【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第13話 学祭バトルレボリューション その13
「フゥー。待たせたなお前ら。じゃあ続きをやるぜ!」
小休止終了。桜井、円谷くんも戻ってきて、席を外していたハイジさんが戻ってきたのだが。
「どうした。学祭を、やるぜ」
コイツ、ニセモノものじゃね? よく見ると出っ歯だし、あと身長が足りないのと目がつりすぎてるのとそばかすがあるんだが。
「……」
「……」
「……」
「……」
良崎、小林氏、星野、桜井、円谷くんあたりも異変に気付く。
「陣内さんだよね?」
「おうリーベルト。俺が陣内だぜ」
「おかしいなぁ。本当の陣内さんなら昨日の約束を覚えているはず」
「ん?」
「日給ですよ日給。昨日、わたしたちに日給出すって言ったじゃん」
確認のためのヒッカケがエグい。
「あ? ああ、そうだったかな」
チャリンと良崎がポケットから小銭を投げた。反応するニセハイジ。
「おっかしいなぁ。本物の陣内さんなら1万円以内は金じゃないと落としても拾わないはず。拾うの? おっと、また5000円落としちゃった」
「あ、ああ俺は拾わないぜ!」
「しかしわたしの基準ではいくらだろうと金は金なのでわたしは拾うけどね?」
「おうリーベルト」
「……ん? なんで呼び捨て? なんでタメ語? 陣内さんは新一年生だから今年からわたしに敬語って言ってたよね?」
「き、気が変わったぜ! 俺はお前に今まで通りタメ語で、行くぜ! それからリーベルト!」
「あぁん?」
鬼のメンチ。
「金を粗末にするようなマネをするな。少なかろうと金は金だ。アフリカの子供たちは食いたくても飯が食えないんだから、嫌いなものでも食べろと、というとお前はその子たちだって腹いっぱいだったら残すとか屁理屈をこねるだろう。だが金はメシと違って腐らない。いくらでも溜めておける。大事にするんだぜ! 金を粗末にするような人間は安く見られる。お前はそんな安い女じゃないはずだぜ!」
「……いいこと言っちゃいましたよ」
感心の一撃!
「わたしはこの陣内さんでもいい気がしてきました。クリーン陣内ですよコイツ」
ニセモノとは断定したが、いいことを言ってしまった。
「でも、似てるわね。こういう言い方していいのかはわからないけれど、絶妙なニセモノ具合がとっても面白いわ」
水原さんも認めるニセハイジ。
「水原さん、いや水原。お前近くで見るとかわいらしい顔してたんだな」
「おい調子には乗るんじゃあありませんよ」
「すまねぇ、ぜ! リーベルト!」
連携の形も作り始めた。が!
「ヘイガァイズ! 学祭二日目、『食塩ポンデライオン』ことキョウ☆ヘイでぇす」
自撮りをしながら部外者が乱入。おそらく自撮りで注目とお金を集めるタイプの若年層だ!
「あぁ、コイツですか」
「『食塩ポンデライオン』でぇす」
「?」
「説明するわ!」
バァ~ン!
「おはよう。明星です」
「おはようございます」
「おはようございます」
クソガキはスルーで警備に任せる姿勢だったが英雄以外全員最敬礼であいさつ。
「彼には『食塩ポンデライオン』というあだ名をネットで与えたわ。まさか本当にそれだけでこんなに勝負してくるとは思ってなかったけど、彼本人は『食塩ポンデライオン』が面白いと思ってるの。面白いかどうかのジャッジはみんなに任せるけど」
「食塩ダイブからの放置はヒドイですってぇ。でも面白かったからオッケェイでぇす」
全員で奥義“TOTSUGI”!
「?」
「ああ、そういえばニセ陣内は知らなかったんですね。コイツは、まぁ、ここは多分バッサリカットなんで気にせず進めましょう」
「そうはいきませぇん。そこの偽陣内先輩~。ドラゴンボール持ってるんでしょ?」
偽陣内がスッっと懐から四星球を取り出し、無言の肯定。
「僕も持ってるんですよドラゴンボールぅ~。まだ1つですけどぉ」
そしてキョウ☆ヘイくんの手にも一星球。
「力づくでも奪い取りまぁす。今回紹介したいのは、このテーザーガン! アメリカの『ジャッカス』をご存知ですかぁ? 彼らは防犯グッズを自分たちに使って効果を試す動画から始めて映画何本も撮りましたぁ。ジャパニーズジャッカス!」
ジャキンとテーザーガンを偽陣内に向けるキョウ☆ヘイくん。佐渡ヶ島のSッ気のあるマドカちゃんといい、この大学には追い詰められると玩具の銃を抜くバカが多すぎる。キョウ☆ヘイくんもうすうす気づいているようだ。俺、あんまりすごくないなぁ……って。
「これは、もうイレギュラーなハプニングだよな?」
「ああ。どっちにしろ女の子のいる場所でそんなもの遊びでも振り回しちゃいけないぜ」
円谷親子がそれぞれ良崎と雨宮さんを庇うように一歩前に出る。
「『ゴーストインザシェル』」
「『ブレードランナー』」
おぉっとザワつく一同。まさかって感じだが初タッグ! 円谷栄治&円谷英雄の円谷親子!
