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【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第18話 学祭バトルレボリューション その18

@悪学部


「ヒャッハー!」


「ヒャッハー! ぐへへ」


 (ワル)学部とは! いろんな人材を世間に放つ当大学でも一際異彩を放つ「(ワル)学」を学ぶ学部である! 悪について学ぶことにより悪に落ちることがなくなる、というコンセプトの元「悪役レスラー」「好感度の低いお笑い芸人」など必要悪を排出する! そのため、「やってはいけない行為」=悪行について知り尽くしているので、、悪学を学んでいる彼らは実は常にわきまえる善人である。


「ウヒヒヒ上玉だぜぇ」


 モヒカンに革ジャンの『北斗の拳』の世界によくいるヒャッハーたちがお出迎え。しかし! 悪学部でワルそう、ということは、つまり真面目に学んでいる優等生! ヒャッハーたちは絶対に一線を超えてこない。絶対に安全な人材、むしろ本当にヤバい悪学部学生から我々を守る盾、悪学部選抜の成績優秀者なのである!


「どきなザコ共!」


 気風のいい声を張り上げ、コートに袖を通さず羽織るタイプの女性が登場。ヒャッハーが整列する。


「また会ったね、悪学部の、下田だよ!」


「アレお前卒業したんじゃなかったの?」


「したよ! 正確にはOGの下田だよ。主に千葉県で展開するドラッグストア、ヤックスドラッグで働いているプロの(ヤク)流通(ルート)レディだよ!」


 バァ~ン!


「まだまだアタシが面倒を見てやらなきゃいけないんだよ! さぁしっかりやりな! でも、もう無理と判断したらアタシが強制的にネタを終了させるよ!」


「では、下田さんは笑ってしまった場合は、千葉県追放ということで」


「それは無理な相談だね! 可愛い後輩のためには笑ってあげることもしないとね!」


 誰よりも善人! 文学部(ウチ)の陣内先輩と取り換えてもらえないかなぁ。あ、そういえばもう陣内さんは文学部ですらなかった。


「頑張ってくださぁい。では、こちらもゲストを紹介します。学祭お笑いグランプリ優勝のお笑いガチ勢、ミツビシのリーダー、タカギさんです」


「タカギです」


「タカギさんも笑ったら即退学していただきます」


「全然かまわないっすよ。絶対に笑わない自信ありますもん」


 高城(タカギ)君とは、高城(タカシロ)くん、高城(タカジョウ)くんとお笑いトリオミツビシを組み、お笑い芸人を目指すコント職人である。しかしストイックさとお笑い愛が強すぎるあまりに甘ったれたお笑いや媚びた笑い、本音を言えばひな壇、大喜利さえも前向きではない、ライブのネタが命の根っからのコメディアン! そして実際、結果を出している。突き詰めれば彼は「芸人」ですらないのだろう。「コント職人」。それ以上でも以下でもないのだ。


「強気ですね」


「っていうか俺は学内で笑ったことがない」


 そう……ミツビシというユニット名、実は由来はタカギくんのトガり具合を現わしているのではないかという説もあるほどなのだ……。ちなみにタカジョウとタカシロは一般的な笑いの総合商社的芸人希望であり、ネタを書くのはタカギに任せっぱなしだがフリートークや大喜利ではタカジョウ、タカシロの方が強い。


「それでは一組目、どうぞ!」


 仮説ステージのカーテンがサッと開き、野球帽、短パン、丸メガネの見たことあるビジュアルが。


「ワーイオイラは謝罪会見大好き少年だよォ~! 謝罪会見って最高だよねぇー! アレェ? こんなところでリズム謝罪会見発表会があるぞ! 僕が見なきゃ誰が見るってんだい!」


 凡リアクション。これならまだ誰も退学せずに済みそうだ。そして例の曲と同時に七三にスーツの男子が登場、リズムに合わせてマイクで口パクで謝罪。サビに向かうにつれ、感極まっていくが……。


「下げなぁーい! サビで、頭、下げないのぉー!?」


 ブルース・リーのカンフー式のお辞儀でふざける。


「誠意が見られないよォー! 謝意が感じられないよォー! ……ちょっとテレた! シャイだけに!」


 凡リアクション。ヤクルートレディ姐さんがでっかい赤いボタンを押すと「カンカンカーン!」とゴングが鳴りカーテンが降りる。強制終了!


