【やめるんだ! 利き手はやめろ! ブルガリア!】第5話 驚くなかれ! 大学発見 その3
「まぁ、嫌われることを恐れていてはなせるものもなせないから」
「はい」
「むしろアンチがわいてこそ一人前だろ」
「はい」
「じゃあ、そういうことでどんどん嫌われていこうぜ」
「はい」
改めて自分たちの嫌われ度を思い知らされた俺たちだったが陣内式論点ズラしセミナーでなんとか気持ちを強く持てそうになってる。
「ハッ、陣内とかリーベルトとかアイツら自分らで面白いと思ってやってんの? 醜態晒してるだけじゃんバッカでぇ~。賢い俺たちは醜態をさらしたくないから何もしないぜ! こんなヤツらと俺ら、どっちが人間的に上だ?」
「わたしたちですね」
そう言われるとそうなんだが何もしないぜ! のヤツらが賢いってことも否めないぜ! 就職活動ではコミュニケーション能力と個性が問われるとかいうが出る杭は打たれるので中途半端なスペックなら個性とかない方がマシだから。
「よし。覚悟完了だ。次行くぞ!」
2nd ステージ 悪学部
「ヒャッハー! 上玉だぜぇ」
「ヒャッハー! グヘヘ」
すげぇ悪そうなヤツらが集っている! 服装もなんだか世紀末だしそれぞれ狂気っぽさを出すためにヨダレたらしたりしてるが、コイツらは「悪」なんじゃなくて「悪学部で悪を学んでいるヤツら」だからここでは悪さや悪っぽさが高ければ高いほど真面目に勉学に励んでいる優秀な生徒!
「……」
だから隅っこの方ですげぇ普通の服でなんにも言わずに佇んでるヤツが一番怖い。あれヒャッハーとかじゃなくてサイバーテロとかやるタイプのマジでヤバいタイプだ。多分家がそこそこに裕福で成績がいいけど早熟だっただけで、子供の頃から医者か弁護士か政治家になれと言われてるけどピークは早くて小学校6年、遅くて中学あたりで止まって親戚たちから罵倒や陰口を受けたり自分が何で急にこんなにできなくなったのか思い悩んで心に闇を抱えて自暴自棄になっちゃうけど家は裕福だから大学に行く金はあってとりあえず大学に来て人間関係とか大学での生きがいとかを見つけて再起を図ろうとするけど早熟故に無駄なプライドが高くて偏差値の低い大学の学生と俺は違うとか思ってて馴染めず孤独で闇をさらに深くするタイプ! もう自暴自棄だから大学の学部選びも犯行の動機もなんでもよかったってタイプだ。怖いぞ。
「ヒャッハー!」
そして真面目な悪学部生徒たちは教えに則ってか「ヒャッハー」で威嚇するベーシックな無法者タイプ。凡リアクション。逆にこいつらがマジメで優秀だってことがわかってしまう。
「そこをどきな! ザコ共!」
一触即発に「ヒャッハー」威嚇をするがこっちからは触れないので発がないままの俺たちと悪学部の間。俺たちは「動じない」で腹を決めているが、その場合どう出るべきか考えてこなかった悪学部たちをたしなめるように、気風のいい声がヒャッハーの群衆を割る。
「この声は……姐さん!」
ザザッと雰囲気のある足音でコートに袖を通さないで羽織る女が! ヒャッハーたちが整列するが早熟タイプだった裕福な家の子はその整列の流れにも加わらない。
「アタイがこの悪学部を仕切る……下田だよ!」
ビシッ! バァ~ン!
「……」
「悪学部は……。主に社会でヨゴレ役をやる人材を学生時代から育てていき、闇の悪の道ではなく予め光のある悪の道に未来ある人材に注ぎ込むことで真の悪を生まないための学部だよ!」
なんだか府に落ちそうな説明だ。これ本当に悪に堕ちそうな高校生はここ来たら闇に落ちることはないんじゃないだろうか。でも何も言えない。だって俺たちは心拍数が上がったら危害を加えられるから。相槌も打てない。
「例えば卒業生は悪役レスラーとかになるよ! プロレスなんて言うあんな危ない競技で本当に悪いヤツが悪いことしようと思ったら大参事だよ!」
スッゴイ納得した。
「あとは最初から意地悪や下ネタで好感度を低めに保つことで相方の好感度を上げ、バランスのとれたお笑いコンビなんかも排出するよ! 劣等感を共有することで克服することも出来るよ! まずは見下しから入ってそこから生まれる友情もあるんだよ! それにちょっと悪いくらいがモテるよ!」
「……」
結構いいこと言ってんのになぁ。
「……質問は!? ないか!? 陣内! ないか!?」
ハイジさんが家事の分担をくじ引きで決めるときにトイレ掃除当番のクジを引いてしまったみたいな顔をする。
「え、じゃあ下田さんの就職先は?」
「アタイは……主に千葉県で展開しているドラッグストア、ヤックスだよ!」
普通。
「薬流通レディだよ!」
凡リアクション。しかし下田さんが顔真っ赤に。配下の前で盛大にスベったもんなぁ。
「ヤス!」
「ちょっとまってくださいよ~!」
ヤス、と呼ばれた青いスーツに蝶ネクタイの男がとっとっとと変なステップで前に出る。あれ漫才師だ……。今のツッコミか……?
「そんな急に呼ばれたら佐村河内でも脊髄反射でエッ? って聞き返しますよ姐さぁ~ん」
ヤス、漫才師だ。それで今の多分勝負ツッコミだ……。時事ネタ例えツッコミが勝負ツッコミのツッコミだ……。
「ヤス! あんたのガヤ芸、見せてやりな! まずはコイツら全員に、あだ名をつけてやりな! 面白くなかったらこの劣化ウラン製のハリセンでお仕置きだよ!」
「姐さん先輩ですけどこれだけは言わせてくださいよ。それ死んじゃう奴じゃないですか! 下田がバカだ!」
ビーッ。
誰かの心拍数が上がってしまった!? 深呼吸をしながらみんなの様子を伺うとみんな稲川淳二みたいな顔で良崎を見てる。
「お前……」
「わたしパクられた……」
ついに女子が! 良崎の家族! 危害ポイント1加算! このヤスという漫才師! 良崎の過去の発言を面白いと思ってパクったのなら漫才師として失格だが、動揺させるためにあえてそういうチョイスをしたのだったら無能と見せかけた相当のワルだ! 手ごわいかもしれないぞ、漫才師のヤス。
「フフッ」
ビーッ!
「え、また俺か?」
ハイジさん、つい笑ってしまった! すぐに白頭巾と白装束に目玉模様の我々に恨みを持つ誰かが小走りでやってくる。だが今回の執行人は異様に肩幅が広い。肩パットでも入れてるのだろうか。ハイジさんの前で立ち止まり、装束の下から真っ赤なバレーボールを取り出し、掌に乗せてピッ! と妙なポーズを取った後ハイジさんの顔面に至近距離からスパイク! ハイジさんがまた仰向けに倒れる。鼻が真っ赤だ。執行人はハイジさんが起き上がる前に全速力で走り去ってしまった
「今のヤツ、小声でクラッシャーボールって言ってた……」





