【もう出ない 五・七・五の 在庫がない】第13話 関越道0ビヨンド~新潟×離島~ その13
「マジで、今回のこれはクレーム入れるから」
「……」
ハイジさんが英雄と一緒に羽場くんとマドカちゃんを除く4人の女の子を正座させてマジ説教。
「今日一日は英雄についてきてもらうことにしたから、追ってきても無駄だ。まぁ正確には追って来たらてめぇは死ぬが、てめぇが死んでも無駄死ににはならねぇ。なぜならてめぇ如きが死のうと世の中にとっては何の損失もねぇからだ。それに慣れてる英雄もいる」
「俺はやったことがある」
「そういうこった。二度と俺たちの前に現れるな。次は殺す。以上。じゃあ帰れ」
正座していた羽場くんと女子たちも解散。泣いてる子もいる。
「あ、そういや俺も刺客で呼ばれてんだ」
「え?」
「よぉし全員並べぇ!」
英雄がポケットからメモを取り出し、もう一度。
「並べ」
「ハイ……」
物陰に隠れてた俺たちも全員出てくる。もう怖くて従うしかないのだ。なにせ英雄は丸腰でもエアガンを持ったマドカちゃんの数倍強い。
「えー、俺がやれって言われてるのは……『就職対策! 圧迫面接英雄さん』だそうだ。で、お前は誰だ?」
「あの、マスカラスマンです」
「マスカラスマン~?」
「マスクを脱いだらこんな顔なんです」
「へぇえそう。なるほど」
もう圧迫面接は始まっているのだろうか。これが……社会。……いや、まだマシか? 英雄は、まだ知ってる人である。これから先で出会うであろう面接官たちは初対面の人達ばかりだ。どんな圧迫をしてくるかわからないが、これはゲームであって「失敗ができて」「相手は知っている人で」「圧迫してくる」とわかっている。マジ面接は失敗も出来なきゃ、相手も知らない相手で圧迫してきてるのか、圧迫しに来るのか、圧迫する気はないがサイコパスで自然と圧迫なのか、それすらもわからない。それでももう怖くてベジータ泣きしそう。
「で、だ。あ、どうぞおかけになってくださいよ」
座り方は指定されていないのに全員正座。
「えー、英雄さん圧迫面接だが、志望動機とかないだろうからっつーことで、このクイズを出してくださいというメモが渡ってきてる。えー、英雄さんは野球のシーズンは野球、オフシーズンはプラモづくりが趣味ですが、次のコレクションを英雄さんのお気に入り順に並べよ。だそうだ。1、ニルヴァーシュ type the ENDのプラモ。2、エヴァンゲリオン8号機のプラモ。3、姫路城のプラモ。4、『one-piece』のジグソーパズル3000ピース。5、高橋由伸の直筆サインボール。上手く情報を聞き出してお気に入り順に並べましょう」
高橋由伸の直筆サインと姫路城と『one-piece』のパズルとエヴァ何号機かとなんかしか思い出せない。
「『one-piece』お好きなんですね」
ここは優等生らしく雨宮さんが切り出す。
「好きではあるんだがよぉ、最近好きと言いづらい空気が出てるだろ? だってメディアで『one-piece』好きです『one-piece』最高です『one-piece』で仲間の大切さや絆の大切さを知りましたって言ってたやつらが一体何をした? ファンキーなモンキーのベイビーズのヤツと元モーニング娘のセクシービームは不倫、国民的アイドルグループの『HERO』なアイツも仲間と決別してるじゃあねぇか。何を学んだんだ」
「……」
これは手厳しい。これは言い返せない。圧迫とかプレッシャーじゃなく会心の一撃すぎる!
「だが、キムタクだけは、メンバー唯一の妻子持ちだから安定のためにジャニーズに残る選択をしたのは、俺は悪く言いたくはねぇな。メガネ、お前『one-piece』は好きか?」
あ、これは圧迫です! 圧迫です! 好きとは言いづらいけど嫌いとも言えない状況!
「わたしは好きでした」
「過去形?」
「……えー」
「メガネ。おーいメガネさーん。大丈夫ですかー?」
「はい大丈夫です……」
「お前何年生だ?」
「二年生です」
「二年生か。いいか、俺だって本当はこんなことしたくねぇよ。だけど、俺も一応OBだから。どんな形であれ、母校に貢献はしたいのよ」
俺だって本当はこんなことしたくないという常套句!
「よぉしメガネ。お前は圧迫面接とわかる圧迫面接でよく先陣を切ったな。褒めてやる。500円渡すからそこの自販機でコーラ買ってこい。釣りは駄賃でやるよ。えーとォ、あ、千円札しかねぇや。ツいてるな。ほらよ」
「はい、では失礼します。本日は、貴重なお時間を割いていただき、誠にありがとうございました」
雨宮さん一抜け。
「他に二年生いたらまだ面接の練習はしなくていいからコーラ飲んでろ」
「失礼します」
「失礼します」
桜井、星野抜け。
「なんだ、残ったのはいつものメンツか。……質問はないか。あと1分質問がなければこちらから質問します」
「はい」
マスカラスマン挙手。
「おう」
「××大学心理学部心理学科4年生の烏丸椿です。本日は貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました」
「おう」
「質問なのですが、高橋由伸の直筆サインボールは」
「……『高橋由伸』?」
「……高橋由伸氏のサインボールは、どちらで入手されたのでしょうか」
「ツテ。以上」
マジ最悪だよこの面接官!
「と、まぁこうならないように、みなさんはキャリアセンターや、えー」
英雄がカンペを読む。
「キャリアデザイン講座、営業研究会等の活用といった就職対策をキチンととり、しっかりと就職をしましょうねというお話でした。えー、それからこれはカンペには書いていないが、パワハラの相談は飯田橋にある東京しごとセンターへの相談をし、まだ若いうちなら転職はできるから、コネでもなけりゃ気兼ねなく転職はできるから、思いつめないようにしましょう。俺の息子、お前らもよくご存知の栄治なんかを見てるともう、たまに泣けてくるんだよ。親と同じ職場にいるってことがかわいそうでかわいそうでたまらない。確かにアイツは一時期怠けものだった。だがもうそのツケは返済しきるぐれぇ働いた。でももうアイツは転職させてもらえない。いいか。まだ取り返しはつく。しっかりと就職しよう。悪かったな。コーラ買ってやるよ」
でも円谷くんがかわいそうなのは親と同じ職場ってのもあるけどよりによって親があなただからでしょう? 多分みんな思ってるが、心も声も圧迫されててもう言えない。それにこのパワハラは仕事じゃないから東京しごとセンターにも相談できない。





