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6話 私はミゼロ。よろしくね

「上まで20メートル以上ありそうだぜ……。結構深くまで落とされたな」

「白沢君を下敷きに出来たお陰で、ボクたち無傷だったよ〜。あーよかった」


のしかかる成人男性2人分の重みと、一切悪気が無い上に安堵のため息をまでつく音が白沢の耳に届いた。


「色々と突っ込みたいところはあるけど、とりあえず二人()無傷で良かったよ……」


藤樹(ふじき)最澄(もずみ)を体の上から落とすように、体を起こした。


「さすがJAMICの特殊営業部だな!スーツでその身のこなしは俺ら企画部には無理だわ」

「フリーメイソンにも営業行ったことある男って噂聞くほどだしね〜。本当に頑丈でしぶといって有名な白沢君だ」

「特殊営業先の情報は教えられないから肯定も否定も出来ないけど……。他部署の奴らは僕の変な噂流しすぎだよ……」


魔王城エントランスから、トラップ魔術で落とされた地下通路を見渡しながら白沢は、社内に振りまかれた自身の噂に呆れていた。


「しっかし、こんな所あったんだな、魔王城に。初めてこんなダンジョン来たわ」


藤樹が目を丸くしながら、地下通路を見渡した。

大人三人が横に並んで歩いても、まだ余裕があるほどの大きさの通路。

薄暗いが、一定間隔で土壁に取り付けられた蝋燭ーー。


正確には蝋燭の芯部分に光を放つ燃焼術式が埋め込まれており、空気中の魔素を取り込むことで光体を放つ"炬術(かがりじゅつ)"である。


これは、取り込む魔素の属性によって発光体の色が変わるのだが、この"炬術(かがりじゅつ)"に組み込まれた術式は、水の属性魔素のみを取り込み燃焼するようになっており、光は淡い青色を放っていた。


