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【ハッ!! ソレッ!!! アミィィィィゴォォォォ!!!】くそったれアミーゴ納豆とロン毛のステップはいかがですか?

前回のあらすじ:金髪ロン毛・アラウィル(アラサーのウィル・スミス)とお熱いコンソメ添い寝を終えたラジ。

親父・修二の謎すぎる「モモック星人耐性」により、黒瀬家はすっかり彼らのジパング観光の拠点と化してしまった!

果たしてラジは、この穏やかな我が家から宇宙人たちを追い出すことができるのか!?


――個性派・王族フルメンバーと共に迎える、初めての週末!

発酵臭の漂うリビングで、今回は一体何が起きるのか……!?


波乱と波乱とリズミカルな波乱の第10話、どうぞお楽しみください。


「ナルシネス様、ラジ殿、おはようございます。朝食の準備が整いました」


 耳に心地よい、渋く落ち着いたミルクの声が、ラジの意識を深い眠りの底からゆっくりと引き上げる。


 まぶたの裏に感じる、窓から差し込む柔らかな光。そして、どこか遠くで鳴いている小鳥たちの弾むようなさえずり。

 視覚と聴覚がとらえたのは、絵に描いたような、温かくて穏やかな週末の朝だ。


「…………」


……朝、か。

 

今、何時だ……? 

……ってか、ミルクさんが俺の部屋に入ってくるなんて珍しいな。


 寝ぼけた頭でそんなことをぼんやりと思いながら、ゆっくりと体を起こそうとした、その時――。

 ラジの右手の甲に、サラサラとした柔らかく長い髪の毛が、ふわりと触れた。


「…………」


…………あぁ。


 視線がその右手を捉えた瞬間。ラジの脳裏に、昨夜の『地獄・オブ・地獄』思い出が、色鮮やかにフラッシュバックする。


「ラジ殿、よく眠れましたか? 私たちのために、狭いベッドでのご就寝……誠に心から感謝いたします」


 ベッドの脇に静かに控えていたミルクが胸に手を当て、ラジの体調を気遣いつつ、深々と感謝の意を伝えてくる。


「……はよございます。……あぁ……いえ、大丈夫なんで」


 寝ぼけまなこで軽くペコッと頭を下げたラジは、シルクの髪を引っ張ってしまわないよう、そっと柔らかく右手を引き抜く。

 そしてそのまま起き上がり、ベッドからの『起床』ならぬ『脱出』を図った。


 彼がぬるりと抜け出したあとのベッドでは、ミルクの声など一切届かない深い眠りの奥地へと入り込んでいるナルシネスが、スヤスヤと平和な寝息を立てている。


「ラジ殿、下に朝食がございますので、どうぞお先に。――ナルシネス様、朝でございます。ナルシネス様」


「……ありがとうございます」


……なるほどな。この『坊ちゃん』へのモーニングコールも兼ねて、ミルクさんはわざわざ俺の部屋まで来たのか。

 

パジュといい、こいつといい、個性派王族の執事ってのも、大変だな。


 自力で起きる気など一切ないように、優美な顔のまま微動だにしないナルシネス。そして、『そんな横顔など三億回見ておりますので』と言わんばかりに、慣れた様子で淡々と語りかけ続けるミルク。


 そんな『スリープ・ロン毛』と『ノーダメージ・プロフェッショナル執事』の日常を背に、ラジは「……じゃ、お先に」とひと言だけ添え、コーヒーの香りが漂う一階のリビングへと降りていった。


***


 食卓についたラジの正面。

 そこには、我が家在住モモック星人の『ラスト一体』であるパジュが、眠たそうな顔でちょっこりと座っていた。


 修二が引っ張り出してきたであろう、ラジの小学生の頃のTシャツに身を包んだ彼女。

 その頭は、今や朝のお馴染みとなった、全方位の髪の毛がトルネードのように天井へと突き上がる『タケノコ族の族長』ヘアだ。

 そしてラジの左隣では、修二が相変わらず鼻歌交じりで、コーヒー片手に新聞を広げている。


「……ラジィ。ホワイトポーション、のみたい」


 パジュは自分の前に置かれていた小さなプラスチックのコップを右手で持ち上げると、慣れた手つきで彼の目の前へとぬっと突き出した。


「……牛乳な」


 呆れたように短く訂正しながらも、これまたごく自然な動作で差し出されたコップを受け取る。

 そして、BGM代わりに流れている朝のニュースを横目に眺めつつ、食卓の中央にあった紙パックからトクトクと牛乳を注ぎ、再び彼女へと手渡した。


「ほら、ちゃんと持てよな。こぼすだろ」


「ぬぃ~~~」


 パジュは小さな両手でコップをがっしりと掴む。早く飲みたいという欲求と、ラジへの返事が相まって謎の音を発しながら、タコのように尖らせた口へと一直線にコップを運んでいった。


