【もう出ない 五・七・五の 在庫がない】第12話 関越道0ビヨンド~新潟×離島~ その12
「作戦会議だ。書記は、トッピー!」
「ワーイオイラトッピーダヨー」
雨宮さん裏声。トッピーと共に模索していくことにするのだろう。アイデンティティを。彼女もまたモラトリアム人間なのだ。
「えー、今回の佐渡島、クリア条件が多い」
1、トキを見る
2、ツチノコを見る
3、佐渡島図鑑50種
4、歩行距離60キロ
5、トキ、ツチノコ相当のレア生物を見つける
6、メシの化け物に遭遇しない
「どれでゴールしてもいい」
「そう考えると楽なようにも見えますね。6がなければ」
「6がなければな。1、3、4が狙いやすい。だが1は正直メチャクチャ難しい上に、一番楽な4が他の条件と並行しづらいという欠点がある」
「欠点?」
「4のクリア条件、歩行距離60キロは、終わりが見えやすい上に刺客も用意されているだろうから救済措置もある。3の図鑑50種も刺客による救済措置はあるだろうが、つまり刺客と騒ぐと生き物が逃げてトキどころか図鑑もまともに埋まらない可能性がある。7人の大所帯だしな、こっちは。そういうこった。作戦会議ってのはそういうこった。図鑑を保険に、トキか歩行距離か絞ろう。俺は歩行距離に一票だ。さらに、俺はここのデキが違うのよ」
「何かいい案があるんですね?」
「SNSを活用する」
「!?」
「#佐渡島トキで、トキ情報を募りつつ歩く、という体にする。そうすりゃ刺客の位置とトキの位置が一石二鳥よ」
「トキに石投げるみたいなことわざですね」
「マジでトキ見つけてもそれはやんなよ。学内でも前代未聞の不祥事になるぞ。全国ニュースだよ。大学7人がトキに石を投げつけるって」
「さすがにわたしもそこまでバカじゃないですよ」
「さすがにそこまでバカじゃないにせよ、お前の頭の悪さは俺の想像を超えてるからな。一応」
「久しぶりにきましたねぇこの感じ。新しい後輩を手に入れたからもうこっちにパスは来ないのかなぁと卒業を意識していましたが久しぶりですこの感じ。星野、流木をこちらによこしなさい」
「これスルーで。リーベルト、大人になれ。これ一種の演舞だから」
「うぃ」
「そいでよぉ。SNSを使えば、佐渡島に配置されてる刺客の数や位置、メンツを見てザコかどうかもわかりやすい。おまけにトキも多少は見つけやすくなるってぇ寸法だァ」
「なるほど」
「だから役割分担をする。俺、桜井、マスカラスマンの3人はリヤカー牽き要員。ヒゲ、雨宮がSNS要員。リーベルト、星野はサブ。よしっ。そいじゃあヒゲと雨宮! 刺客の情報を確認しよう。最寄りの刺客は……へぇっ!? なんだ!?」
今まさに出発しようかというその瞬間、何者かがハイジさんが頭に麻袋を被せて両手を結束バンドで拘束!