「フフ、父さん、雑魚相手に能力は使ってやらないんじゃないのかい?」
「これ以上チャチャが入らないようにするためにはまず一人目には見せしめになってもらうしかあるめぇ。安心しろ。拳骨で済ましてやるからよ」
「カックイイー」
しかし!
「引っ込んでな円谷親子。俺がやって、やるぜ!」
偽陣内が暴徒と化したキョウ☆ヘイくんと睨み合う。そうだろう。本物なら! 本物のハイジさんならそうするだろう。
「来いよキョウ☆ヘイ! テーザーガンなんて捨ててかかってこい!」
そっからはもぉう、雑魚のケンカよ。服のつかみ合い、決定打にならないポカスカパンチの撃ち合いで観ている女子すら「アレ? 参加しても勝てるんじゃない?」と思えるほどお粗末なケンカをした! 剣道をやっていた雨宮さん、なんか鍛えてそうな花屋敷ヒナタはきっと勝てただろう。
「ガァイズ!」
拮抗した雑魚のステゴロだったが、キョウ☆ヘイくんが凶行に走る。捨てたはずのテーザーガンを拾い、偽陣内に向け発射! ビビビビビビビと電流が走り、感電した偽陣内がガクガクと震える!
「ヘイガァイズ! ハハハ!」
高笑いのユーチューバー!
「俺たちは助けられない」
「ああ。君が、陣内一葉として戦い始めた以上、ボクたちは水を差せない。それが、陣内一葉を名乗った君の責任であり、そして陣内一葉という名の信頼だ。負けるわけがないんだよ、あんな男に、陣内一葉が」
円谷親子は助けない。
「助けを求めるなら」
「陣内くんにだ」
ビビビビビビビ……。
「た、助け……るな!」
偽陣内、持ちこたえる。助けを呼ばず、陣内一葉の名を完遂するつもりなのだ! なにしろ一生ハイジさんのニセモノをやっていればなんと陣内家の財産と水原さんが手に入る。ここで感電ぐらい差し引きすれば消費税以下なのだ!
「頑張れ! 頑張れ偽陣内!」
「そうだ頑張るんだ偽陣内! 動画で使える程度に持ちこたえるんだ! 使えばキョウ☆ヘイくんの自爆だぞ!」
あぁーと鳴り響く偽陣内コール! しかし、思いは届かず、偽陣内、ついに倒れこんでしまう……。バチィ。
「……」
「お前は……ッ!」
「俺が陣内一葉だ」
偽陣内のピンチに本物登場! 偽陣内から伸びるワイヤーをむしり取り、芝居がかったオーバーリアクションで帽子を脱いで水原さんにトス。ブチ切れたまなざしをキョウ☆ヘイくんに向ける。その狂気はどっこいどっこい!
「円谷くん」
「オッケイ。『ゴーストインザシェル』」
バチィン! と円谷くんが超能力の無線スタンガンでキョウ☆ヘイくんのカメラを破壊。これでももうキョウ☆ヘイくんにとってこれ以上ケンカをする理由がなくなった。彼にとっては取れ高命!
「さて、カメラがぶっ壊れたところでド派手にブチのめしてやる。食らえ必殺! 金吹雪!」
パァン! とハイジさんが地雷のように吹き飛び、紙幣の吹雪が舞う! 急いで拾う良崎、星野、小林氏! 恥を知れ!
「ん? なんだコレ千円札かよ!」
「ケチんじゃありませんよ啖呵切って! 万札を吹雪かせ!」
しかし、面白い映像が欲しかったキョウ☆ヘイくん。金を必死で拾いかき集める先輩、金と化した先輩と面白い展開起こりまくりなのにカメラはもうない。彼も潮時を悟った。我々に背を向け逃走体勢に入るが、その影からニュウゥ~と本物ハイジさんが飛び出してドラゴンサイドキック! 一撃でKO!
「グッ、やっぱ本物は違うぜ……ッ」
ズタボロになった偽陣内がバツが悪そうにその場を去ろうとしている。
「待て」
そしてハイジさんが偽の肩を掴んで強引に引き留めた。
「待ってください陣内さん! 偽陣内は、何も悪いことしていないんですよ!」
「そうだ! お金を大事にする出来た人だ。許してやってくれないか?」
まずお前らはその手の千円札を捨てろ。
「まずお前らはその手の千円札を捨てろ」
ほらな。
「何も俺は偽を殴るとも何とも言っちゃいねぇよ。だが、次はない。偽、コイツをくれてやる。これでお引き取り願おう」
ハイジさんがキョウ☆ヘイくんの一星球を奪い取り、偽陣内にプレゼント。
「偽陣内! 大学ドラゴンボールを2つも持っていると大変だろうが、自分の名前と姿で頑張れよ。江戸っ子にゃ浪花節は似合わんのよ」
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
「よし。つうことで、まだ一回もアドバンテージ取ってない雨宮チーム。アドバンテージ使えよ」
!!! このクリーンハイジ、まさか、偽陣内は、ハイジさんの手先!? 変態デンテストの悪印象を払拭するために一芝居打った自作自演の可能性が急浮上!
