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【時空ねじ曲がりサンドイッチ集団と行くお・か・い・も・の☆】聡明なトウーメイの扉よ、開けモォーゼ!!!

前回のあらすじ:オシャエア町田の奇襲をくぐり抜け、どうにかラジと合流した修二と『野生の袖クルクル江戸っ子』、そして『ローマ罪・実刑判決男』。

この「珍味・大名行列」がついに、平和なショッピングモールへと侵入!


果たして、無事にお買い物を終えることが出来るのでしょうか?

いいえ、出来ません。うん、出来ないよそりゃ。だってあいつらだもん。


……あれ?! 意外と出来てる……?!

見直したかと思いきや……?!?!?!?!?!


意外な何かが芽生えるお買い物・中間編! 波乱の第13話、どうぞお楽しみください!


 ラジ、そして『キテレツ御一行様』が待ち合わせた噴水広場から歩くこと五分ほど。


 この街の中心地である主要駅の隣に、お目当ての大型ショッピングモールが隣接している。駅周辺には商店街や本屋などが軒を連ね、週末ということもあってか、家族連れやカップル、学生など大勢の人々が行き交っていた。


「いやぁ、今日は天気も良かったし、やっぱり人通りもすごいね。夕方に出てきてよかったよ」


「フゥン。干からびーイングの民は、大層チーピングな布をまとっているのだな。外出するというのなら、シーツ()の一つでもこさえるべきだが」


「アハハ、みんな暑いからね、薄着なんだよ。ナルシネス君、大丈夫? 暑くない?」


「心地よき、フォッティス☆」


「アハハ、それは良かった良かった」


 ラジは、前方で繰り広げられる修二とナルシネスの異次元な『高難易度キャッチボール』を無心で受け流しつつ、二人の背中越しに街の様子を確認しながら、一定の距離を保って淡々と歩く。

 休日の雑踏のせいか、行き交う人々がそれぞれの目的に忙しいせいか。すれ違いざまに横目でチラリと見られる程度で、危惧していたような大きな騒ぎには発展していない。


「…………」


……案外、こんなもんか。


まぁ、そうだよな。なんだかんだ言って日本は『奇抜』の許容範囲が結構広い。

となると、あいつらが宇宙人だっていう先入観フィルターさえ外せば、外から見たら別に大したことねぇのかも。


 ラジの脳内にて『ラジセコム』の警戒レベルが、マックスの段階五から二へと引き下げられたのと同時に。

 一行の前に本日のメインディッシュである――巨大ショッピングモールが『ドゥゥゥン!』と立ちはだかる。


 いつのまにか修二をも追い越し、『黒瀬の珍味ご団体』の先頭へと躍り出たナルシネス。彼は目の前に鎮座するショッピングモールを、足元から頂上まで満足げに見上げた。

 そのまま右手で華麗にシーツを翻し、正面玄関の自動ドアの前に立つや否や、あろうことか天を指差して高らかに美声を響き渡らせる。


「このナルシネスを(いざな)う、樹海の扉よ! 時は満ちた。開け、モォーゼ!!」


「…………」


 ウィン……。


 そんな彼の圧倒的『主人公オーラ』に気を使ってくれたのか。タイミングよくセンサーが反応した自動ドアは、両側へと静かにスライドし、『海割り』ならぬ『()()()()()』を見事に成し遂げる。


「フゥワハッハッハッ! 賢い子だ、大人しく開けるとはな! 聡明なトウーメイの扉よ、恐れおののくことはない、私はただのモモック星の第一王子だ☆」


 シルクのようなブロンドをフワッとなびかせ、清らかで妖艶な微笑みを浮かべながら自動ドアへと歩み寄ると、そのガラス面をひどく愛おしげに優しく撫でるナルシネス。


「「「…………」」」


 そのまま瞳を閉じて額をくっつけ、甘い声で何やら語りかけるという絶賛『優しい奇行』中の彼をよそに、修二とパジュは一ミリの反応も示すことなく横を素通りし、店内へ入っていく。

