【このラオウ 涙はとうに 捨ててきた!】第2話 YOUTH MEMOЯY うぉくのふぉそみつ
『演劇サークル』のメンバー+小林氏でボケーと街を歩いていた。特に目的もタイムリミットもないが、いざとなったらコンビニがあるし、どっかしらの駅にも近いだろうから別に困ったことはない。
「縁日やってんな。こんな時期に」
「こんな時期だからじゃないですか? 年末ですもん」
とりあえず縁日に行く。さすがに金魚すくいはないみたいだが、から揚げやりんご飴、お面屋といった定番はしっかりと屋台を出している。
「お、カタヌキだ」
ハイジさんが早足で『カタヌキ』の看板へと急ぐ。なんかゴージャスなおばさんみたいなおじさんの店長がニヤニヤと笑っていて何故か親の仇のように思えた。
「これはこれはァ……お客さんですねぇ ▼」
ニヤニヤ。
「チャレンジは一回100円か?」
「ええ、100円です。カタヌキのガラはくじ引きで決めさせてもらいますが、難易度が高いほど賞金も上がりますよぉ ▼」
“カタヌキ”とは!
小さな板状のお菓子を、刻まれた枠線に沿って画鋲などで削ることで型を抜き、目標の模様をくりぬく遊びである! 成功すると賞金(もしくは賞品)がもらえるが! 難易度はそこそこに高い上に店長のイチャモンによる減点や失格もおおいにあり得る! こういう児童が最初に触れるギャンブルの性質が強かったせいか、最近はメッキリお目にかかれない屋台である! むしろ賞金も賞品もほしくはないが、久々に見たカタヌキを「ついやりたくなっちゃう」、この心理をついたカタヌキ屋の戦略は実に見事であると言わざるを得ない!
「うし、じゃあやるか。くじを引こう」
全員やることに。100円ぐらい別にいいし。
「型が出揃ったようですねぇ ▼」
陣内→金魚
良崎→桜
マスカラスマン→太陽
小林→マグカップ
星野→ハサミ
桜井→傘
雨宮→バルタン星人
「ちょっと雨宮のだけ難しいかな?」
「ええ、わたしのだけちょっと難しいみたいです。星野さんはハサミだけですが、わたしはバルタン星人なんでハサミが両手に」
他が桜とか太陽とかなのにバルタン星人! ホントついてない人生だな、雨宮さん。
「皆さん500円の型ですね。しかし、メガネお嬢さんのバルタン星人は3000円ですよ ▼」
「おい雨宮、3000円だぞ。バルタン星人で3000円。やれるよな?」
雨宮さんがグッと頷き、全員画鋲をとる! 寒さでかじかむ手で、ある者は慣れたように、ある者は不器用に、またある者は劇的な成長を見せて型を抜く。
「よし」
陣内-500円
「やった!」
良崎-500円
「一番スゲェのはプロレスなんだよぉ!」
マスカラスマン-500円
「ハハハ! 参ったなぁ!」
小林-失敗
「イェイ」
星野-500円
「よし」
桜井-500円
「フォッフォッフォッフォッフォッ! シャキーン」
雨宮-3000円
雨宮さんがまさかの3000円大成功!
「おやおや皆さんお上手ですねぇ ▼」
「ああ。久しぶりだがなまってなかったよ」
「しかし、賞金を受け取っていいんでしょうか? ▼」
「あ?」
「クリアした方にはネクストステージ! 難易度は上がりますが、賞金も大幅アップ! 最低でも1000円に ▼」
「面白れぇ。500円如きを惜しむ陣内一葉様じゃねぇぞ。ネクストステージだ」
脱落した小林氏以外がくじを引く。そして次のテーマは!