「初めてって……。今までに無かったってこと?どうやって抜け出すのさ……」

「ふっふっふ。まぁ、まて白沢。俺達には俺達の魔王城攻略法があるんでね」


そう言って藤樹はリポーターカードをズボンのポケットから取り出した。

リポーターを起動すると光が灯り、起動画面でJAMICの企業ロゴマークが映し出された。

そして鼻歌を歌いながら藤樹はインターネットに繋いだ。


「えーっと【ウルミラ 魔王城 2105年 最新 攻略方法】でググッて……っと。お、出た出た」


全員に見えるようにリポーター上のみに映し出された画面を、仮想パネルの出力に切り替えた。

ブン、と音を立てて空気中に立体映像が映し出される。


「ネット上に転がってるんだ……。魔王城の攻略方法って」


異世界(ウルミラ)に来ても地球上の電波を拾ってネットにアクセス出来るのは有難いことだが、何だかロマンの欠片も無いように感じる。


実際旅行先で迷った時にも同じように、ネットで調べたりするから変わらないといえば、変わらないか……と白沢は自分を納得させた。

異世界であり、地球上の旅行であり、迷ったらまずはネットで調べるというのは最善の手であることは間違い無いのだから。


「……無いな。終わったわ」


魔王城攻略ページに一通りアクセスした藤樹がやるせなく呟いた。


「ツイッターは?ハッシュタグで検索しても出てこない?ボクたち以外にもウルミラに来て、リアルタイムアタックでもやってる物好きがいるかもよ?」


最澄が自分のリポーターを取り出し、ツイッター上で攻略者がいないか検索を掛け出した。


「ん〜ダメか〜。日本からウルミラに旅行で来た人は直近じゃ見つからないや。日本経由で異世界(ウルミラ)行きのチケットって往復300万円ぐらいするもんね〜」


検索を掛けてみたものの、最澄の思惑通りに攻略の手掛かりとなりそうなツイートや情報はヒットしなかった。


「やべぇ、マジで困ったな。俺、スカーレットデモンズのライブだけは絶対に逃したくねぇ……」

「ボクは漆黒の戦歌姫(いくさうたひめ)様の下僕(ファン)なんで、まだ時間はあるけどね〜」

「リリス派の人間って何で自分の事を下僕(しもべ)っていうんだよ」

「下僕と書いてファンと呼ぶんだよ。モノ知らずだな〜。白沢君はどっち派?」


攻略方法すらお手上げな状態にも関わらず、藤樹と最澄は魔族公演のライブにばかり気持ちが行ってしまっていた。

そんな二人に対して既に見切りをつけて、進む方向と通路の特徴を調べていた白沢が最澄の声に振り向いた。


「こっち。風が微かに吹いてるのと、足跡の靴先が全部同じ方向に向いてる」


そう言いながら白沢は薄暗い通路の先を指した。


「さっすが!」

「でも確信は無いよ。この足跡、踵の部分は女性のヒール部分で削れてる。しかも女一人分。奇妙なのは、同じ足跡ばかりが同じ方向に残ってること。他にも足跡があれば判断付くけど、一つだけじゃ……」

「構わんさ!ライブ開始までに絶対、地上に上がるぜ!!」

「お~!」


白沢が指した方向を何の疑いもなく進み出した藤樹と最澄。

そもそも、魔人達の案内が始まる前に待ちくたびれて突っ走った二人に原因があるのだが。


「大きな迷路みたいだね。この地下通路……。いや地下ダンジョン?」


白沢が燭台に照らされた通路を進みながら、あたりを観察した。

土壁は抉り取ったかのような粗さが目立ち、地面には壁の一部が剥がれたのであろう泥が落ちていた。

何処までも道は続きそうで、何処にも出口がなさそうな永劫に続く迷路を思わせる。


「ねぇ、藤樹。もし、このまま出られなかったらどうなるの?」


地下ダンジョンを奥へと進みながら、白沢は後ろから着いてくる藤樹に問いかけた。



「一応、暮夜ノ刻……、地球時間でいう夜中の23:00に"彷徨人(さまよいびと)の救済"って言って、全スタッフが救助隊として探しに来てくれるから、日本帰還時までずっと魔王城に取り残されるってことは無いけどーー……」

