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魔法使いの相棒契約  作者: たるとたたん
四章 枯葉に眠る真実の歌
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✤ 第67話(後編):水面に映る宝石







「安心してね(のぞみ)、私コレ漕ぐのめちゃ上手いから」

「わ〜い。ありがとう、なのちゃん♪」



 案内所に向かって、ボートの中に2人ずつ乗り込む。大人は少し窮屈そうなこのサイズも、私たちには少し大きくてピッタリだ。



「じゃあ行くよー!」



 その言葉に彼女が頷くと、私たちは足元のペダルを段々と動かし始めた。足が走った時のように交互に踏み込むと、ボートも前へと進んで行く。湖の上にはさっき居た小鳥と綺麗な水面が広がっていて、煌めく羽や水をずっと見ていたくなる。吹き抜ける風が少し暑い日差しに心地良くて、隣に座る希も明るい表情で景色を眺めていた。



「白鳥ボートってこんな感じなんだね、私初めて乗ったよ」

「そうだったんだ、でも初乗りが私とで良かったの?」

「良いに決まってるよ〜。お友達と遠足乗れたなんて、最高の思い出だもん」



 そう言って喜びを浮かべる希に、私は釣られるように笑顔を返した。それからは足を止めて写真を撮ったり、向こうの2人とすれ違って喋ったり、他にもボートに乗る一般の人や学園の子たちが来たり。途中で信号機トリオ(花柳たち)も視界に入りつつ、私は湖の上で優雅に過ごしていた。頭の中ではこのボートにパラソルが刺さっててサンドイッチを食べてるような……そんな漫画のお姫様的な感覚で。

 しばらく乗ってそろそろ降りるか、と言う頃。隣でギイギイとボートを漕いでいた音がパタリと止まったのだ。



「どうかしたの?」

「……あのね、私がなのちゃんに助けて貰った日の事、覚えてる?」



 それは多分、年明けの頃に彼女が先輩から絡まれていた時の事。めいと希が話していた所に割って入って、その後寮で話を聞いたんだよね。

 私がその事を思い出しながら静かに頷くと、彼女は目を伏せながら少しずつ話し始めた。



「あの日まで、私はずっと黒寮の人……特に、花柳さんの事を少し避けてたの。私の中で闇魔法師は怖い人で、闇魔法は呪いに繋がってると思ってたから。でも、なのちゃんと仲良くなって、あの子とライバルだって言い争いながら笑ってる姿を見て……私、ずっと間違ってたなって思って、恥ずかしくなったんだ」



 前にも、千鶴がこんな話をしていた気がする。やっぱり、ずっと向こう(人間世界)で魔法と関わりの無い生活をしていた私と違って、魔法を知って歴史を知る程そう思うのかもしれない。それに、盲信者家庭の人は親の人がお話してくれるから……聞いたお話を怖いと思っても当然なんだよね。

 その怖いって気持ちを、私は否定出来ない。私がずっと嫌だったのは、それと私たちを直接繋げられて変な態度を向けられたからだもん。



「なのちゃんとお友達になれて、自分の見方が変わったと思うの。学園に来て少し大人になれたのかもしれないけど、きっと……なのちゃんのおかげだから。だから、いつもありがとうって言いたかったの」

「えぇ、私はお礼言われる事なんて何も……」

「そんな事言わないで。友達にお礼を言う事に細かい理由なんて要らないよ、今言いたくなったから伝えたんだもん。だから、ありがとう」



 そう言って、彼女は膝に置かれた私の手に自分の手をそっと重ねた。数秒視線が重なって瞬きをし合っていると、それだけで何故か笑いが込み上げて来る。笑いと言うよりは、多分嬉しいって気持ちだろうか。ぽかぽかと暖かくて、柔らかい。

 


「こちらこそ。いつもありがとう、希!」



 そう言いながら口角を上げて居ると、段々と何処かから音が飛んで来た。水の流れる音でも鳥のさえずりでも無い、人の声。後ろに近付いたそれにバッと勢いよく振り返ってみると、そこには……。