陣内→空也上人
良崎→エヴァンゲリオン初号機
マスカラスマン→チャッキー
星野→ゲルニカ
桜井→東京メトロ路線図
雨宮→ハイパーゼットンデスサイズ
「これ無理じゃね?」
「おやおや皆さん運がいい! 全員最低7500円以上の型だ! ▼」
「空也上人はちょっとキツイが……7500円か……」
「もちろん、クリアすればネクストステージですよ ▼」
「チックショウ、やったらぁッ!」
ハイジさんの目が燃える。そして彼は画鋲というほんのちっぽけな武器で、7500円の空也上人にとりかかり、見事に成功!
陣内-7500円
「へっ、嫌いじゃないですよ、そういう熱さ!」
良崎-7500円
「やってやる。やってやるぞ! ……クソガンモ!」
マスカラスマン-失敗
「ああクソッ!」
星野-失敗
「ああ」
桜井-失敗
「ピポポポ! ゼットォーン……」
雨宮-7500円
「7500円……」
星野と桜井が天を仰ぐ。まぁ……7500円は逃げていったが、逃げたのはあくまでも7500円の“権利”! 実際には二人ともファーストステージの100円しか払っていない。ここでコンテニュー代など払えばこのおばさんみたいなおじさんの思うツボなのだ!
「悪いなお前ら。俺たちは次のステージに行かせてもらう」
「ちぇ、うまくいったら奢ってくれよな!」
「いいだろう。さぁくじをひかせろ!」
ケッケッケッケと店員が笑う。
3rdステージ
陣内→人民元(全種)
良崎→読売新聞テレビ欄(2012年5月9日)
雨宮→ジャグラスジャグラー
「……」
「……ッ」
これは賞金額が知りたい。
せめて賞金額を知らないと、これがカタヌキではない何かの思えてしまう。カタヌキを使ってバカな大学生をフルイにかけ、残った大学生で偽札の原版づくりやガリ版印刷の闇営業が今、目の前で行われているのでは?
だが引き返せない。金の問題じゃあないんだ! もう金の問題じゃねぇ! これは“挑戦”なのだ。ここまで2枚抜いてきた自信! 経験! それをぶつける“カタヌキ”という機会はそうそう訪れない! ここで勝負を決めるしかないのだ!
「おい、これ抜けたらいくらだ?」
「これなら30000円は ▼」
「これ抜いて30000ー!? 本当にお前が払うんだな!?」
ついにお前呼ばわり!
「お約束しましょう ▼」
「よし、行くぞ! 覚悟完了だ!」
しかし!
パキ
「ああああああもうっ」
陣内-失敗
「ぬわー」
良崎-失敗
「闇の力、お借りします!」
雨宮-成功
「これクソゲーでしょう……」
30000円まで来た良崎が、ついにこの言葉を言ってしまった……。その瞬間、目の前のおばさんみたいなおっさんが凍り付いたように動かなくなる。まったくだ。微動だにしない。睫毛すら動かない。
「……なんだコレ?」
止まっているのはおっさんだけではない。『演劇サークル』以外の全ての人も、雲も、滴る水さえも完全に停止……。
だが、その停止の世界の空を砕き、教習所の救急訓練で使う人形みてぇな真っ白無表情の面に、人のものとは思えない、昆虫じみた骨格の何者かが降りてくる。
「なんだアレ!? わたしにだけ見えてるんですか? 陣内さん! マスカラスマン!」
「俺にも見える! なんだなんだ?」
『演劇サークル』の全メンバーの視線が空の化け物に注がれる! つまり全員に見えているのだ!
「……私はコンピューターウイルスだ。お前たちが“大学”だと思っていたものは、全て“うぉくのふぉそみつ”というネット小説の中で行われていた無意味なお遊びに過ぎない。だがそのお遊びももう終わりだ。大人になれ」
冷たい声でコンピューターウイルスの化け物が良崎に説教をかます。だがそんなことを言われても今はちょっとついていけないのだ。そんな困惑をしている良崎や我々をとり残して、三次元だった周囲のものが二次元へ、そして砕け散り、真っ白な空間に放り出される。
「諦めるなぁっ!」
「陣内さん?」
そんな真っ白な牛乳空間に光り輝くハイジさんが突如出現!