「けど?」


藤樹の詰まった言葉に、白沢は聞き返した。


「"彷徨人の救済"で、魔王城のスタッフに捕まったら、救助費用ってことで780ダールをチェックアウト時に支払はないといけないんだ」

「日本円だと……今日の為替が85円だからーー約67000円?!」


リポーターにインストールされている異世界通貨と日本円の為替をチェックして、計算した白沢。

その大層なお値段に驚きの声を上げた。


「がっつりお金絞りとってくるね……さすが観光地。容赦ねぇ……」

「そこまでして金が欲しいか?!って思うよ。ボクの聖女象は銭ゲバ的なイメージかな〜」


魔王城であれ、何であれ経営する者としては金銭のみならず利益を優先することは間違いないのだろうが、

そんな魔王城の総支配人である聖女のイメージを最澄は守銭奴だと吐いた。


この世界(ウルミラ)の大戦を収めた神聖なる人間に対してそんなイメージを抱いていいのだろうか。


「まぁ、何と言うか……。旅先で遭難者を助けるのと変わらない救助システムなんだろうけど……」


白沢は頭を抱えながらも自分を納得させた。



「貴方達、そこで何をしているの」



突然、陰鬱な地下ダンジョンには似つかわしくない凛とした女性の声が響いた。

振り向けばいつの間にか背後にフードを被った、ローブ姿の人物が立っていた。


「こ、こんにちわ」


白沢が驚きながらも、挨拶を返した。

顔は目深く被ったフードで見えないが、その落ち着いた物腰と声から20代前半くらいの女性だろうと推測した。


「君も魔王城に遊びに来た観光客?ボク達は今日、このホテルにチェックインしたばかりのトラベラーズなんだ〜」


最澄の緩い間延びした声を聞いて、ローブの女性は応えた。


「ーーそう、貴方達は"観光客"なのね」


ぽつりと、ローブの女性は答えると共に、肩に入れていた力を抜いた。


「姉ちゃんも観光で来たのか?それなら俺たちと一緒だな!早速城のトラップにはまっちまってさぁ〜。良かったら俺たちと攻略していかない?」

「待って、藤樹」


藤樹が軟派な口調でローブの女性に手を伸ばそうとした時、白沢が止めに入った。



「な、なんだよ白沢……いきなり」

「その口振りからすると……君は観光客じゃないように聞こえるんだけど、違うの?それにーー」


白沢はローブ姿の女性が不自然に右腕を背後に隠しているのに、違和感を感じていた。

最澄の言葉に、彼女は力を抜いたようにも見えたが、彼女の芯にはまだ自分たちに気を許していない僅かな警戒心があったことを見抜いた。


「君は何か、武器を隠し持ってないかい?」


白沢の言葉に藤樹と最澄の表情が硬くなった。


「隠しても無駄だよ。昔、営業で世界で最も危ない国ランキング1位の国に単身行かされたこともあったからね。こと殺気立ってる人間や、自分たちに害を(もたら)す可能性がある人間を見抜くスキルは磨かれてるんだ」


営業マンとして得た"対人を見抜く能力"や"他者が己に抱く感情を察知するスキル"が長けているのだと白沢は自信を持って答えた。


『お、おい、最澄……やっぱり営業部の人間やべぇ……やべぇよ……』

『あははぁ〜ボクたち営業部として入社しなくて、ほんとに良かったね〜。多分死んでたよ』


穏やかながらもお互いに殺気立ち、対立する白沢とローブ姿の女性から離れた所で藤樹と最澄が声を抑えてでウィスパートークを繰り広げていた。

そして自分たちが所属する企画部署の有り難みを思い知った。


「ーー私はレンジャーよ。男性が3人も揃ってこんな所で立ち止まってたから……」


ローブ姿の女性は隠していた武器を見せた。

豪華な宝石が埋め込まれた短刀だった。

炉術の光が刃に反射して怪しく光った。

まだどこか白沢達を訝しんでいるのか、彼女は慎重に答えた。


白沢も彼女の持つ武器からは目を離さないように、言葉を選んで返した。


ーーもし彼女が、その短刀を振り翳すなら、僕は二人を守るために、やる。


相手の手の中に自分の命に関わるものがあるようなら、決して警戒を解いてはいけない。

それは旅人として地球上を巡っていた時に、強盗や夜盗に襲われそうになった経験から学んだ。


「こんな所ーーってことは、やっぱりこの足跡は君の足跡ってこと?もしかして君も迷ってる?」


白沢は地面に残った足跡と、ローブ姿の女性が履いているブーツのヒール部分が酷似しているのに気付き、尋ねた。

武器を仕舞って欲しいのは山々だが、逆に変に警戒されても困る。

まずは当たり障りのないトークの中から、彼女が何者なのかが知りたかった。


「この地下ダンジョンは魔術での近距離転移により、移動できるようになってたの。私は途中まで進んでたけどーー」

「はっはぁ〜なるほど!偽の近距離転移術に引っかかって降り出しに戻ったってことか!」


藤樹が指をぱちんと鳴らし納得が言ったように答えた。

同じ足跡が幾つも残っていた理由がわかった。


「レンジャーって言うのは何?」


聞きなれない言葉に、白沢はローブ姿の女性に質問した。

なるべく知らない言葉は、現地と思しき人間の口から直接聞いておきたかった。

突っ走りがちな藤樹とへらへらした最澄がイマイチ信用できないというのもあったが。


「余暇を楽しみに来た観光客とは違って、この魔王城のどこかに眠る財宝の部屋を探してる者のことよ。私はある物を探してるの」

「それって、ホテルにある物を勝手に盗りにきた泥棒って、僕には聞こえるんだけどーー……」

「観光客の貴方たちからしたらそう聞こえるでしょうね。でも、魔王城にはかつて大戦で失われたとされる宝物や魔術書が沢山眠ってるとも言われてるわ。例えばーー戦争の中で魔族に略奪された品々とかね……」


所謂トレジャーハントというやつだろうか。

ローブ姿の女性は表情はどこか憂いに満ちた声で答えた。


「たまに同じ財宝目当てにばったり遭遇したレンジャー同士で、殺しあうってのもよくある話しだから。私が警戒してたのはその為」


ローブ姿の女性は手に持った短刀に目を向けた。

しかし、まだ彼女の体勢にはぶれる事のない一本の軸が入っており、攻撃へと移れる布石があった。

普通に立っているようで、身のこなしには隙が無い。

白沢は目の前にいる女性は一般人ではなくどこかでそういった戦いの知識を得たか、自分と同じように経験から学んだ旨があるのでは……と考えた。


後ろの二人、藤樹と最澄はそんな事を考えるよりも、女の子というだけで頭の中の興味は一杯一杯そうだったが。


「僕たち観光客がそんな血生臭いレンジャー達の抗争に巻き込まれることはないんでしょうか……」

「私たちレンジャーは観光客なんて相手にしてないもの。あくまで同じ獲物を目的とするライバルだけが敵よ。ま、巻き込まれたら不運としか言いようがないわね。ここ、地元の人間からは自己責任ホテルって言われてるもの」