 最後尾のラジに至っては、瞳に冷ややかな光を宿したまま一瞥すらやらず、完全なる無言で中へと進んでいった。


***


「ねぇねぇ、あれって……」

「……えっ!?」


 店内へと足を踏み入れ、その場の空気が肌に触れた途端、ラジは静かに悟った。


 このメンバーで『ラブ&ピースのハッピー買い物』を成立させるなど――なんかたまたま近所のコンビニで出会った火星人と親友になって、サウナで一緒に整っちゃうくらい、果てしなく不可能な夢だったのだと。


「あの人たち、見て見て! なんかのイベントかな?」

「えぇ〜? ただのコスプレじゃない?」

「ちょっと、あそこ見てってば! ……えっ、やっぱ芸能人っぽくない!?」

「えっ、芸能人? ガチで!? つぅか、あれハリウッドスターじゃね!!?」


 ほんの数秒前まで、穏やかで活気あふれる笑い声が響き渡っていた平和な館内。

 だが、ラジたちが一歩、また一歩と奥へ進むにつれて、波紋が広がるようにザワザワとした異様な空気へと塗り替えられていく。


「…………」


……うん。仕方ない。大いに、仕方ない。


ちょっと背の高い平凡なメガネ黒髪おじさんと高校生の間に『鮪の一本釣りに燃える西洋人形』、さらにその後方から『百九十センチ超えのシーツロン毛』がついて来ちゃってんだ。


うんうん。そりゃそうだ。見るよ、見ちゃうよ。

五度見したって許される、常人と奇人が交互に重なった『()()()()()()()()()()()()()()()』が闊歩(かっぽ)してんだ。

もはや見ない奴のほうが変態説すらある状況だ。


 心の葛藤が一周回って、あられもない所に着地したのか。

 ラジは、太陽が東から昇り西に沈むのと同じように、向けられる視線と黄色い声をさも当然の摂理として受け入れ、ただただ真っ直ぐ前だけを見て淡々と突き進んでいく。


「パジュちゃん、気になるお店があったら言ってね! あ、ほら、あそこ! うちにあるパイナップル柄の台拭き、そこで買ったんだよ~。……へぇ、今年はレモン柄か~」


 自動ノイズキャンセリングでも搭載されているのか、久しぶりの外出に楽しそうなマンモス心臓の修二。左右の店を指差しては、その二歩後ろを歩くパジュを振り返りながらあれこれとガイドしている。

 そしてそのまた三歩後ろを、黙ってついて歩くラジ。


「そろそろタオルも買い換えないとね~。あ、ラジ。あそこの枕、すっごい良く眠れるらしいよ。町田さんも愛用してるんだって」


 「へぇ」と軽い相槌を打ちながら、修二が示す寝具店から、前を歩く小さな背中へとサラッと視線を移す。


「…………」


……そういや、あいつ。さっきから随分と静かだな。


 ワンテンポ遅れてその寝具店へと顔を向けたパジュの横顔が、彼の視界に収まった。


「……た、おる。まく、ら」


 修二の言葉を途切れ途切れに反芻するような、上の空の呟き。

 そしてさっきまでの威勢はどこへやら。頬をりんごのように真っ赤に染め、口先をにゅっと尖らせているではないか。


 よく見れば、気合を入れてクルクルと捲り上げたはずの左袖すらも、いつの間にか力なく肘の辺りまでだらんと落ちてきている。


「…………」


……あぁ、あいつ。


完全に『弁慶タイム(内弁慶)』に入ってやがる。


ったく、家じゃドカドカと俺の部屋に入ってくるわ、ドアというドアは壊すわで、やりたい放題の大暴れのくせに。

一歩外に出ると、まぁこれだ。借りてきた猫というか、なんというか。


 学校以外の人間、そして降り注ぐ視線に圧倒されたのか。また顔を俯かせ、不安げに前へと持っていかれた手。

 その手が腹部で服を強く握りしめているのだろう。背中の生地にはツンと引っ張られたような不自然な線が浮かび、ラジの視線がそこへと落ちる。


「……おい、パジュ」


 ぶっきらぼうな声に、パジュの足が止まる。

 呼ばれた方へと振り向く彼女の横をすり抜け、ラジは自然な足取りでパジュを追い越した。

 

