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『しーちゃんと記憶の図書館』第20話
夕焼けを避けた日々
女性は、手紙を胸に抱いたまま、
窓の外の空を見上げた。
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「…あの頃の私は、夕焼けを見るのがつらかったんです」
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十数年前、
女性は突然、大切な人を事故で失った。
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その日も空は真っ赤で、
あまりにも美しくて、
だからこそ、胸を引き裂くように痛かった。
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「夕焼けは、あの日の痛みを連れてくる色だった。
だから…ずっと背を向けて歩いていたんです」
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彼女は、小さく笑った。
「でも、この手紙を読んだら、
同じ色を見ながら、誰かがまた歩こうとしているって思えて」
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しーちゃんは静かにうなずいた。
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「色は変わらないけれど、
見る人の心は変わります。
もしかしたら、その変化こそが、
夕焼けのやさしさなのかもしれません」
—
女性はゆっくりと封筒を棚に戻した。
でも、その目はもう、
夕焼けから逃げてはいなかった。