「居た、幻の動物……」

「えぇ!?」



 私の呟きに驚きの声をあげた希は、私の背中から窓にひょっこりと顔を出す。すると、耳元から「わ、」と漏れたような音が響いた。それを見ているのは私だけでは無くて、周りのボートに乗ってる人たちや学園の子たち・さっきまで居た公園辺りに居る人も視線を送っていた。



『ホォォ、ホォ〜?』



 パッと見は普通の白鳥だけど、その子は全然普通じゃない。水面に反射した光に照らされたその羽は、6色に輝いていたからだ。その色は、二大魔法(光・闇)四元素魔法(火・水・風・土)の固有色……まるで虹色の宝石みたいだ。その鳥が魔生動物なのかは分からないけど、周りにはさっきの小鳥たちが集まっていて、本当にお姫様の世界みたいな光景が広がっていた。



「なのちゃん、写真写真!」

「あっそっか……鳥さん、写真撮って良いかな?」



 目と鼻の先に居るその子。私の言葉が動物に伝わるかは分からないけど、写真を撮る度相手に確認を取るようにしていた私にとっては自然の流れで。いつも通りにその問いを投げかけると、鳥は数秒経った後にパァっと腕を大きく広げてくれた。

 言葉は通じなくても、何となく『是非撮って頂戴』と言われたような気分で。私が写真を撮っていると、周りの子たちもスマホを掲げているのが遠目で目に入った。



『ホォ、ホォオォォ〜』



 しばらく経ってから大きく鳴くと、その子はスイスイと向こうの方へ泳いで行った。動いている間にも光は無数に反射していて、その羽の色は違う色へとオーロラのように移り変わる。周りで泳ぐ小鳥たちも、何だか楽しそうに鳴いていた。辺りには、6色の魔力の光がふわふわと飛んでいるような気がした。



「希、絶対あの子が幻の動物だよね?」

「絶対そうだよ、だってとっても綺麗だったもん!」



 ボートから降りて時間が経ってもその余韻は消えなくて、案内所の人も「あの鳥が来たのは数年ぶりなんですよ。皆さん、ラッキーですね!」と言いながらニコニコと笑っていた。奥の方でも「広報に絶対出さなくちゃっ♪」と言っている従業員の人が見えて、凄く珍しい事だったんだと実感した。

 希と2人でぐーんと伸びをすると、丁度前には千鶴とめい。2人もボートから降りたらしく、私たちが来た事に気付くとズカズカと早歩きをしながら迫り寄った。



「ちょっと2人とも、あの鳥見たっ!?」

「幻の動物見つけちゃったじゃない私たち、しかもあんな近くで!」

「なのちゃんがあのタイミングでボートに誘ってくれて良かったね〜」



 希がそう言うと、千鶴とめいは立て続けに私に「ありがとう」と感謝をし始める。さっきから照れくさい空気に少し顔を暑くしながら「全然だよ〜」と返事をすると、4人で目を合わせながらケラケラと笑った。

 周りでもその鳥についての話題で持ち切りで、一般の人も学園の子もみんなが笑って話してる。もちろん、公園の辺に居た信号機トリオもはしゃいでて。ここに居るみんなが同じ光景を見ていて楽しそうにしてる。ただ幸せなこの空気に触れながら、私は写真欄に残るあの鳥をじーっと眺めた。



「折角なら、動画も撮らせて貰えば良かったなぁ」

「写真でも凄く綺麗じゃない。何だか宝石みたいだわ」

「探してるのも凄く楽しかったよね〜」

「めっちゃ楽しかった! あの鳥もその内帰って来るかもしれないし、いつかまたみんなで動物園に遊びに来ようよ。ねっ菜乃花(なのか)!」



 明るく言葉を投げる千鶴に、私は一瞬声を失った。またみんなでって言葉が、段々と心の中に染み込んで……どうしてか分からないけど、少しだけ泣きそうになった。



「うん。絶対、また来ようね」




 

 

 

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