救済
〜二百年後〜
「最高位創造神様、こちらを」
「こちらに許可を頂きたいのですが」
「あーはいはい! わかったから一人ずつ喋れ!」
天上界の一角。今日も今日とて忙しなく働く神が一柱。
「ったく、百年勉強地獄の後は仕事地獄かよ。忙殺する気まんまんじゃねぇか。親父が俺を生み出したのも納得だな」
デスクの後ろの壁に掛けてある肖像画を一睨み。
先代の最高位創造神は、ロキに全てを伝え終えた後で消滅した。
残っているものと言えば、この肖像画だけだろう。
「最高位創造神様、これはどうしましょうか」
「あー、ったく! 感傷に浸ることぐらい許せよ!」
また仕事に戻る。
あの面倒臭がりのロキが、最高位創造神としてここまで信頼されているのは、少なからず、先代の教授のおかげであろう。
「兄さん、忙しそうだな。代わるか?」
「うるせぇ。今更譲る気はねえよ」
執務中、弟の彼が隣に現れた。
「兄さん、非効率だとは思わないか? 俺の方が何倍も上手くやるぜ? それも省エネルギーで」
「るせぇなぁ。譲る気はねえっつってんだろうが」
「おー、怖い怖い。さすが、お父様に鬼神と呼ばれただけはあるぜ」
「あの親父、そんなこと言ってたのか」
「本人は自覚なしか。お父様、部下によく言ってたらしいぜ? 儂の息子は努力の鬼じゃ。ってな」
「へぇ」
ロキはチラリと背後の肖像画を見る。
厳しい顔つきでロキのことを監視していた。
「まさか兄さんがお父様に認められるようになるとは。よっぽどあの世界が大切なんだな?」
「まあな。たった二百年では諦められん」
元々物忘れも激しく、勉強の才は全くと言って良いほど無いロキ。
それが、最高位創造神になるためにどれだけの努力をしたか。
人の生であれば三周できるような期間を、勉強と実際の仕事に回してきたと言えば伝わるだろうか。
「それよりも、お前はどうだったんだ。村人転生は」
「ま、悪くはなかったぜ。ただ俺にとっちゃ、こっちの席の方が大事だがな」
「譲る気はないと」
「わーってるよ。また兄さんを殺す気なんてない」
「本当だろうな?」
「最高位創造神に楯突くとか、考えられないぜ」
「ふん。まあいい」
弟の彼はくつくつと笑う。
「それより兄さん、そろそろ」
彼が言いかけたとき、ロキはバッと立ち上がった。
「言ったそばから。終わったのか?」
「ああ。悪いが、仕事は任せた」
「そんなことでいいのかよ。仮にも最高位創造神だぜ?」
「覚えておけ。世の中には仕事よりもっと重要なものがある」
「かっこつけちゃってまあ。ま、いいけどな。俺の望みでもあるわけだし」
「言っておくが、席は譲らんからな。あくまで代理だ」
「はいはい。数十年、せいぜい好きにやらせてもらうさ」
「頼んだ」
「どうする? 戻ってきたとき天上界がボロボロだったら」
「それはねえよ。お前は俺より優秀だろ?」
ロキの言葉に、弟の彼は驚いたような表情になった。
「くくっ。兄さんが帰ってきたとき、席が残っていると思わないことだな。俺が優秀すぎて、みんな俺の方がいいって言うぜ」
「ふん。やれるものならやってみろ」
ロキは弟の彼を残して執務室を出た。
金色の円が、彼の前に出現する。
「やっと。やっとだ」
ロキは満面の笑みで、その円に飛び込んだ。
〜人間世界〜
「あら? 揺れは収まったかしら?」
「そのようです」
「なんでや? 世界が崩壊するんとちゃうん?」
「もしかして」
シャルルはロキが消えていった空を見上げた。
「あっ」
しばらくして、そこへ金色の円が現れる。
「ロキっ!」
中から現れたのは、白装束の壮年の男性。
二百年前から随分と成長した姿になったが、シャルルにはひと目でわかるらしい。
ロキは彼女らの姿を目にして、笑みを浮かべた。
「なんか、めっちゃ年取った感じするわ」
「はい。大人びて見えます」
「苦労してきたようね」
金色の円からゆっくりと降りてくるロキへ、彼女らも笑顔を向ける。
「ああ。約束通り、世界を救ってきてやったぞ」
ロキはサムズアップ。
「ロキっ! ありがとうっ!」
シャルルは翼を広げ、空を飛んでまでロキに抱きつきにかかる。
ロキは彼女を素直に抱きとめた。
「当然だ。この世界は、俺の居場所だからな」
口角を上げたロキは、抱きついてきたシャルルの髪を撫でた。
「ずっと一緒だよ、ロキっ!」
シャルルは満面の笑みをロキに向けた。
これにて「ジャン負け村人転生しようぜ」は終了となります。
ご愛読ありがとうございました。
稚な書きでしたが、楽しんで頂けたなら幸いです。
もしかしたら、続編を書くことがあるかもしれません。
そのときはまたよろしくお願いします。