 パジュとミルクという異物が黒瀬家に転がり込んできて、数回目の朝。

 ブロンドロン毛男と一夜を明かすという奇妙キテレツな夏の思い出を頂いたラジにとって――もはや目の前のタケノコ族の族長だろうと、隣のマッドサイエンティストだろうと、それら全てが、ただの平和な『日常の1ピース』に過ぎなかった。


「……パジュ、口の周り」


 ラジは「ん」と呆れたように短く声をかけ、食卓の端に置いてある箱ティッシュを差し出す。


 穏やかに過ぎていく朝。ラジの脳内で『何でもないようなことが幸せだったと思う、何でもない朝の……』という名フレーズと共に、「モモック・ロード第1章」が誕生しかけた、まさにその時だった。


 その何でもない幸せを華麗にぶち壊す『()()()』が、パタパタと軽快な足音を立てて階段を降りてくる。


「グッドモーニングLOVE☆をパジュにフォー・ユー♡ そしてプリーズ・ミー♡」


「…………」


……………ハァ、朝からきつすぎるだろ。

フルマラソン完走直後に、ニンニクましましましましの特濃豚骨ラーメンを『輸血』された気分だ……。


 ナルシネスの朝の挨拶『初心者』であるラジ。まだその姿を視界に捉えてすらいないというのに、甘ったるい声とワードの威力だけで、起き抜け早々に深刻な胃もたれに襲われてしまう。


 そんな彼を気遣ってか、あるじと共に降りてきたであろうミルクが、淹れたての香ばしいブラックコーヒーをそっと差し出してくれた。


「あ、ありがとうございます」


 豆から挽いたらしい芳醇な香りと、深い苦味をゆっくりと一口堪能する。

 その本格的な美味しさにどうにか胸焼けが軽くなったラジは、ふぅと安堵の息を吐く。そして、もう一口味わおうとコーヒーを含んだまま顔を上げた。――次の瞬間。


「………………ッ!!!!」


 盛大に吹き出しそうになったコーヒーを、ラジは必死で喉の奥へと押し戻す。

 見上げた先、パジュの右隣にいたのは、妹と同様に全方位の髪の毛が凄まじいトルネード状に突き上がった――『タケノコ族の族長:()()()()()()ver.』と化したナルシネスだった。


「……ッゴホ! ゴホッ! てめぇ、さっきまでサラッサラの髪で寝てたじゃねぇか!!!」


なんだ、あのヘアスタイル!! 起きる5秒前にそうなるシステムか、おい?! 

目覚めと同時に髪もお目覚めになるんですかぁ?!??


ってか、なんでお前のは二手に分かれてんだよ!

位が高いとそのニョッキも増えんのか!? てことは国王様は10ニョッキですか!?!? あぁん!!?


「ラジ、大声、朝からうるさいよ」


 息子の激しいむせ込みと、ナルシネスの濃厚すぎる『豚骨挨拶』に反応したのか、修二が少し怪訝な顔で新聞から顔を上げた。


「ナルシネス君、おはよう。パジュちゃんもナルシネス君も、こんなに静かにしてるのに、ラジは朝からうるさいですねぇ?」


 ハハハと、ひと笑いしながらのんびりとコーヒーをすする実の親を、ラジは往年の宿敵を見据えるような鋭い眼差しでガン睨み。

 憎悪を湛えた瞳でしっかりと修二をロックオンしたまま、一切の瞬きすら許さぬ威圧を放ち、熱々のブラックコーヒーをズズズ……とすすった。


「…………」


…………あいつのご陽気な『グッドモーニングLOVE』はスルーで、俺の至極真っ当な反論は『うるせぇ』ってか?


あいつらモモックブラザーズの頭の方がよっぽどうるせぇんだよ!!

食卓に3ニョッキ出現してんだぞ? 生物5に対して2ニョキられといて、なにがうるせぇだ、ボケ!