ローブ姿の女性の言葉に白沢は笑顔のまま固まった。


「まぁ、旅行先での事故や事件に巻き込まれるのも自己責任だよね……。僕のいた世界でもそうだったし」

「"僕のいた世界"ね。なるほど」


白沢のある言葉にローブ姿の女性は、これまでの会話に嘘が無く、彼らは信頼出来る人物と判断したのか素性を明かす事を決心したようだった。

短刀を鞘に戻し、懐に仕舞った。


的確で判断の早い女性だと白沢は下した。


こういう場面でも人を見極めることに場慣れしているーーと。


「貴方達はこの世界の人間じゃなくて本当にただの観光客のようね。別の異世界から来た客人……。"営業"だなんて聞きなれない言葉に、その服装から嘘偽りはなさそうだとは最初から思ったけど……。こんな場所だし、ごめんなさいね」


聞き慣れない"営業"という言葉と、白沢の着ているこの世界では馴染みのない服装(スーツ)にも合点がいったのだろう。

ローブ姿の女性は、これ以上の警戒は無用と踏んだのか、顔を隠していたフードを剥ぐった。


「おっほ!めっちゃ美人!」


真っ先に食いついたのは藤樹だった。


「初めまして、私はーー……ミゼロよ。ミゼロ・フラメルダ。よろしくね」


ミゼロと名乗った女性は隠されていた素顔を暴くと共に、自身の名と自己紹介を簡潔に述べた。

癖の無いしなやかな紺碧の髪、透き通った金の瞳。

白沢が異世界(ウルミラ)に来て初めて出会った異世界の美しい女性(人間)だった。


そしてローブの下から見え隠れする肢体に思わずごくりと生唾を飲んだ。


「な、なに?そんなに見つめて……。貴方達の名前は?」


ミゼロが少し頬を赤らめ、戸惑いながら白沢達に質問を返した。


「ご、ごめんね。凄く綺麗な人だったから見とれちゃった」


白沢は照れながら素直に彼女の容姿を褒めた。

確かにホテルの出迎要員として、おもてなしをしてくれた女性型の魔族も十分美を備えた存在であったが、

彼女ーーミゼロにはアジア系の顔立ちに近く、肌の色も日本人と同じ色を持っていたためか、自然な親しみを持ちやすい美しさがった。

髪の色だけは地球上では見ない色立ちだったが、そこもまた魅力的だった。


下山田に聞いた通り、初めて出会ったウルミラ人の女性がこんなに美しいなら、

この世界に住む女性達は皆、容姿端麗かもしれない。


最も、人間の遺伝子は自分とは遠い遺伝子情報を求めるという言い伝えもあるから、異国の人間に対して皆美しいと感じることが多いのはそれが由来の可能性もある。



地球上で例えるならば、「やっぱ海外の人って皆美人だよなー」だとか「外人は皆イケメン!」というような固定概念がもたらす結果と同じだろう。


そんな自制と自重の意味を含めて、野暮なことを片隅で考えながら白沢は自己紹介をした。


「僕は白沢伊予(しらさわいよ)。伊予がファーストネームだから、イヨって呼んでよ」

「イヨ……。わかったわ」

「そして後ろに隠れてた2人がーー」


白沢が親指で後ろに下がっていた藤樹と最澄を指した。


「俺は藤樹俊。シュンが名前だ。よろしく!」

「えーっと、ボクは最澄照道だよ〜。発音難しかったらテルって呼んでよ」


2人が自己紹介を終えると、改めて白沢は握手するために手を差し出した。


一瞬、こっちの世界でも握手による挨拶は根付いているのかと不安に思ったが、ミゼロは疑問に思うことなく、その手を握り返してくれた。


その手は魔人の少女に握られた時よりも温かく、ちゃんと人肌として感じることができた。

彼女がまさしく自分達と同じように生きている、と実感できる体温がちゃんとあり安心した。


そう思える程、白沢にとって魔人の体温は冷たく、どこか不気味であった。


