終幕~太陽の季節~
夜天光との戦いから多少の日々が過ぎ、夜天城からの攻撃でまだ校舎の三分の二が治っていない鬼瓦学園では三学期の終了式を終えた所だった。
中東から帰還した3四朗達鬼瓦の面々は、被害を受けた鬼瓦市の復興と、破壊しつくされた中東の復興に全力を注いでいた。一時的に退避した人間達も戻りつつあり、鬼瓦市は着々と復興作業を進行させている。中東の方はデスガールと星史朗に復興を任せ、鬼瓦市は3四朗と横田を中心にしたメンバーで復興作業にあたっていた。その面子に、サンライトとルナテイック、太陽竜史と月下輝の姿は無い。
そして、国会議事堂では――。
「……先の法案で、星徒は鬼瓦からの支配を脱し独立した組織となった。だが、これからも鬼瓦の関係は保ち続ける」
会場はざわめく。
「しかし、鬼瓦が迷走、暴走を起こしうる予兆を感じた場合、星徒は鬼瓦の首脳部を支配し、主導権を握る」
議事堂の一部からは夜天光に対して批判の声が上がる。
それに対してゆったりとした笑みを浮かべ、
「内部紛争からは何も生まれない。星徒は鬼瓦の外部顧問として、鬼瓦の発展と腐敗を監視し続ける」
そう言うと腰の後ろで手を組み、夜天光は壇上を後にした。
盤上騎士団はその後ろ姿に敬礼した。
ざわつく議事堂の議員達の目には、かつての鬼瓦総帥・鬼瓦元史朗の姿が映っていた。
星史朗は煙草に火をつけ、議事堂の正面入口に向かって歩いた。
二人の男が真逆の方向に歩く中、その中央にいた3四朗は、
「新生、鬼瓦の始動だ」
と、つぶやいた。
そして、議事堂内の庭に出た夜天光の姿が、少しづつ消えていく。
「……これで私が作り上げた鬼瓦の腐敗はあらかた一掃された。後は星史朗、3四朗……頼んだぞ」
元史朗の脳裏には走馬灯のように昔の記憶が流れていた。
「今まで十人以上の子を作ったが、様々な戦いや内乱で生き残ったのは六十五の時に創った星史朗だけになってしまったな。そして、孫があそこまで成長してるとは……」
思いつつ、背後に整列した盤上騎士団一人、一人の顔をしっかりと見つめ、
「盤上騎士団。諸君等はよくやってくれた。まさか、ここまで自我が成長するとは……命の深さか。お前達に与えた命は、私の腹心・夜天光の命でもある。後は頼んだぞ。鬼瓦を頼む……」
その声と共に盤上騎士団は敬礼し、夜天光である元史朗の姿は白い光と共に消失した。
一瞬、昔の元史朗の姿と夜天光の姿が映った。
※
「早いもので、とうとう俺達も三年か。鬼瓦市の復興は後、半年はかかるだろうな。暑くなる前に、夜天光に破壊された全ての復興を完成させたいものだ」
「そうだね。早く復興作業を終えて、竜史と輝が帰ってこれるようにしとかないとね……って、歩きながら寝るな幻覚!」
「ぜよっ……!」
バシッ! と頭を一発ナーコに叩かれた幻覚は、目を覚ます。
3四朗は、ふと空虚感を感じた。
桜並木があったはずの道を歩く三人は、あるはずの物が無い事に淋しさを覚えた。それは、すぐに竜史と輝の顔を思い出させた――。
「……元史朗によってあらかた鬼瓦の膿は取り除かれた。このありさまを見ると、この学園も俺の知らない所で暗躍してる奴がいたとはな。……またまだ復興は始まったばかりだ。来年の今頃は、満開の桜を目にしながら卒業だ。そして、卒業式には竜史と輝も居る。これも確定事項だ」
三人は鬼瓦学園の入口に立ち、修復中の校舎を見た。そして、同時に空に輝く太陽を見上げ、3四朗はつぶやいた。
「まぶしい、太陽だ」
太陽がまぶしく輝く空に一瞬、竜史と輝の顔が浮かんで、消えた。
太陽は輝き続ける。