 前から押し寄せる人混みと、無遠慮な熱い視線――それらをすべて遮るように、彼女の前を歩き始める。


「……『おしゃれ』してきたんだろ。肩、落ちてっぞ」


「…………ん、ラジィ」


 背中越しにツンっと言い捨てたラジの耳に届く、ぐずったようなどこか甘えた声。

 彼なりの配慮か、照れ隠しか。ラジは振り返ることなくただ淡々と前を歩き、何事もなかったかのように、また修二への気だるげな相づちへと戻っていく。


「あ、あそこ町田さんが言ってた石鹼の店だ! オーガニック石鹼が安く買えるらしいんだよね、いくつか買って帰ろうか?」


「石鹼なら洗面所の棚ん所にまだいっぱいあっただろ。荷物にな――るし、今度でいいよ」


 左手にかかった微かな重みに引っ張られるように、ラジの言葉が一拍、不自然に途切れる。

 何事かと、ほんの一瞬だけ視線を左下へと動かすと――そこには、彼が手にするスニーカーのショップバッグの端をギュッと掴んで歩くパジュの姿が。


 先ほどの表情と声、そしてこの状況。そのすべてを瞬時に理解したラジは、何事もなかったかのように真っ直ぐ前を向き、再び修二の相手へと戻っていった。


「あ~あの石鹼ね! 泡立ちがあんまりなんだけどね~」


「あれ全部消費したら、そこの店の買えばいいだろ」



………ハァ。

結局、俺が一番体力使ってんじゃねぇか。


 誰にも聞こえない短いため息と共に。

 その小さな「()()」に合わせたのか、それとも気になる何かがあったのか。ラジは相変わらず修二の相手をしながら、何気なくショーウィンドウを眺めるようにして、ほんの少しだけ歩調を緩めて歩くのだった。


***


「これ、食べたい。けろめる、あいす」


「先に買うもの買ってからな。あと、けろめるじゃなくてキャラメル」


 修二を先頭にウィンドウショッピングを楽しみながら、和気あいあいと穏やかに1階の奥にある日用品店へと向かう一行。


 ショップバッグ効果か、パジュのこわばった肩と口先は自然と元の位置に戻っていた。

 無表情ながらも頬をピンク色に染め、ラジの袋の端を頼りに辺りを眺めながらトコトコと歩いている。


「あ、そこそこ! このお店で、みんな用のコップとかお皿を買おうか! それぞれ好きな色の食器で統一すると可愛いかな~って」


 目的地への到着を知らせようと修二が振り向き、後ろを歩く『みんな』を見渡した時だった。


「……っと、あれ? ナルシネス君は?」


…………。


……な……るしね……す……?


…………ナルシネ……ス…。


……ナルシネス!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「……………ッ!!!!!」


 首の全筋肉を総動員し、最高速度で振り返る。

 だが――そこにいるはずの『ローマ永罪男』の姿は、影も形もなかった。


「………………」


……いねぇ!!!!

大人しくついてきていると思ってた圧倒的地雷『ナルシネス』が、いねぇぞ!?!?!?!


「あぁ……迷子になっちゃったかな? ハハハ。まぁ大丈夫だよ、彼は大人だし」


……そう…だよな。

あいつ、こっちの歳だと二十七だって言ってたし、だいじょう――――ぶじゃねぇ!!!!!!


俺史上、いや黒瀬家の歴代最強で史上最大の、圧倒的一番ナンバーワンのピンチ到来だ、馬鹿野郎!!!!!!


「ハハハ、じゃねぇんだよ! あんな『ローマ奇行男』を野放しにしてみろ!! 何しでかすか分かったもんじゃねぇ! さっさと探すんだよ!!!」


「うーん、でもナルシネス君だって、たまには一人でゆっくり過ごしたいでしょ? 彼はしっかりしてるし、大丈夫だよ。ラジ? プライベート、プライベート! ハハハ」


「…………」


……なぁにが『ナルシネスのちょっぴり素敵なプライベートタイム』だぁ!?!?

