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【このラオウ 涙はとうに 捨ててきた!】第10話 クイズ! スタービューコロシアム 最終夜&地元の忘年会

「そろそろ締めに入るか。ファイナルクイズ~!」


 そうだな。もういい時間だし、マスカラスマンクイズで全チームに100ポイント入ったので、タカギが暴走したスーパースターチーム以外もう十分に飲み食いした。防寒具もゲットしたし、キチンと野外での忘年会としては成り立った。


「ファイナルクイズは全員参加だ。正解すれば全員に飛騨牛!」


「ヒダギュウゥ~ッ! 飛騨牛というと、あの陣内さんが最高に美味かったという!?」


「そうだ。飛騨牛のステーキは脂が強すぎてちょっとアレだったが、すき焼きは犯罪級の美味さ! メガボーマンダ全盛期に少数存在したという『かげぶんしん』マンダのような美味さだ! そして、このファイナルクイズは出題者が増える。このことは既に知っているメンバーがいるな?」


「?」


 ピンと来てないリーベルトさん。


「気づいてないのか? ここにいる何人かには、俺から正体不明の命令が下っているはずだ」


「ハァーウー!」


 何かに気付いた面々は水原さん、良崎、マスカラスマン、小林氏、雨宮さん、星野だ。


「まさか」


「勘の悪いお前ら! お前らが俺にこれを覚えろ、と言われてやったことは何だ!?」


「ビリーズブートキャンプ……」


「そう、ビリーズブートキャンプのプログラムだ」


 ビリーズブートキャンプとは、一昔前にはやったエクササイズである。ビリー・ブランクスが考案したもので、軍隊式の激しい有酸素運動でダイエット&腹筋バキバキというもので大流行! トレーナーのビリー・ブランクスの激励も人気のカギだ!


「ビリーズブートキャンプには6つのステップがあり、もちろん進めば進むほど内容はきつくなる。そして、俺はお前らに、どのステップのエクササイズか教えずにそれを覚えて来いと言った。お前らはどのステップのエクササイズか知らない。もちろん、字幕も吹き替えもない。英語がわからなきゃマジでどのステップかわからんぞ」


「ちょっと待ってください。じゃあそうとは知らずに、これが一番キツイと知らずに最終ステップをやらされた人もいるんですか?」


「そうだ」


「本当にキツかったんですよ!?」


「そして心当たりのあるやつは今からその覚えたプログラムをやってもらう。6人で再現したプログラムを見て、正しい順番に並び変えることに成功すれば大正解だ。さて、ヒントを与える。俺も飛騨牛すき焼きが食いたいからな。まずは俺の性格を考えろ。運動神経の良い奴と悪い奴……。悪い奴が後の方のプログラムをやれば、ヘトヘトになってて全く分からなくなるだろう。逆に運動神経が良い奴も最初のプログラムは楽勝のはずだ。そして水原にはあまり苦労をさせたくないので贔屓する。それで考えろ」


 結構なヒントだぞ。

 水原さん、良崎、マスカラスマン、小林氏、雨宮さん、星野。

 運動神経が悪い方にカテゴライズされるのは水原さん、良崎、星野だろう。

 運動神経が良い方にはプロレスラーのマスカラスマンと剣道部だった雨宮さんだ。


「そして……この中に一人、俺のクリームパンを勝手に食ったヤツがいる。冷蔵庫にとっておいた八天堂の抹茶クリームパンを! わかってんだろうな犯人……。罰を与える」


 ゴクリ。犯人は誰だ? 多分、良崎か星野だろう。なので1~6のプログラムで、良崎と星野が5、6は確定だろう。


「行くぞー! ミュージックスタート!」


 ズンチズンチー♪


「ワンモアセッ!」


「コンバット!」


「ビクトリー!」


 セリフまでも完コピし、ある者は楽勝に、ある者はヘトヘトにプログラムをやってみせた。

 特に小林氏と星野のヘロヘロ具合がヤバイ。そしてやっぱりマスカラスマンと雨宮さんはまだ余裕がある。


「ハァハァ……ゴメン陣内。クリームパン……食べたのわたしだ……」


 星野さん自白!


「え……マジで?」


「メッチャ美味かった……冷えてて……」


「……。リーベルト。スマンかった」


 ハイジさんが渋い顔に……。


「ハァ……これもう刑法(ケイホウ)で裁けるでしょう!」


 冤罪! これで良崎が最終プログラムだったことが確定した。


 プログラム1→?

 プログラム2→?

 プログラム3→?

 プログラム4→?

 プログラム5→?

 プログラム6→良崎


「そうか……リーベルトが最終プログラムだったか……」


「そうだ。星野てめぇ、俺のクリームパン!」


「フッ、騙されよったな陣内ボケェ! クリームパンを食べたのはわたしじゃないぞ!」


「なんだと!?」


「わたしが食ったと言えば、お前は真犯人に謝ると思ったからウソをついたのさ!」


「こぉのクソガキがぁーッ!」


 星野が一枚上! なんだこの浅い心理戦!


「わたしは多分第3プログラムです」


 水原さん挙手。かなりヘトヘトだがまだ前半の第3プログラム?


「まぁお前はわかると思ってたよ。英語ができるからな。ビリーの言ってる内容もわかるんだろう」


「そしてマスカラスマンが余裕すぎますね。雨宮もまだまだいけるようですが、マスカラスマンはほぼノーダメージに見えます。マスカラスマンが1、雨宮が2ですね」


 プログラム1→マスカラスマン

 プログラム2→雨宮

 プログラム3→水原

 プログラム4→?