「ここであったが100年目……『演劇サークル』!」
主犯は筋骨隆々のゴリラ! だが声がオカマ野郎のモヤシ野郎だ。しかもそういうオカマモヤシ野郎の声を作って出している。
「……?」
「ッ?」
「……」
マジで誰かわからない。
「陣内さん、これ誰でしょう?」
「袋の中が暑ぃよ。このままじゃ熱中症になっちまう! また出発が遅れるぞ! こんなことして許されると思ってんのか。俺を誰だと思っていやがる!」
ゴリラ、ハイジさんにもわかってもらえずショックを受ける。
「本当に俺がわからないのか?」
「てめぇみてぇなヘナヘナモヤシ野郎の声はクソラブコメアニメで噛ませにされるなんちゃってクソイケメンか声優同好会ぐらいでしか知らねぇな」
「俺がその声優同好会だ」
「俺に声優同好会に知り合いはいない」
「お前それ本気で行ってるのか?」
「大マジだ」
良崎が何かに気付いた。
「声優同好会のゴリラは知ってる気がしますね」
「え、羽場くん? 羽場くんか?」
羽場くんとは、声優同好会所属の元高校球児である。高校時代は夏の高校野球地方予選東東京地区で結構いいとこまで正捕手で言った経験があるゴリラであり、大学でオタ堕ちしてしまい、容姿はゴリラだが心優しいゴリラ容姿のイジられ役として居場所を掴み姫を囲っているゴリラである。しかし野球のウデは確かでリアル野球BANではキャッチャーとしてミットに黒い金と密約を握った。その際に手配したのはハイジさんのはずだが……。
「そうだ俺がハバーだ!」
「ああ、お前そんな声だったんだな。おいお前ら。許してやれ。コイツは単独犯でこんなことできるほど度胸ねぇし。コイツ喋れたとは驚きだァ。俺と話す時は恐縮しまくってメールでしか話せなかったしな。なぁ? 羽場……。コイツらは全員、この俺の命令でお前を許す。ただし俺がてめぇを許すかは、少し考えさせろ。お前ら! 今はコイツの相手してやれ。まだコイツが話せるうちにな。せいぜい楽しめよ、羽場。リーベルト! 場は頼んだ」
ズタ袋の向こうからプレッシャーを放つ。よっぽど怖いのだろう。だが、そのハイジさんを怒らせてまで何かをしたいようだ。
「カモン!」
羽場くんの合図で登場したのは、5人の水着女子! 芸能コースに通っている清楚なミナちゃん、ハーフメガネのカナちゃん、Sッ気のありそうなマドカちゃん、天真爛漫なミサキちゃん、シャイなリオちゃんだ。5人ともアンチマテリアルライフル選手権の時に手伝ってくれた女の子たちである。
「ああ、久しぶりですね」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
5人で良崎をフルシカト! いや、これはフルシカトじゃない。フル恐縮だ! そう、この子たちは芸能コース所属でありながら、見た目で言えば、顔では良崎に勝てていないのだ。5人は怖いのである。今は、水着姿の分アドバンテージがあるが、良崎もTシャツを脱いだら同じ条件、そして見た目で敗北する。良崎を脱がせないようにせねばならないのだ。プライドの為に!
「……芸能の女の子たち来てんのか?」
「来てますよ」
「じゃあ水着だろうな。男子たちが多少興奮すんのも許してやれよ。俺以外は」
「落ち着いてください陣内さん」
「落ち着けるかクソがッ! そこにいるお前らと違って俺が立ってんのは腹だけだよ!」
ハイジさんだけ待望の水着見られず!
「ハァ……羽場くん。お前は刺客で来てるんですか?」
一方で良崎は女子なので興奮することもない。冷静さを保って場を仕切る。なにせ相手はハイジさんにズタ袋を被せないとおしゃべりもできないメンタル雑魚だ。
「一応刺客で、来てます」
そして良崎にも恐縮し始めるメンタル雑魚ゴリラ。
「で、倒した褒美は?」
「図鑑5種」
「えぇ!? 5種!?」
素で驚き! 5種は雑魚ェ!
「ちょっと、羽場くんの弱点に付け込むわけじゃないですけど、陣内さんと相談させてください。陣内さん、アドバンテージ5種です」
「5種!? 5種はねぇだろぅ……」
「パスでいいですよね?」
「お前に任す」
「じゃあパスで。羽場くん、陣内さんを解放しなさい」
羽場くん追い詰められるが、気の利いた返しもできない。そういうところだぞ! ジャキッ、パァン!
「だぁああぉう! ッテェ何しやがったこぉの野郎!」
「陣内さん撃たれました!」
「撃たれただァ!?」
「なんか……女の子が……これエアガン?」
Sッ気のあるマドカちゃんがエアガンでハイジさんを撃った! マドカちゃんは、Sッ気があるというより常に自分を追い詰めているので突発的に破天荒な行動をすることでSッ気を演出しようとしている。つまり、マドカちゃんが奇行に走ったということは、つまり向こうはもうツッコミ待ちの手詰まりということだ。
ッパァン!