「一応、聞いておきたいんだけど貴方達はどこの世界から来たの?」

「日本だよ」

「そう、異界番号001の……日本からね。異世界から遥々ようこそ、ウルミラへ。私も少し日本語を喋れるわ」


そう言ってミゼロは翻訳魔術の術式を解いた。


「『マジ萌エ聖女サマ。二次絵ダケデモ癒サレルワー。アー、マジ神』……美しき聖女、その肖像画であれど我ら全ての人類を救い給ふ。嗚呼、神の如くーー……という意味でしょう?」


拙い片言で、歪曲しまくった日本語を喋り終えると、ミゼロは再び翻訳魔術を発動させた。


「誰なの?!こんな間違った日本語と翻訳教えたの?!!誰なの!?」


白沢が愕然としながら叫んだ。


「多分研究部の奴らじゃないかな〜。あいつらウルミラに来る度、あらゆる面で布教活動してるって聞いてるし」

「研究部のオタ共のせいで文化侵略受けてるじゃん!!!ウルミラ!!」


「でも事実、魔術世界のウルミラに科学技術の提供してるのは日本の変態……じゃなかった、魔科学者達だししょうがないかもな」


輪を作り肩を組み、ミゼロには聞こえないように会議の如く三人は会話を行った。


「あの、もしかして日本語ちょっとおかしかった?」


ミゼロが眉を下げて、聞いてきた。

日常会話では到底使えない、ちょっとどころじゃ無い程歪んだ日本語です。うちのオタ研究員共が多大なご迷惑をお掛けして申し訳ございませんーーなどと注意する気も起きず、とりあえず白沢はウルミラ共通語(エスペラント)


平気(ル・アルシェ)問題ないよ。(フィッツェ)


と返した。


「あら、ウルミラエスペラント上手。それぐらい発音が上手なら、そこそこ良い線の魔術師になれるわよ」

「本当?でも僕、こっちに来たばかりで自分がどれだけ魔素分解できるかも、どの属性魔術が得意なのかもわから無いんだ。世界酔いも酷かったし」


この世界での魔術の発動の仕方は魔科学者の三枝に聞いた。

大気や地中に漂う、魔素とよばれる地球には存在し無い元素。

それを呼吸器官や皮膚、体外から体内へと取り込み血中に溶け込ませる。

ウルミラの魔術師が肌を露わにした大胆な服が多いのもこの為だ。

少しでも多くの魔素を効率良く、取り込む為である。


魔素が血中内で分解されると、魔力へと変換され体内に蓄積していく。


その分解速度や分解可能な魔素は人によって異なり、分解できなかった魔素は再び体外へと放出されてしまう。

分解され、魔力へと変換された魔素こそがその人物の得意な属性となるのだ。


そして、こればかりは血液型と同じで生まれ持ったモノ。変えることは出来ないのだーーとも。


「そうなの?私、こう見えても魔術学士の資格あるから、貴方の属性診断やってみるわよ」

「それは有難いなぁ。君との出会いの記念に早速観て貰ってもいいかな?」

「えぇ、もちろん。複合属性の診断までは時間がかかるけど、得意属性一つに絞った簡易版なら歩きながらでも出来るから、進みながらやってみましょう」


いつの間にやら意気投合していた白沢とミゼロ。

出会い頭に、お互いを注意深く警戒していたのが嘘のようであった。


もちろん、それらは白沢の無害そうな笑顔と、相手に不信感を抱かせる事をさせないという営業トークとスキルもあってこそであったが。


「なぁ、最澄。俺もミゼロちゃんと話してぇのに、全く入り込む隙がみえねぇんだ!!つーか白沢の独り占めじゃねーか!」

「さすが営業部だなぁ、白沢君は。ボクたち置いてけぼりだね〜」


既に良いムードが出来上がってる、二人の姿を藤樹と最澄は恨めしそうに見つめ、

その背中を追った。

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