れちゃうけど、名前は何処に書いてあるんだろう。

 

 そう思って少し辺りを見渡すと、近くにその子の名前が書いてある看板を発見した。性別や生まれた経緯・ライオンについての説明の下にあるのが付けられた名前だ。私はその文字を目で追いかけながら、少しずつ声に出して読み上げた。

 


「……みゃんちー?」

「なんと言うか、ここの動物園ってどの子も可愛い名前よね」

「分かる〜癒されるお名前って感じ。向こうお猿さんの名前も『テッキー』だった」

「めっちゃ絵本に出てきそう!」



 めいと(のぞみ)が返事をすると、私も2人に言葉を返した。草と動物の匂いを感じながら、私は中に居るその子たちを眺める。

 園の中にはもちろん普通の動物の方が多いので、猫みたいなこの子たちも魔生動物ではないらしい。でも普通の動物を見れるのも面白いし、何よりみんなと来ているのが好奇心を掻き立ててくれる。私以外の班の子も定期的にすれ違ったり、たまに同じ場所を見ていたり。学園祭と似てるけど違うような、今しか味わえない特別な雰囲気が漂っていた。



「ひゃぁあ〜〜っ!」



 突然後ろから大声が聞こえて、私たちは3人で一斉に振り返る。声の方に視線を移すと、そこには目をキラキラと輝かせてはしゃぐ千鶴の姿があった。目の前に居るのは数匹の熊……だけど、どうやらただの熊じゃないみたい。



「この子たち火魔力の魔生動物だよ! 毛色が赤っぽいし、この赤ちゃんは少し朱色っぽい感じなの!」

「本当だ、熊さんもやっぱり可愛いなぁ〜」

「ちょっと怖いけど、自分と同じ魔力が宿ってると思うと親近感があるわね」



 千鶴(ちづる)の声に2人が返事すると、私はスマホを取りだしてから「写真撮っても良い?」と聞いてからパシャリと写真を撮った。もちろん虎やライオンの写真も撮影済みだ。この中に居る熊の親子はちょうど遊んでいる最中みたいで、赤ちゃんが親の上に乗ってゴロゴロと転がっている。その様子を眺めていると、めいの表情が瞬く間に解けて行った。



「かっ、可愛いじゃな〜い」

「めーちゃん、動物の親子が遊んでる所見るの大好きだもんね」



 そんな会話をしながら、私たちは先輩のメモ書き通りの場所へと向かって行った。帆高(ほだか)先輩の話によると、この動物園の端の方にある湖スペース……白鳥ボートに乗れるそこら辺が1番めぼしい場所なんだとか。と言っても、幻の動物がどんな見た目かも知らない私たちが発見して「見つけた!」と思えるかは分からないけど。

 

 それでも私は、こうやってみんなと探しながら歩いてるだけで楽しい。何気に花柳と先に見つける勝負してるってのも楽しいし、今日はもうずっと楽しい尽くし。ドキドキと高鳴る心臓に従いながら、頭の中ではスキップをしつつみんなで並んでその場所へ向かった。

 道を歩きながらすれ違うクラスメイトに手を振って、休憩所に集まっている先生とお話して、たまにみんなとスマホで写真を撮って……そして、相棒とぱったり鉢合わせる。



「どうもこんにちは」

「……何で話しかけてくるの?」

「誤解がある言い方やめてよ! それじゃ、私たちが会話もしない冷えたライバル関係だと思われるじゃん!」

「いや、今は勝負してるんだから喋らない方が良いと思うんだけど」

「あ、そっか」



 私がえへへと頭を搔くと、花柳(はなやぎ)はため息をつきながら目を伏せた。相棒の班メンツはいつもの3人組、りんちゃんと鈴音(すずね)ちゃん。私は最近この3人組を信号機トリオと呼ぶようになっている。理由は単純で、この子たちの目色が緑・黄色・赤の信号機似た雰囲気だからだ。

 我ながら良い命名だと心の中で腕を組みながら頷くと、千鶴はウキウキとした声色で花柳に話しかけた。



「こっちは結構良い感じだけど、そっちは見つかりそうなの〜?」

「どうでしょう。良い感じかは分からないですけど、私たちもそこそこ進んでますよ。兄や姉から探した時の話を聞いたので」



 まずい。よく考えたら花柳は2つ上のお兄さんが居るし、同じ班で回ってる鈴音ちゃん・りんちゃんも兄弟が上に居るって聞いた事がある。今の今まですっかり忘れてたけど、つまりこの3人もだいぶ情報を仕入れてる訳だ。