「星野だけちょっとヤバかったか?」


「にゃんこスターのフォーマットがもうツボっちゃうんだよね」


「それでは、タカギくんに評論をいただきましょう」


 タカギくんがメガネをクイっと上げる。


「いやぁ、もう論ずるに値しないです。この先もこのクオリティで誤差程度なら笑ったとしてもそれ別の理由で笑ってるから。えー、まずにゃんこスターのネタですが、そもそもの話をすると俺はにゃんこスターのネタ自体は非常に高く評価しています。シンプルながら奇抜なアイディアで、テンション任せではあるけれどもキレイにフリを利かせている。ただ、今のはにゃんこスターのネタを見て、『にゃんこスターがウケている』からネタをパクったのであって、『何故にゃんこスターがウケたのか』、それを全く考えていない。きっと今の人達は、どこかでにゃんこスターを観たとしても、もしそこでウケていなかったらパクってはいないでしょう。ネタの構成、本質を見るのではなく、ウケた、という結果しか見ていない。要するにウケたネタをパクれればいいって心構えなんですよ。いわば盗人です。ハリウッドザコシショウが爆笑取ってたらハリウッドザコシショウやってますよ」


「フフッ」


「なんすか? 何がおかしいんですか?」


 タカギくんが良崎に突っかかる。


「いや、真面目だなぁって思いました」


「好きなことにマジになっちゃいけないんですか?」


「くふぅ」


「なんなんすか?」


 ハイジさんもうっかり息が漏れる。


「いや、いいんだよ。これは悪学部のネタで笑ったら即退学だろ? タカギくんで笑っても別に大丈夫だろ?」


「ルール上はタカギくんで笑っても大丈夫です」


「っていうか雨宮も今ちょっとやばかったもんな」


「いえビンビン大丈夫ですよ! わたしは真剣な人を笑うなんて悪趣味なことはしません!」


「はぁうっ」


 英雄先生陥落! 雨宮さん、そのフリは卑怯だろ……。


「次、行きましょう」


 デケデンデンデン。


「どぉうもぉ。流しのギターと」


「ガルガルガルガルガル!」


「喉の潰れたプロレスラーの漫才です」


 凡リアクション。ジャラァ~ンと流しのギターがかき鳴らす。


「ガルガルガルガルガル~ザリザリザリザリ~」


 流しのギターの演奏でカラオケスナックで歌うように雑に歌うプロレスラー。


「えー、一番好きな趣味を仕事にしてはいけないというのなら」


 そして流しのギターがプロレスラーの歌を棒読みの同時通訳。


「ギャリギャリギャリギャリギャリギャリ~」


「えー、一番好きな女を嫁にするな」


 ネタのクオリティがひどい。そして、真剣な顔でメモを取るタカギくん。ダメだ、タカギくんが真剣になればなるほど笑えてくる。ハイジさん、良崎、小林氏、星野、英雄先生がギリギリ。見事に性格が悪い順に受けている。その後2分ほどネタをやったところでヤクルートレディ姐さんが強制終了。


「ヒドいなアレ。ヒィドい。あ、もうネタ終わってるからいいんだよな?」


「これはタカギくんにご意見伺いたいですね」


 タカギくんがメガネをクイッ。


「リズム芸なのにリズムがあってないです。あと冒頭で説明しなきゃなんないネタならすんな、ってことがまず。で……」


「はふぅ」


 陣内―退学


「ふぉお」


 良崎―退学


「かっ」


 英雄先生―東京都追放


「んんっ」


 ヤクルートレディ姐さん―千葉県追放


「なんなんすか!?」


「いや、まだ『まず』、なんだろ?」


「そうですよ。今のネタの問題点はまだこんな程度じゃない!」


「ツッッ!」


 英雄先生―東京都追放(2回目)


「なんなんすか!」


「いや、続けてくれよ」


「では、続きましてまだある程度聞き取れているという点で」


「ふふっ!」


 良崎―退学(2回目)


「うぅぷ」


 マスカラスマン―退学


「なんなんすか!」


「いや、お前の言ってることに同意してるだけだ。ネタもヒドかったが、確かにあのモノマネもヒドかった」


「誰の真似をしてるかわかる分、ヒドさが伝わるんですよ。わたしたちは本物の滑舌と声質の(ノロ)いっぷりを知ってますから。ふと思い出して、本物の方で笑ってしまいました。危なかったです! あと水原さん! 偽善と善は全然違いますよ! くだらない情で東京都追放なんて憂き目をあなたが見てはいけません! 不憫に思って笑おうとしたでしょう!」


「大丈夫よアンナちゃん。もう大丈夫」


 一番の刺客はタカギくんだった。

 次。デケデンデンデン。今度はサックスを持った男と元気そうな男。


「新垣結衣。略してガッキー!」


 プァー! とサックス。


「俺た」


 プァー


「ッッッ!」


 元気そうな男の声が伴奏のサックスの音量でかき消される。小林氏、ガチ退学の危機!