「兄上、おはむ」


「ナルシネス君、昨晩はゆっくり眠れたかい? 今日も朝からつやっつやだね~」


 ラジの放つ静かなる威圧も、ナルシネスのタケノコツインテールも。そのすべてが「さも当たり前の光景」であるかのように、ほんわかとした朝の日常が再開される。


「ナルシネス様、温かいうちにどうぞお召し上がりくださいませ」


 ミルクが黒瀬家の定番朝食をナルシネスの前に並べ、手際よく首元に白いナプキンを装着させていく。

 その淀みない日常の流れに合わせるように、ラジも「ハァ……」と呆れの混じった短い息をこぼし、食卓の味噌汁に手を付けた。


***


 今日のメニューは、真っ白に輝く炊き立てのご飯に、磯の香りが立ち上る修二お手製のワカメと豆腐の味噌汁。そしてパジュの大好物である納豆だ。


 納豆を保護している忌まわしきベタベタフィルムとの死闘を終えたパジュは、やっとの思いで『タレかけ工程』へと入っている。

 一方、その右横では。首に真っ白なナプキンを装着された第一王子が、「フンフンフン」と長い指先でひたすら優雅に料理の品定めを続けていた。


「…………」


……さっさと食えよな。

どうせおめぇみたいな甘やかされプリプリ王子から見たら、干からびてんだよ、黒瀬家の食事は!


 ラジが冷ややかな視線を送る中、パジュはいつも通り口先をにゅっと尖らせ、腕を大きく使って淡々と納豆をかき混ぜている。

 そんな彼女の姿を横目でチラッと見たナルシネスは、なぜか一瞬、フッと口角を上げて不敵な笑みを浮かべた。


「…………」


……あいつ、また何かする気じゃねぇだろうな。


 味噌汁をすすりながら、視線の端でその怪しい表情を捉えたラジ。なんせ相手は『リビングの壁ぶち抜き登場事件』の前科持ちだ。

 嫌でも警戒レベルが跳ね上がる中――意外にもナルシネスは、静かに納豆のフィルムを剥がしてスッと箸を入れると、妹を見様見真似で、ひたすらお淑やかに、かつ優美な所作でかき混ぜ始めた。


……ふぅ、これでようやく静かに飯が食えるな。


 そうラジがホッと安堵の息をつき、心の警戒を完全に解いた――まさに、その瞬間!


「フゥワハッハッハハ!! いいだろうパジュ☆ 朝から求愛ダンスか!!! 兄として、この全力のステップで受けて立つぞ!!!」


「なっ……!?」


 ガタッ! と勢いよく立ち上がったナルシネスは、食卓の椅子にガバッと片足をかけ、深く腰を落とした。

 そのまま腹出しパジャマ姿で、頭上のダブル・ニョッキを「ブリンブリンッ!」と激しく振り乱しながら、凄まじい速度で納豆をかき混ぜ始める。


「ハッ!! ソレッ!!! アミィィィィゴォォォォ!!!」


 ひとり『納豆・求愛ダンス』に白熱していくナルシネス。その熱狂に納豆好きの魂が激しく刺激されたのか、パジュはどうにか座ってはいるものの、顔を真っ赤にして口先を尖らせ、必死の納豆かき混ぜで応戦し始める。


「…………」


 ブリン、ブリンッ! ブン、ブンッ……!!


 二人の頭上で荒ぶるタケノコが激しく空気を切り裂き、超高速のかき混ぜによって放たれた納豆の糸が、まるでシルクのカーテンのようにひらひらと朝の虚空を舞う。


 窓辺には温かい日差しが降り注ぎ、外からは公園で遊ぶ子供たちの無邪気な笑い声が聞こえてくる。そんな、平穏そのものの土曜日の朝。

 だがしかし、ここ黒瀬家のリビングでは――空舞う納豆の糸を背景に、『師弟ニョッキ』による熱きダンス(?)バトルが繰り広げられていた。


 ラジは静かに箸を置き、ゆっくりと瞳を閉じると、納豆の『な』の字もない綺麗な天井を仰ぐ。


「…………」


……あぁ、人生って不思議だ。

まさか十七の夏に、宇宙人たちの『発酵ビーンズ・ダンスバトル』を特等席で拝めるサプライズが待ってたとはな。


 リビングを包み込む熱気と豆の発酵臭に、一周回って達観の境地へと至ったのか。もはやラジの目には「両者五分の良い戦いだ」とさえ思えてきていた。


 ――するとその時。

 それまでのどかにコーヒーを味わっていた修二が、ふと真顔になり、カップを『トンッ』と食卓に置いた。


「パジュちゃん、ナルシネス君。食べ物で遊ぶのはダメだよ。はい、座って座って! あ、ミルクさんも早く座って、ゆっくり朝食とってくださいね」


「…………」


……フッ、怒られてやがる。

親父はこういう礼儀とかマナーには厳しいんだよ! ざまぁみろ、『馬鹿がみるお前のケツ』だ!!!