 私は一瞬狼狽えたものの、自分のスマホに眠っているメモ書きを思い出しながら声を張り上げてみせる。



「ふ、ふぅん……まぁ信号機トリオも良い線行ってるのかもしれないけど、こっちだって負けてないもん!」

「信号機トリオって何」

「とにかく絶対見つけちゃうから! ねっめい、希!」

「え!? そうね、まぁ私が居るんだから見つけてみせるわよ」

「うんうん。私たちも頑張ろ〜う」



 希の掛け声が耳に入ると、千鶴は勢い良く「オーッ!」と手を掲げた。すると鈴音ちゃんが「咲来(さくら)、りん。私たちも負けてられないねっ♪」と言いながら満面の笑みを浮かべ、りんちゃんが「そうだねっ!」と言いながら大きく頷いた。

 私たちはそんな決意を胸にしつつ、それぞれの場所へ向かう為に別々の道へと足を進めた。

 

 そもそもこの勝負。最初に受け入れたのは花柳じゃなくて、りんちゃんと鈴音ちゃんだ。だから2人の方が乗り気だし、どっちかと言えば元々私と2人の勝負だった。結果的に他のメンバーはウチらに巻き込まれた感じだったけど、みんな楽しそうにしてくれててホッとした。



「ちーちゃん、さっき買ったお菓子いる?」

「わーい食べる食べる!」

「千鶴。私のアイスもあげるわ」

「えっ良いの? めいってば太っ腹〜!」


 

 私は右に並ぶ3人の会話を、一歩後ろから静かに眺めていた。さっきの出来事をかみ締めるように。

 今何より幸せなのは、うちの班に居る3人が信号機トリオと普通に会話をしてる所を見れた事だ。私は聖女で、3人は盲信者……入学した頃だったら、あの子たちとあんな風に話すなんて無かったから。少しずつ変わり始めてるのは、きっと私だけじゃない。

 立場や肩書きだけで見る事を、学園の人が段々と辞め始めてる。見ているのは肩書きの何も関係ない相手の中身……私や花柳はもちろん、盲信者の事だって特別視していない。魔法の適性や史実も関係無く、ただお互いを見合ってる。



「菜乃花、なんでそんなにニコニコしてるの?」

「んふふっ何でもないよ〜」

「えぇーそれ1番気になるヤツじゃーん!」

「内緒内緒〜っ!」



 千鶴にツンツンと腕を突かれながら、私は声を漏らして笑っていた。木陰を歩くこの空気が本当に心地良くて、人影の少なくなった湖までの道をみんなで一緒に歩いて行った。




 *




「ここが、菜乃花の言ってた湖ね」

「うん。でも帆高先輩によると、この先の何処に居るのかは分からないらしい」



 湖は広く、端には白鳥ボートが何個か置かれている。周りは草の生い茂る公園って雰囲気で、漫画でよく見るお姫様のピクニックする場所って感じだった。水面には太陽の光がキラキラと反射していて、お姫様が居ても全然おかしくないぐらいに綺麗な景色だ。



「じゃあとりあえず、右側から探してみよう!」



 千鶴の言葉に私たちは頷くと、本格的に幻の動物を探し始めた。草むらの中はもちろん、遊具の中や木の上に椅子の下・建物の裏なんかの色々な場所に目を見張る。まるで今の私たちは、4人の小さな探偵だ。

 でも中々見つからず、そこら辺に居るのは野良の小鳥ぐらい。それでも可愛いこの子たちをつい写真に収めていると、千鶴がこちらの方へ歩きながら呟いた。



「この小鳥たち、魔生動物だね。マップに無いし飼われてる訳じゃ無さそうだけど」

「確かに、ちーちゃんの目の前の子は羽が青っぽいもんねぇ」

「こっちの鳥は緑と黄色ね。風と土の魔力を宿しているのかしら?」



 そう言われてふと見返すと、確かに四元素魔法の色っぽい羽の子ばかり。たまたまと言うには出来すぎてる気がするけど、動物園だから偶然じゃないとも言いきれない。

 私たちはうーんと考え込むと、しばらくその小鳥たちとにらめっこをした。しかし何の答えも思い浮かばなかった私は、静かになった空気の中でつい願望を漏らす。



「……ねぇ。こんな時に急なんだけど、みんなで一緒にあのボート乗らない?」

「本当に急ね!?」

「だーって私白鳥ボート好きなんだもん! 任せて、昔弟とお姉ちゃんの為にブイブイ言わして漕いでたからさ!」

「良いね、なのちゃんに賛成〜」

「私も。めいも乗るでしょ?」

「わ、私はみんなが乗るなら行くわよ……」



 そんなこんなで、幻の動物探しは中断して白鳥ボートに乗る事に。この動物園にあるボートは2人ずつしか乗れないので、グーパーで別れて私は希とペア・めいは千鶴とペアになった。







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