「してビッキー!」


「???」


 肝心なところが聞こえなかった。


「そんな俺たちが新垣結衣に投げつけたいもの! それは」


「オッケェイ、ももたろぉう印のキビ団子(ダァンンゴ)ッ!」


「ガァッキィーにももたろう印のキビ団子投げて懐かせて~」


「カッカッカッ」


 陣内―退学(2回目)


「カッカッカッこれはタカギくんのご意見……早く伺いたいですなぁ」


「くっ」


 英雄先生―東京都追放(3回目)


「笑ってない人にも!」


「オッケェイ、ももたろぉう印のキビ団子ッ!」


「キビ団子食わして笑わせるゥ~。あんなことこんなこといっぱいあるけどぉ~みんなみんなみんな、叶えてくれる、不思議な団子(ダンゴ)でかなえてくぅれぇるぅ~。ナイスなボディをイジ」


 カンカンカーン! 下ネタの予感を察知した瞬間にヤクルートレディ姐さんが強制終了!


「えー、まず言いたいのは、ああいうヤツが芸人を名乗るせいで、つまんねぇ芸人が大学生と揶揄されるんですってことですね。テンションとトーンだけでネタやっててもそのうち体力が追い付かなくなるしあの芸風ができるのは大学生のうちだけ」


「……ッ!」


 雨宮さん―退学

 求められてもいないのに勝手に評論を始めてしまうタカギくんの熱き心が雨宮さんを初退学に追い込んだ。


「ふふ、いくつまで芸人やるって前提なんでしょう」


「くっ」


「うっ」


「はぁっ」


 星野―退学

 水原―東京都追放

 ヤクルートレディ姐さん―千葉県追放(2回目)


「今のは雨宮で笑ってるから。雨宮で笑ってるから! そうだよな。卒業してもお笑い続けるんならあの芸風は……限界が、来るッ」


 星野自滅。タカギくん、相当頭に来てる。この状況がわかっていないというのなら! それはそれでもうタカギくんも相当センスないぞ!


「あとあの芸風で下ネタやるまで追い詰められてるって時点でセンスないからもうやめろ」


 ギリギリ全員持ちこたえる。


「次の組行きましょう」


 デケデンデンデン。

 カーテンが開くと同時に青いスーツで揃いの漫才師が登場。あのツッコミの方は知っているぞ! かつて水原さんを全力で傷つけるあだ名をつけた極悪漫才師のヤスだ! 詳しくはウェブで!


「もうまどろっこしいことは抜きですわ! 笑ってくだせぇ! 頼まぁ! お願ぇでさぁ! 笑ってくださぇ! もう俺たちこれ以上は無理ですわ……」


 前回全く存在すらわからなかったボケの方が両手を合わせて懇願。我々のところにやってきて全員の顔色を見渡した後、水原さんの前で正座。


「笑ってくだせぇ……俺たちもうこの手段以外で笑い取れないんですわ……」


「やめろやお前! 必死で頼み込んでどうにか通るなら俺たちこんな学部、いや、こんな大学にいない! 頼み込みで東大法学部入ってるわ! そんでそっからメディア王やってイタリアで首相やるわ!」


「ベルルスコーニ……」


 トランプが出てきた今、ベルルスコーニはもう古い。


「でもお前もわかってるはずだろもう無理ですわ……ネタじゃこの人ら笑わせられませんわ……俺らにできそうなのはもう優しそうな人見つけることだけですわ……」


「それはわかってるけど雨宮さんにしとけ! その人は放っといても笑うわ! その人は情けは人の為ならずって言葉知らんただのお情けヤリマ」


 カンカンカーン! ヤクルートレディ姐さんの強制終了!


「ヤス! 出て来い! アタシがこの劣化ウラン製ハリセンで罰を下す! 許せん! お前に悪学部を名乗る資格はない! お前はただの邪悪だ! 辛辣なこと言えば面白いとでも思ってんのか! 出て来い! アタシが下す! 出て来い! 話しよう。話しよう!」


 本当に悪学部を愛していただけにヤクルートレディ姐さん涙交じりの本気の怒り。後輩が真の邪悪に落ちたことが許せないのだろう。この人も水原さんと同じく、とことん優しい! そしてこの発言はさすがの水原さんも許せなかったのか、何も言わず呆然としている。水原さんが許そうとしないという時点でもう誰にも許されないのだ。


「水原さん、本当にすまない」


「ヤクルートレディ姐さんが謝ることはないですよ……」


「本当に、すまない!」


 こんなの考えた星野がやっぱり一番悪いのかな。星野は少しの間でいいからヤクルートレディ姐さんの元に弟子入りすべきだ。


1位 花屋敷チーム―退学者0

3位 リーベルトチーム―退学者2人

3位 水原さんチーム―退学者1人、東京都追放1人

4位 雨宮さんチーム―退学者2人、東京都追放1人


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