 修二の真っ当な注意に対し、ラジが内心で歓喜の叫びをあげ、パジュが素直に「ごめんなさい」と頭を下げたのも束の間。

 『発酵ビーンズダンス大会』の開催者(けん)プレイヤーであるナルシネスは、一応は申し訳ないと思っているのか、ため息の出るような神々しい笑顔を浮かべて、ペロッと舌を出してみせた。


「いやぁ、ラテンの血が騒いでしまったね☆ ソーリー&ソーリー!」


 ナルシネスはくるっとその場で華麗なターンを決めると、何食わぬ顔で再び優雅に椅子へと腰を下ろす。


「…………」


……てめぇにラテンの血なんか一滴も混ざってねぇだろ。

お前は正真正銘のイカれモモック星人だ、ばか野郎! (もし本当に入ってたら、ごめん)


あと普通に『ソーリー&ソーリー』は腹立つからやめろ。重複の意味がわからん、せめて1(ワン)ソーリーだ。


「さぁ、改めてパパン殿が用意してくれた、壮大なモーニングをみんなで楽しもうではないか! 大地の恵みに感謝よ、モングモングマース!」


 両手を広げ、盛大にモモック星人流の食事の挨拶『モングモングマース』を唱えたその瞬間。


「……ビーンズ・スマッシュ☆」


 先ほどまで、あんなにも情熱的なステップで混ぜくりまわしていたというのに。

 ナルシネスは肩についた埃でも払うかのような軽やかさで、己のダンスアイテムであり相棒でもあったはずの()()()()()を華麗な手刀でシュッ! とラジの陣地へ――可愛らしい笑顔と共に『お届け』した。


「……おい、『ナイスアタック☆』――じゃねぇんだよ。行儀悪いことすんな。てめぇが混ぜた納豆はてめぇで食うんだよ」


 ラジが呆れ混じりに言い放つと、ナルシネスは貴族同士の腹の探り合いでもするかのように、フッと冷たく妖艶な微笑みを浮かべた。


「遠慮するな、そこの紅しょうが男児(だんじ)よ。これは貴様へのプレゼントだ。有難く受け取りタマーエ・アモーレ」


 地球での記念すべき初食事が、ねばねばの極地である『納豆』だという事実に、内心すっかり怖気づいたのだろう。その心情を悟られまいと、彼は何事も無かったかのようにスッと視線を外し、優美な顔で再び淡々と己の食事を進め始める。


「…………」


……こいつ、人に『お手付(てつ)き納豆』送り込んどいて、なにサラッと味噌汁すすってんだよ!


まぁいい、どうせお前は親父にまた怒られる運命だ。

親父はなぁ!? 無駄に礼儀作法に厳しい、厳格な日本男児なんだよ!!!!


 ラジが、宇宙人たちのご帰還へと繋がるであろう修二の『仏の怒り』に期待した――そのコンマ一秒後。


「納豆はさすがに厳しいよね。大丈夫だよ、ラジが食べるから。ほら、ラジはまだ自分の開けてないでしょ? ナルシネス君の食べてあげて」


「……………」


…………は?


……くそ野郎がぁぁぁぁぁぁ!! なに臨機応変にポリシー曲げてくれちゃってんだよ!!??!

時代に合った『コンプラ完璧・優良ホームステイ先』じゃねぇか!!!! その優しさ、一ミリでも俺に向けやがれ!!


そもそも、なんで俺が『見知らぬロン毛がぐっちゃぐっちゃに混ぜた納豆』を食ってあげなきゃなんねぇんだよ!!!

ふっわふわすぎて、もはや葉〇瀬太郎の頭みたいになってんじゃねぇか!!


我が家の『息子コンプラ』は無視か? 『愛する息子なら分かってくれるでしょ』精神か?!?!