 プログラム5→?

 プログラム6→良崎


 うむ。これなら運動神経が良いヤツが簡単なプログラムで、水原さんは運動神経が悪いけど優遇されるっていうヒント通りだ。そしてつまみ食い容疑を掛けられているのは良崎と星野、そして星野に上手く釣り出されてしまったので良崎が6。


 プログラム1→マスカラスマン

 プログラム2→雨宮

 プログラム3→水原

 プログラム4→小林

 プログラム5→星野

 プログラム6→良崎


「これで!」


「正解だよチクショー!」


「フフフ」


 良崎が悪い笑みを浮かべた。


「美味しいといいですね、飛騨牛のすき焼き……。八天堂のクリームパンよりも!」


「リィィィベルゥトォオオオオーーー!」


 そしてクリームパンを食った真犯人は良崎だった!!!






【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】

【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】






 大学の忘年会を終えた俺は、数日後、地元の小学校の同窓会に出席していた。俺はあまり同窓会に呼ばれるタイプではないのだが小学校の仲間ということで、私立中に行ったヤツも呼ばれるし、小→中と一緒だったヤツも呼ばれる。中学校からはキツイスクールカーストが敷かれて派閥がわかれてしまったが、そんな階層もなく小学校では一緒に遊んでいたヤツも多くいる。なのでメンバーのチョイスはカオスだ。

 ある程度成長したことでスクールカーストは撤廃され、俺のような陰キャラでも、こういう同級会では人権を与えられるのだ。


「曾根崎ィ~」


「秋葉ぁ」


 やることがなくて早々に会場である居酒屋に入った俺は秋葉とサシ飲みに。秋葉もイケてないグループだったので盛り上がる。そして徐々に人が増えてくる。


「お前今何やってんの?」


「大学生」


「どこの大学?」


 だったり、働いてるヤツもいたり。サッカー部やバスケ部もどんどんやってくる。どこで働いてるだァいい大学だァとマウントの取り合いも始まっている。ヤツらは中学時代の栄光が忘れられないのだ。


「地味地味の曾根崎君じゃないですかぁ? 影が薄くて気づきませんでしたなぁ。中学時代にお前に気付いてたらバスケ部入ってもらえばよかったわ。『黒子のバスケ』みたいに」


 と、まぁこうやってイジってもらえるのも名前を覚えてもらっているからだし、この渡辺はなにかと俺を気にかけてくれていた。


「大学でサークルとか入ってんの?」


「あぁ、『演劇サークル』……」


「演劇!? お前が!? 可愛い女子とかいるの?」


「いや、そのー、演劇やらないから……」


「それは、つまり照明とか小道具ってこと?」


 え、演劇部でって照明とか小道具あるのか?


「ずっと留年をしてる先輩を中心に、先輩をお慕いするサークルみたいなもんだから……演劇はやってない……」


「……まぁ楽しいんならいいんじゃない? 顔つきよくなってるよ」


 渡辺ぇ……お前は本当にいいヤツだよ……。


「ヴォォイ曾根崎! アレ? お前なんで顔にパンスト被ってんの?」


 泥酔して雑にイジってきたのは藤本だ。


「……」


「演劇サークルとか話盛るなよ!」


「いや盛ってな……」


「ヴォォイ曾根崎! アレ? お前なんで顔にパンスト被ってんの?」


「おい藤本! 次に変なフリをしてきたらお前の服のボタンを全部剥ぐ!」


「ちょっとみんな静かにぃ~! 曾根崎がなんか面白いこと言ってるから! もう一回言って!」


「次に変な……」


「ヴォォイ曾根崎! アレ? お前なんで顔にパンスト被ってんの?」


 良崎の真似をしようとしても上手くいなかった。というかフリもイジリもハイジさんより下手で雑なんで上手くいくはずがない。シンプルに俺を虐げたいだけの気持ちで俺を面白くさせようなんて思ってはいないのだ。

 その後も藤本を始め、サッカー部やバスケ部にイジられる時間が続き、同級会は終了した。


 店を出ると、すぐによく知った人物と出くわした。


「曾根崎?」


「良崎」


「アンタ何してんの?」


「同窓会」


 良崎も近所なので、一人カラオケでもした帰りなのだろう。


「ヴォオイ曾根崎ナンパァ? 演劇サークルでもお前顔にパンスト被ってるからそんな可愛いお姉さん……」


「あぁ、同級生の方ですね」


 そして良崎は、同級会で俺がどう扱われてきたのか一瞬で察した。


「ナンパなんかできるわけないじゃないですか、こんなヤツに。『演劇サークル』でも役立たずなんですから。離島に旅行に行った時も、東北旅の時もそうだし、あとクイズ大会でも無能。学祭ミスコンでも役立たずで、キャンプの時もそうでしたね。憂も栞菜もコイツのことは見下してますよ。銀子さんだって手を焼いています。昔からそうだったんですか?」


「……」


「本当に扱いには困っちゃいますよね。忠には」


 何故、普段「水原さん」「星野」「雨宮」呼ばわりの3人を「銀子さん」「憂」「栞菜」呼び? ……俺の大学生活、捨てたもんではなかったということか。涼しげな顔をしたまま、良崎は一発で藤本を黙らせてみせた。


「良崎」


「何?」


「この後、食パン奢らせてくれ」


「そんなことは別にいいのよ。ただし、二度と『演劇サークル』にナメた真似させるな」

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