【エヴァに乗れ 乗らねば帰れ レイを呼べ】第12話 恩返しは倍返しだ!
陣内さん、水原さん、良崎、俺、マスカラスマン、といういつものメンバーでつるんでゲームやったりなんかいろいろ遊んだりして飯が食いたくなったので行くことにした。
「ん?」
すると、陣内さんを見つけた男性が顔色を変えたのである。
「陣内さん!?」
「誰だテメーは! 素早く答えねぇとこっちは拳で名乗るぞ!」
即刻正当防衛が成立する程の怪しい人物ではない! いたって普通、俺たちが今までであってきたような奇人の類ではない。服装も一般的な量販店で買いそろえられそうだし、無駄な威嚇をする覆面や化粧の類もない。腕も二本、足も二本。そして繰り返すが人間の男性であり、悪魔、ゾンビ、宇宙人、怪獣、キョンシー、天使、ウルトラマンなどではない。
「昔お世話になりました京笠射哉です!」
「……」
依然、拳は下げない陣内さん。
「文学部日本文学科でお世話になりました」
「ああ、そう」
「本当に陣内さんにはお世話になりまして! 陣内さんのアドバイスもあって合格出来ました。陣内さんにとっては少し面倒を見た後輩の一人かもしれませんが、本当にお世話になりまして! あぁ、サークルの後輩さんもこんなに……。よし! 陣内さん! 奢らせてください! 是非、是非! 後輩さんも!」
「……」
財布を取り出すキョウカサイルカナさん。奢ってくれる気満々だ。しかし陣内さんは乗り気ではない。だが、後輩に奢らせるのは申し訳ないなどと思うような殊勝な人物ではないことも我々は重々承知だ。
「いや、奢るってお前……。ここ自販機の前だぞ」
「奢らせてください!」
「一番高くてレッドブル二百円なんだけど」
キョウカサさんのあの態度を見る限り、陣内さんに相当の恩があるようだ。なのに!? 一番高くてレッドブル二百円!? ウナギや回らない寿司でもいいくらいに感謝しているってのに! しかもここで財布をもう出すということは、キョウカサさんは陣内さんへの恩返しはこの自販機で済ます気なのだ!
「恩ってなんだっけ?」
ここは陣内さん、的確な判断。自販機のレッドブル程度ならば受け取らない方がいいと判断したのだろう。この後どこかに場所を移してもっといいものを奢ってもらえる可能性もあるし、後輩に奢ると言われて断る陣内さんではないものの、俺たちという後輩がいる前では可能な限りかっこつけようとするため男気のお断りも選択肢だろう。そして何より! キョウカサさん……いや、キョウカサくんはあからさまに俺たちと同年代の大学生なのだ!
「ええ、陣内さんのアドバイスのおかげで漢検3級を!」
「……」
風向きが変わった。文学部日本文学科の大学生の漢検3級でレッドブルを!? 俺たちは五人いて、全員に奢ってくれると言っているのだから、キョウカサくんは漢検3級合格のアドバイスでレッドブル二百円×五で千円も出そうとしている。それにしても漢検3級……。そりゃ施した陣内さんもキョウカサくんを忘れる訳だ。
「お前、他に何か資格取らないの?」
「ええ、次は宅建をと!」
宅建! 漢検3級で一人二百円×五なら宅建ではいくらの恩返しだ!?
「他には?」
陣内さんも気付いたようだ。
「ええ、司書を!」
「いいぞぉ。他には?」
「学芸員も!」
「困ったことが合ったら俺に訊け。他には!?」
「司法資格を!」
「勉強量が合格に直結する。一人では難しいぞ」
「国家公務員総合職も!」
「おいおい、ウチの大学では数年に一回しか出ねぇぞ。死ぬ気で勉強しろ。頼れる先輩は周りにいるはずだ。忘れるな」
「あとは界王拳も!」
界王拳!? そればっかりは本当に死なないと習得出来ないぞ!
「二十倍までなら教えよう」
宅建→司書→学芸員→司法試験→国家公務員総合職→界王拳。
一回ごとに恩返しが倍になっていくと計算しても界王拳の頃には五人で六万四千円となる。一人頭一万を超える恩返しなのだ! これはもう陣内さんは今すぐ死んでキョウカサくんより先に界王拳を習得するしかないぞ。
「陣内、これは受け取っておけ。キョウカサくんの男気だ」
「ああ、そうする。じゃあレッドブルで!」
レッドブル五本をドーン!
「では、またご相談ください! そして恩返しさせてください!」
「ああ玉子とみそ汁もつけてな!」
……。
「陣内さん、いぃーい後輩じゃあないですか。わたしたちみたいな無気力と違って。随分と期待されてるんですよね」
「いや……。漢検3級で苦戦するってあいつバカだろ。ここで恩返しされとかなきゃ一生チャンスねぇわ」





