第49話 新訳・ひきこさん
深夜、私は車通りの少ない夜の高速道路を、時速100キロで走らせていた。
雨が激しくフロントガラスを叩く中、前方に一台の大型トラックが走っているのが見えた。だが、どうにも様子がおかしい。
車体の後方で、バチバチと激しい火花が散っているように見えるのだ。
荷物の落下事故だろうか。
気になった私は、さらにアクセルを踏み込んで、そのトラックとの距離を縮めようとした。
だが、向こうもかなりスピードを出しているのか、なかなか車間距離が縮まらない。
私は多少危険を覚悟で、さらにアクセルを強く踏み込んだ。
――だが、すぐにその行動を激しく後悔することとなった。
ヘッドライトの光が、前方の異変を鮮明に映し出す。
トラックは、何も引きずってなどいなかった。
逆だったのだ。
そこにいたのは、身長3メートルはあろうかという、白い服を着た巨大な女だった。
女は自らの足で時速100キロ以上の猛スピードで爆走しながら、お気に入りのぬいぐるみを手にした子供のように、巨大なトラックを片手で軽々と引きずりまわしていたのだ。
激しく上下左右に跳ね回る運転席の内部では、元の運転手が、激しい衝撃のせいでミキサーにかけられたかのように四方の壁へと肉体をぶつけられ、すでに真っ赤なミンチの塊と化していた。
あまりのおぞましさに、私は叫び声を上げ、すぐにブレーキを踏んで距離を置こうとした。
だが、その巨大な女が、ぐるりと顔を180度真後ろに反転させ、割れたガラス越しに私の目をまっすぐに睨みつけた。
耳まで届くであろうかという大きな口を歪ませ、狂気じみた満面の笑顔を浮かべながら、女はそれまで弄んでいたトラックを容赦なく手放した。
激しい金属音を立てて、アスファルトの上を転がっていくトラックの残骸。
もちろん、彼女がそれを捨てたのは――
私という、新しい「おもちゃ」を見つけたからに他ならなかった。




