【もう出ない 五・七・五の 在庫がない】第3話 関越道0ビヨンド~新潟×離島~ その3
「気持ち悪ぃ……」
一面のお花畑で星野さん顔面蒼白。
「吐くか? 吐くならトイレだ」
「吐くほどではないんだけどさぁ」
群馬県某所、ラベンダー畑。本来はスキー場だが夏季はその斜面がお花畑になる。しかしスキー場なだけあり、高速道路を降りてから場所に向かうまでは急カーブの続く山道であり、狭い道幅でグイングイン揺れる。そして寝坊までして一番睡眠をとっているはずの星野が酔った。
「帰りもあれを避けて通ることはできないんでしょ?」
「あるとしたらここで死ぬぐらいだ。死んでも遺体はおそらくあの道で運ばれるだろう」
「ハァ……」
そしてガンセキオープンも駐車場に到着、本当にオープンカーになっちゃうんじゃないかと思うぐらいの勢いでドアをバァン! と閉めて小林氏とマスカラスマン、ラベンダー畑に立つ。乱闘寸前の清原和博内野手のような形相をマスカラスマンがミル・マスカラスレプリカをズイッと被って隠す。
「で?」
「お花畑だよ」
「ほう」
気の利いた返しも出来なくなってしまっている。近くでライターの石を打ったら着火しそうなぐらいのオーラを放っている。
「……この気持ちがどうにかなるのならタバコを吸おうと俺は初めて思ったよ」
「依存先を増やしちゃあいけないよマスカラスマンくん」
「そうだな」
「ラベンダーで落ち着こう」
「そうしよう」
あの二人だけ新卒3年目ぐらいになっちゃってる。
「飯奢ってやるよ。これリフト券な」
ハイジさんも気を遣うが、今は気持ちの整理が必要らしい。
最強戦士図鑑
“王子”円谷栄治さん 男の人
文学部地下闘技場格付け 4位
文学部地下闘技場公式戦戦歴:9勝4敗
タッグトーナメント成績 第一回:ベスト4 第二回:優勝 第三回:準優勝
円谷くん プロフィール
身長:ジャイアント馬場約0.8人分の175㎝
体重:ジャイアント馬場約0.4人分の59㎏
スピード:球速はジャイアント馬場0.5人分の75km/h
髪の毛:ジャイアント馬場と同じ黒。
視力:ジャイアント馬場の約2倍ばい
聴力:ゴシップ聴力に限ればジャイアント馬場の約30倍
喫煙力:420円で20本入りの1本21円のウィンストンイナヅマメンソールを一日30本吸う。そのため一日の喫煙力は1本6000円の葉巻を吸うジャイアント馬場と比較としてジャイアント馬場0.1倍以下。
力の強さ:ジャイアント馬場の0倍だが小数点以下であるていどある。
握力:ジャイアント馬場約0.4倍の20㎏
靴のサイズ:ジャイアント馬場ばばの約0.8倍の26.5㎝(約10文)
豆大福力:ジャイアント馬場0.3人分の5個も食べられない。
友達の数:便宜上の友達は多いが真に友達と呼べるのは3人ていど。
「……!?」
「どうしましたマスカラスマン」
「モンスターエナジー310円ー!?」
「あぁ、お前まだモンスターエナジーハマってんですね。本当にエナジードリンクはやめた方がいいですよ。せっかく健康体なのにそれが原因で夭折しますよ」
「これが観光地料金か……」
「そこまでして飲みたいですか、エナジードリンク。飲まなきゃいいって勧められているものを無理をしてまで買って飲みますか。フッ」
良崎が急に噴き出した。
「カブトムシが寄ってきますよぉ。カブトムシが留まるほど……ねぇ星野。フッフッフ」
星野がさっき披露した鉄板ネタを思い出し笑い。しかしマスカラスマンはあの場にいなかった。柔らかくなりかけたマスカラスマンの姿勢がまた強硬になった。
「あ、リフト乗ってる写真売ってますね」
「ああ。1200円ー!? 撮ってくれとも頼んでないのに1200円だとぅ……」
「まぁそれが観光地ですから。水200円ー!?」
良崎がなんとなくマスカラスマンの機嫌を直してくれた。そうこうして日が暮れた。群馬一泊!
「ノースオートロース! ロスインゴベルルルルゥーナブレェスス! デ! ハポン!」
「エリートトレーナーのアンナが勝負を仕掛けてきた!」
旅恒例、広間を貸し切った食事の後の格闘技大会開催。座布団を敷き詰めた特設リングには既にマスカラスマンと良崎が上がっている。
「エリートトレーナーのアンナはキングラーを繰り出した!」
「エリートトレーナーのツバキはファイアローを繰り出した!」
良崎のカニvsマスカラスマンの焼き鳥。どっちも目に刺さると地味に失明する。
「やれやれ、万事の一手を行きますか。卍解」
一方では刺身の皿を編み笠っぽく被った小林氏が両手に箸を握って卍解。
「セブーンセブーンセブーンセブーンセブンセブンセブン! ダァー!」
その小林氏にハイジさんがカボチャの天ぷらをウルトラセブンの頭のアレっぽく投擲!
「ツバキのファイアローのブレイブバード!」
「かわせキングラー!」
「文久3年!」
「嘉永6年!」
既に全員酒が入っているが、ここまでハメって外れるのかとルーキートリオは目を丸くしている。今回はまだ旅のキツさが渋滞だけだから異様なはしゃぎように見えるだろう。しかし、本来はああでもしないとやってらんなくなるんだよ。このサークルにいる限り、嫌でもああなるから。