宇宙からはるばる己の足でやって来て、たいそうご勝手に人の部屋に寄生しやがってる御身分でよぉ?!!


こちとらプライベートの『プ』の字もねぇ、ナルシネス様の『ナ』の字でぎっちぎちのびっちびちの二十四時間なんだよ!!!!


おぉん? なんだ、あれか?! 各自リフレッシュできるし、お買い物もできるし、シーツずるずるで床は綺麗になるし、一石二鳥ならぬ三鳥じゃん☆ってか?!!


こちとらオールストレスでマイナス五十七億八千鳥じゃボケ!!!!


 ナルシネスの一挙手一投足により、明日の朝刊の三面記事へのカウントダウンが開始された今。『確保』という二文字を決心した一人の男、黒瀬ラジ。


 パジュが掴んでいたショップバッグを、そのままパジュごとゆっくりと、かつ一切の感情を排した真顔で修二へと預ける。

 次の瞬間――ラジの顔面は音速マッハで、ブオッ! と「般若(はんにゃ)」へと変貌を遂げた。


「ヤル……ヤルシカナイ。ヤルトキガ、キタ。」


 感情を失った悲しきロボットのような声を残し、ラジは本当の意味での『ナルシネスを(いざな)う、樹海の扉』へと、光の速度で駆け出していった。


***


 ――そして、捜索開始から数十分後。

 ラジは、ショッキングピンクのネオンが毒々しく輝くギャルファッション専門店『BLACK(ブラック)AGEHA(アゲハ)』の店頭で、我が目を疑うような信じられない光景を目の当たりにすることになる。


「…………は?」


……『金髪ロン毛仲間じゃん! やった~!! お話しよう?!』じゃねぇんだよ!!!!!!!!


(第13話へと続く)


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


パジュちゃんの気持ちは分かりませんが、彼女の中には『困りごとやピンチの時はラジを頼る』という法則があるんでしょうね。

歯磨き粉の時もそうでしたが、今回もまた、前を歩く修二ではなくラジでしたからね。


パジュは本能的に、修二の『末恐ろしさ』を見抜いているのかもしれません(笑)。大好きなことは間違いないのですが。


ちなみに、自動ドアでのナルシネスの『優しい奇行』を目の前で目撃した、買い物客の中島さんに突撃インタビューをしてきました。


(以下、中島さん・27歳女性のインタビュー内容です)


Q. 自動ドアに張り付いているナルシネスさんを見た時はどう思いましたか?


中島さん「あ、あれって点検業者の人じゃなかったんですか?」

インタビュアー「はい、あれはナルシネスさんですね」

中島さん「あぁ……はい。(どこのナルシネスさんだろう)えっと、よく分からないですけど、安全に作って下さって、本当に感謝してます」

インタビュアー「なるほどですね。あの、瞳を閉じて額をひっつける行動に愛を感じたと?」

中島さん「建設関係者の方が、あそこまでの情熱と愛を持って作って頂けるのは、利用者として嬉しいですかね」

インタビュアー「あ、あの方は建設関係者でもないです」

中島さん「えっ、建設関係者でもないんですか!? ……じゃあ、ただただ怖いです。何ですかあの人。こっわ」


【読者の皆様へ! ラジから切実なお願いです】


「近くで見てたけど、俺も怖かった」

「俺/私、近所のコンビニで出会った火星人とサウナで整ったことある」

「レストランに行く時ならシーツ花こさえてます」


……と、少しでもクスッとしていただけたそこのあなた!

ラジの音速マッハな捜索活動へのガソリン代として、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップして【★★★★★】に評価をお願いいたします!


ブックマークへの追加や、毎話の「いいね」も、作者とラジの大きな励みになります!


次回、ついにお買い物の最終戦! 『BLACK♡AGEHA』で待ち構える超チョベリバな事件とは!? お楽しみに!


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