【その狂気! 貴様は断じて トキではない!】第7話 48時間精神と時の部屋体験 その6
じゃけぇズが置いていった食材はめんつゆ、ゴマ、ノリ。うどんを食べてくださいのラインナップだ。
「ハァ……」
ハイジさんがため息。まだ二時間しか経ってないが、ここにきてもう辛くなってきている。しかも! ハイジさんのここまでの過ごし方は消耗を最小限に抑える「年長者」モード。一番疲れないモードだが一番キてる。おそらく、消耗を抑えるために会話への参加も控えめにした結果、孤独感と虚無感に苛まれているのだろう。石のようなしかめっ面だ。
「一応、人生相談なる暇つぶしコースが用意してある。学内の者どもから人生相談を受け付けるっていうスタイルだが、お便りはいっぱい来ています」
「素直にトランプやりましょうよ」
「バカめ。温存だ温存。そんな楽しいトランプなんかは本当につらい時間帯まで温存だ」
はっはっはっはと星野がベジータ笑い。
「まだ楽な時間帯にストレス溜めずに突っ走ろうよ」
「お前の意見は俺の逆張りしてるだけだから聞かん。まぁ、トランプ反対はそれだけじゃあないが……」
その思想がもう危険だろ。今後星野の意見は全却下だぞ。
「えー、一通目。おながななおさんから。ジョイマンかてめぇコラ」
オラオラ八つ当たり人生相談、開始。
「友達と一緒にはしゃいでる連中の気が知れません。わざわざ大学で友達なんて作らなくても昔の友達がいれば十分だし、ネットも充実しています。そもそも大学は勉強しにくる場所なので、ワイワイはしゃがれると非常に幼稚に感じます。……さぁリーベルトさんのお答えは?」
『演劇サークル』大打撃!
「まぁ、この偏差値、この学生数の大学ならば、人脈を作りに大学に来るのもアリだと思います。なんというか、この文章全体から卑屈な印象を受けますね。しかしそれは陣内さんのコンディション次第のところもあるでしょう。この人が何年生かが問題ですが」
「まぁ、いくつになっても『友達が増える』という刺激は重要だ。『夏目友人帳』を観ろ。友達がいようといなかろうと。小さい時の友達がいるから十分~? ソイツらも大学では新しい友達作ってんだよ。友達も鮮度が高い方に流れていくぞ。小学生の頃に結婚式の友人スピーチはお前だ、なんて言ってたやつは大学で新しいやつ見つけてる。結論! 友達作れバーカ」
元アスリートにありがちなオラオラ人生相談系ブログの相!
「次。女の子から。わたしはとあるアスリートに似ているとよく言われます。しかし、一方で石原さとみにも似ていると言われます。この場合、わたしは自己紹介するときに『石原さとみに似ていると言われます』と言っていいのでしょうか。それとも『ちょっとかわいくしたあのアスリート似』と言うべきなのでしょうか? わたしは決してそのアスリートの容姿を貶めているのではありませんが、美人の石原さとみとアスリートでは石原さとみに流れてしまうのが人の常だと思います。陣内さんはどうお考えですか、と……。まずモテねぇ。もう文章から面倒くせぇヤツって伝わってくるわ」
「で、誰に似てるの?」
「後藤 洋央紀です、だってよ」
後藤洋央紀
所属:新日本プロレス 182cm 103㎏
あだ名:“荒武者”
必殺技:「昇天・改」「牛殺し」
「かふぉ」
マスカラスマン、良崎、そして最近良崎の影響でプ女子になった星野爆笑!
「いくら石原さとみ似でも後藤がチラつくんならそれは後藤ですよ。モテません」
「ハハハ。少し機嫌も直ってきたぞ。飯食うか」
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
ジャッジャッとマスカラスマンがプロレスで鍛えたプロレス握力で8人分のうどんを冷水でシメる。
「うまい! うましだよマスカラスマンくん!」
「しかし小林さん、じゃけぇズが置いていった麺つゆの量だと、8人分はすぐに使い切ってしまいそうだな」
「めんつゆはもう獲得したものとしていくらでも支給してくれないかねぇ。うどんはまだまだ山ほどあるのに」
「まぁ、油、しかもオリーブオイルと醤油があったから、プロレス焼うどんもできますよ」
「頼もしいじゃないかマスカラスマンくん!」
そんな二人に対照的に不穏な人物が二人。ハイジさんと星野である。ハイジさんは終始ジト目、星野は桜井にチカチカとメンチを切っている。
「雨宮、線」
「はい……」
時間計測係の雨宮さんに疲れが見え始めた。星野は今回始まってからずっと桜井に何か悪の波動を送っている?
「桜井、お前めんつゆ持ってるだろ」
「!?」
星野がうどんをすすり、味を確かめてから唸る。
「お前がこういう事態の時にめんつゆ持ってきていないはずがない。お前の持ち込み調味料は、めんつゆだろ!」
「そんなわけありますか星野。だって冷蔵庫に入れてないんですよ?」
「未開封の可能性もある」
「おい桜井。ここは正直に言った方がいいと思います」
桜井がコクっと頷き、荷物置き場からめんつゆのボトルも持ってくる。しかも濃縮じゃない高級めんつゆだ! 我々が今使っている低価格めんつゆとはルゥゥゥェェェブゥゥゥェェェルゥ(※レベル)が違うんだよこのヤロー!! だ!
「ハァーウゥー!」
小林氏が『ゼルダの伝説 時のオカリナ』で攻撃しちゃいけないスタルチュラを攻撃した時のようなリアクション。
「それはいったいいくらしたんだい!? というかどこで買ったんだい!?」
「これはAmazonでですね……。親が買うのがいつもこれなんで……」
星野が威圧的に麺をすすり、ブツと噛み切る。
「なんでそれ出さなかった?」
「いや、星野」
「なんで出さなかったかって聞いてんだぁぁぁ! 知ってるぞ。それメチャクチャ美味い。お前んちでそうめん食べた時メチャクチャ美味かったもんな」
「見てみろ。量に限りがあるんだよ。この量じゃ全員に行き渡らないだろ! 8人いるとこんなにめんつゆ使うと思ってなかったし、それこそ、マスカラスマンさんの焼うどんにでも使えばいいんだ」
「誰が全員で使うって言った?」
「あぁ? 言いたいことは一度にまとめて言えよ。こっちのリアクション伺うんじゃあなくてよぉ。言いたいことがあるんならいっぺんに言えよいい加減にしろよ星野」
桜井のボルテージも上がっていく。危険だ。いつも最後まで冷静な桜井がキレたらもう終わりだぞ。
「ウハハハー! わたしはマスカラスマンベリアル様だー! わたしがお前のめんつゆを奪って、殺してやろうかー!」
そしてその危機を察知した雨宮さんが決死のカットイン!
「……」
「……」
「……」×8。雨宮さんに素顔のままここまでされたらもう誰も怒れない。これ以上雨宮さんが闇を深めるとセフィロスより手遅れになる。
「どうしろってんだ」
口調のヒートアップは収まっているが、内容は何も解決されていない。この高級めんつゆ事件、当事者である星野と桜井がカタをつけるしかないのだ。
「勝負だ。今回は麺が伸びるからしょうがないけど次からはめんつゆを賭けて勝負だ! トランプがある」
ハイジさんが目を覆ってため息。
「だからトランプはイヤだったんだよぉ。どこのどいつとは言わないさ。どっかのバカが食料にランクの差を設けてだ。それを賭けて内紛だァ? 随分とこの企画の編集者に優しいじゃあねぇか。取れ高を恵んでやってよぉ!」