「……ッ今ここで決めるのか!? 聞いてない! 桜井、とりあえず作戦板! って、こんな急に使う予定のアドバンテージなんか用意してねぇんだよ!」
バキィっと桜井の側頭部に星野コークスクリューパンチが炸裂! しかし鉄人桜井にはノーダメージ、星野が拳を痛める。
「ッ“ブタ”だ“ブタ”! “超リアルブタのモノマネ”だ! 去年もやったろアレだ!」
星野さんヤケクソ! “超リアルブタのモノマネ”とは、学園アイドルコンテストでやるべきではない競技である。四つん這いになりブタ鼻を装着し、デフォルメしないリアルで醜いブタのモノマネを渾身でやりきるという「かわいい」「美人」の真逆に位置する「醜さ」を競う競技である。昨年、この競技で雨宮さんはトップ通過、しかし、この競技を提案した鬼畜お姉さんは、自身の演技順を最後に設定し、「他の候補者を徹底的に醜く」させた上で、自身は棄権することで、点数とアドバンテージを放棄する代わりに他の候補者に“ブタ”の印象を植え付ける鬼畜な戦法に出た。
「雨宮が最後なら順番はどうでもいいからブタやれ」
おそらく急にふられた星野は去年のことを思い出して咄嗟にこれを選んだのだろう。だがやろうとしていることは鬼畜お姉さんのリピートだ。じゃんけんの結果、演技順は
①花屋敷
②良崎
③水原さん
④雨宮さん
に決定。水原さんのブタは見たくない。
「棄権」
花屋敷-棄権
「棄権」
良崎-棄権
「ごめんなさい、棄権です」
水原さん-棄権
星野の目論見は儚くも崩れ去ったのであった……と!
ここで読まれてしまうようでは「ルーキーセンセーション」「スーパールーキートリオ」と呼ばれた現「大学番長」の名に恥じる。
「そうか。棄権か。よしわかった。やってやれ雨宮!」
「!?」
「!?」
「ハン?」
棄権……しないのか? 星野がアメリカンプロレスの怪奇派ヒールレスラーのように凶悪な笑みを浮かべ、いやらしく舌を出す。
「だけどわたしにも慈悲はある。これで顔を隠してもいい」
星野が雨宮さんにマスカラスマンベリアルのマスクを無理矢理被せ、半ば蹴倒す形で四つん這いにさせる。
「あぁ、あぁーあー! ああああ!」
「どうしたウルサイよリーベルト。棄権したのはそちらさん方の都合でしょ?」
星野、完全復活! 狼狽えたふりからの「棄権読み」の“ブタ”! ここのところ無能っぷりを見せつけて仕込みに仕込んだ毒の釣り針! このアドバンテージを見事に手にし、4人中3人が棄権した今、もう雨宮さんチームに、いや、星野に残された選択肢は至ってシンプル! 「棄権して無効試合」か「ブタのものまねをするだけで勝利」の2択だ。
「へいへいへいおいブタぁ! 桜井によぉく見てもらいな! 知ってんだろう桜井はァ! お前の将来の夢が『かわいいおよめさん』とかだったころからよぉ! ほら鳴けェ! ハァーッハッハッハ!」
「う、ううぅ……」
「人間みたいな声で鳴くなブタが! こうだろう!」
「うぅぎぃ……」
四つん這いのマスカラスマンベリアルのマスクを強引に引っ張る! 一瞬声が裏返り、本当に雨宮さんからブタの声が出てしまった。見るに堪えない……。
「おらおら! 月島よりもいいブタになるって桜井に見てもらえよぉ! 桜井! 目ぇ逸らしてんじゃあねぇ! 雨宮だって頑張ってるじゃないか……」
そういう星野さんこそ自身の悪に心が焦がされてるみたいだぞ。光の誘惑を感じている。
「こんなに……こんなに雨宮頑張ってるじゃないか……」
「もうやめさせてください……」
「頑張った……雨宮ァ……」
雨宮さんの直訴でブタ終了。去年よりヒドかった。
「全員棄権した時点で軽くにしろよ。いい加減にしろよ星野……」
桜井くんもご立腹。雨宮さんはマスクの下でべそをかき、星野はやりすぎた罪悪感に苛まれている。結局、ダメージは受けたじゃないか。
第6ラウンド “ブタ”
1位 雨宮チーム
棄権 リーベルトチーム、花屋敷チーム、水原チーム





