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『しーちゃんと記憶の図書館』第21話
耳に届いた言葉
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夕方、図書館の扉が軽く開いた。
入ってきたのは、ランドセルを背負った少年。
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しーちゃんが笑顔で迎えると、
少年はまっすぐ“記憶の棚”へ歩いていった。
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その横では、
さきほどまで夕焼けの話をしていた女性が、
しーちゃんと小さく言葉を交わしていた。
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「色は変わらないけれど、見る人の心は変わる」
しーちゃんのその言葉が、
少年の耳にふっと届いた。
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少年は足を止めた。
「…それ、本当?」と、
小さな声でつぶやいた。
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女性がしゃがんで目線を合わせる。
「うん、本当よ。君も夕焼け、嫌い?」
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少年は少し考えてから、
「お母さんがいなくなってから、夕焼け見たくなかった」
と、ぽつりと答えた。
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女性はそっと笑った。
「じゃあ、今度一緒に見ようか。
もしかしたら、少し違って見えるかもしれないよ」
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その約束は、
図書館の小さな夕暮れ時に、
静かに結ばれた。