「あ、そうだ! 今日は診察が三時には終わるから、その後みんなでお出かけしようか」


 ラジが放つ静かな威圧と怒りなど、修二にとっては子猫の威嚇程度にしか感じないのだろう。

 我が子の殺気など全く気にも留めず、ポンッと手を叩くと、満面の笑みで()()()()()()を掲げる。


「パジュちゃんやナルシネス君、そしてミルクさんの日用品も揃えないとだしね? じゃあ、そろそろ診察の時間だから。はい、みんな仲良くご飯食べて、後片付けまでするんだよ〜」


 そう言い残し、無慈悲なヘドロ提案と、納豆まみれのねばねば食卓を背に――。修二はご機嫌な鼻歌まじりに、診察室の方へパタパタと去っていった。


「…………」



「……ラジ殿、その『納豆』はこちらへ」


 修二が去るタイミングを見計らったように。

 『ロン毛特製・まぜまぜ納豆』から始まり、ねばねばシルクの糸掃除、さらには強制お出かけという修羅の道――これから待ち構える『バラエティ豊かな地獄』にあっけにとられていたラジを、フワッと包み込むように、ミルクが口を開いた。


「ラジ殿はご自身の前にある新品を頂いてください。そちらは、私が美味しく頂きますので」


 ラジの右斜め前、お誕生日席にサッと座ったミルク。

 その表情自体は大きく変わらないものの、慈愛に満ちた瞳と、「わかっていますよ」と語りかけるような優しい瞬きが、ラジの心に深く染み渡る。


「…………」


……ミルクさん、ありがとう。

あんたは奇人界隈の常人どころか、『すっごく優しいですね界隈』のプロ・オブ・プロエンジェルだ。

こんな温かい血が通った聖母のような人に、あいつの『くそったれアミーゴ納豆』を食べさせるわけにはいかねぇ。


この方はなぁ……毎日あの爆裂ドメスティック・バイオレンス兄妹の世話で大変なんだよ!

せめて……せめて朝食の納豆くらい、真っ新で綺麗なものを頂いてくれ…………!


「……あぁ、いや、大丈夫っすよ。混ぜるの省けてラッキーなんで」


 与えられた慈愛へのお返しと、日々の苦労への労いを込めて。

 そして、相手に余計な気を遣わせないための最低限の配慮として、ラジは自分の前にあった手付かずの新品を、自然にスッとミルクの方へ寄せた。


「……ラジ殿……」


 感極まったミルクの声を受け止めたのか、ラジは何かの覚悟を決めたように「フゥ……」と短く息を吐き、手元のパックへと手をかける。

 前衛的な芸術作品とでも言うべきか。激しいダンスバトルを駆け抜けた結果、もはや「綿菓子」と化した『葉加瀬・納豆』。


 ラジはそれを淡々とご飯へとかけ――あまりにも自然に食していく。


 モグモグ…………


 その一口を皮切りに。

 二口、三口、四口。エアリービーンズを絡めた白米が、リズミカルに口へと運ばれていく。

 あろうことか、虚無の底に沈んでいた瞳は、箸の動きに合わせるように、徐々に鮮やかな生気を取り戻していくではないか。


「…………」


……いいな、『発酵ビーンズ・ダンスバトル』。


(※どうやら、大変美味であった模様)


 ――ちなみにミルクは、この時のラジの儚くも美しい横顔(と、師弟ニョッキによる惨状(さんじょう)『乱れ散り・五月雨(さみだれ)ねばねばシルクカーテン』)を一生忘れないと、後に語っている。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


まさか私たちも、師弟ニョッキによる『発酵ビーンズ・ダンスバトル』を生で見られるとは思っていませんでしたね。とてもいい経験でした。

いくら美味しいからといって、皆様はくれぐれも愛する人へ『葉加瀬納豆』をビーンズスマッシュしないよう、お気を付けくださいませ。


ちなみに、あの悪魔のエアリー食感を知ってしまったラジは、たまにナルシネスを踊らせて(=混ぜさせて)、エアリービーンズを堪能しているとのことです。


【読者の皆様へ! ラジから切実なお願いです】


「今度、会社の上司にソーリー&ソーリーを使ってみよう」

「発酵ビーンズダンス大会の共同主催者になりたい」

「多分、私/俺なら優勝する自信がある」


……と、少しでもクスッとしていただけたそこのあなた!

ラジの失われた平穏と、納豆のネバネバまみれになったリビングへの慰謝料として、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップして【★★★★★】に評価をお願いいたします!


ブックマークへの追加や、毎話の「いいね」も、作者とラジの生きる希望になります!


次回、この奇人宇宙人ご一行を引き連れて、ついに地獄の『街にお出かけ編』へ突入します! お楽しみに!



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