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『しーちゃんと記憶の図書館』第54話
道の途中で
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海斗はリュックを背負い、駅へ向かう道を歩いていた。
空はすこし曇り、街の色が柔らかく滲んで見える。
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ふと、古びた公園の前で足を止めた。
ブランコに座っている少年が、膝を抱えてうつむいている。
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「大丈夫?」と声をかけると、
少年はゆっくり顔を上げた。
その瞳は、泣きはらした後のように赤かった。
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「……お母さんとけんかした」
海斗はベンチに腰を下ろし、
リュックからスケッチブックを取り出した。
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「じゃあ、ここで景色を描いてみよう。
話すのがむずかしいとき、絵にすると楽になることもあるよ」
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少年は最初、ためらっていたが、
海斗のえんぴつの動きをじっと見て、
やがて自分も小枝で地面に絵を描き始めた。
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二人の間に、少しずつ風が通った。
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別れ際、少年は小さく笑った。
「ありがとう。帰ってみる」
海斗はその背中を見送りながら思った。
“絵は、やっぱり誰かの心を変える力がある”と。
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その足取りは、また少し軽くなっていた。