「だぁああああクソクソクソッ!」
「おいお前本当にそれは止めろ!」
良崎も敬語じゃなくなる破天荒! だがもうマドカちゃん取り返しつかない。ツッコミ待ちだったのに誰もツッコまない。ヒいている。もう芸能コースの女の子たちにもヒかれてる。
「おいヒゲ。俺どこ撃たれてる?」
「足行ってますね。ウワッ! 真っ青ですよ陣内さん」
「足だけじゃねぇだろ。2発いかれてんだよ。こっちは拘束されてんのに2発いかれてんだよ!」
痛みと怒りで興奮してるのはわかるけどそういうクラブみたいな言い方やめろ!
「胴に一発入ってる」
「大丈夫です。タマは抜けてます」
「マジで抜けてるか? まだジンジンするんだけど」
だからそういう店みたいな言い方するのやめろ! パァン!
「だぁぁあ! え、俺じゃない!?」
「僕です、小林ですが……撃たれました……。やはりこの子、家庭の医学に記載のある精神状態です……。ちょっと誰か彼女を取り押さえてくれないか……」
ノッポとヒゲのツートップがやられた! しかし誰も取り押さえられない。何故ならみんな丸腰だからだ! 男子陣はみんな水着! 肌の露出が多いのでエアガンでも素肌に食らう羽目になる。一人だけヤバイ精神状態の子がエアガンで武装し、佐渡島のビーチを制圧! こちらの武装らしい武装と言えば、雨宮さんの手にはまってるトッピーぐらいである。
「リーベルト……」
「はい。ヒッ」
「どうした」
「銃を付きつきられました」
「そうか。よぉしもう終わりだ! しょうがねぇから俺とお前で犠牲になるしかねぇ。いいか、今から言う番号に電話かけろ。090のXXXXのXXXX」
「110番じゃなくていいですかねああごめんなさいごめんなさい警察は呼びません」
「よぉし、ダイヤル回したらスマホをスピーカーにして俺の方にぶん投げて逃げろ!」
「ウワーッ!」
良崎がスマホをハイジさんの方にぶん投げ、全員一目散に逃亡! 物陰に隠れるが、もう引っ込みがつかなくなってしまったマドカちゃんがビーチに立ち尽くし、地面には拘束されたハイジさんが転がってうめいているままだ。そしてその武装水着のいるビーチに、スマホを片手で近づく海パン、アロハシャツ、ヤクザグラサンの男がやってくる。
「英雄のオッサン参上~」
やってきた男は日本最強の男・円谷英雄! ハイジさんが呼んだのは英雄だったか。
「おいどうしたお前。足スゲェ青くなってんぞ」
「そこのバカに撃たれたんだよ!」
「アッハッハ」
「笑えねぇ。もう笑えねぇんだよ」
「んでどうする。オジサンも撃たれちゃったらどうしましょう~」
「もう笑えねぇっつってんだろ!」
「おいマジかマジか。銃向けられたぞ!」
「気をつけろ、そのバカはマジで撃つぞ」
「この英雄さん相手にぃ? ……で、どこまでやっていい?」
「女の子だからケガが残らない気絶」
「OK。恨むなよ」
英雄がマドカちゃんのエアガンをバキッと殴り飛ばし、チョークスリーパー! 一瞬でマドカちゃんを締め落とす!
「勝ったか?」
「俺が負けるか。ほらよ」
英雄がハイジさんの顔の袋を外し、うつ伏せで倒れているマドカちゃんを見せる。
「おいアレ生きてんのか? 殺してねぇよな?」
「大丈夫だ。俺はやったことがある」
「殺す方を?」
「で、コイツ誰に引き渡せばいいんだ?」
茶を濁した。