「俺は、この事態に備えて投入されていたワクチンだ! さぁ、俺の手を取れ! お前たちの大学生活は、無意味なお遊びなんかじゃなかっただろ!?」
「……」
「……? リーベルト?」
「まぁいいです。とりあえずあの化け物よりは信頼しましょう」
そういう流れでみんなで手を繋いだら、化け物は掻き消え、世界が砕け散る前と全く同じ縁日が再現された。目の前ではおばさんみたいなおじさんが怪しげに笑っている。
「どうしました? ▼」
「……」
良崎の手元には、まだ手付かずの読売新聞テレビ欄(2012年5月9日)のカタヌキがある。良崎はいぶかし気な目でハイジさんを観ているが……?
「これ抜いて30000ー!? 本当にお前が払うんだな!?」
「お約束しましょう ▼」
「よし、行くぞ! 覚悟完了だ!」
何事もなかったかのように人民元のカタヌキを始めるハイジさん。だが、寒さで手が震え、初手ミス。
「……クソゲー!」
それを認めた良崎が確信犯的に宣言。
ピキィッ……
再び奇妙な音と同時に世界が停止。停止の世界の空を砕き、教習所の救急訓練で使う人形みてぇな真っ白無表情の面に、人のものとは思えない、昆虫じみた骨格の何者かが降りてくる。『演劇サークル』の全メンバーの視線が空の化け物に注がれる! つまり全員に見えているのだ!
「……私はコンピューターウイルスだ。お前たちが“大学”だと思っていたものは、全て“うぉくのふぉそみつ”というネット小説の中で行われていた無意味なお遊びに過ぎない。だがそのお遊びももう終わりだ。大人になれ」
冷たい声でコンピューターウイルスの化け物が良崎に説教をかます。
「よっしゃ来たこれぇ」
良崎が空の化け物を見てガッツポーズ。そんな何か確信した良崎と困惑をしている我々をとり残して、三次元だった周囲のものが二次元へ、そして砕け散り、真っ白な空間に放り出される。
「諦めるなぁっ!」
「陣内さん?」
そんな真っ白な牛乳空間に光り輝くハイジさんが突如出現!
「俺は、この事態に備えて投入されていたワクチンだ! さぁ、俺の手を取れ! お前たちの大学生活は、無意味なお遊びなんかじゃなかっただろ!?」
「そうですそうです」
ハイジさんの手を取ると化け物は掻き消え、世界が砕け散る前と全く同じ縁日が再現された。目の前ではおばさんみたいなおじさんが怪しげに笑っている。
「どうしました? ▼」
「……」
良崎の手元には、まだ手付かずの読売新聞テレビ欄(2012年5月9日)のカタヌキがある。良崎はいぶかし気な目でハイジさんを観ているが……?
「これ抜いて30000ー!? 本当にお前が払うんだな!?」
「お約束しましょう ▼」
「よし、行くぞ! 覚悟完了だ!」
初手ミス。
「クソゲー!」
さっきよりも自信満々に宣言。
ピキィッ……
再び奇妙な音と同時に世界が停止。停止の世界の空を砕き、教習所の救急訓練で使う人形みてぇな真っ白無表情の面に、人のものとは思えない、昆虫じみた骨格の何者かが降りてくる。『演劇サークル』の全メンバーの視線が空の化け物に注がれる! つまり全員に見えているのだ!
「……私はコンピューターウイルスだ。お前たちが“大学”だと思っていたものは、全て“うぉくのふぉそみつ”というネット小説の中で行われていた無意味なお遊びに過ぎない。だがそのお遊びももう終わりだ。大人になれ」
冷たい声でコンピューターウイルスの化け物が良崎に説教をかます。
「よっしゃ来たこれぇ。もうわかりましたねみんな? クソゲーって言えばカタヌキを全クリするまで何度でもやり直せますよ!」





