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『しーちゃんと記憶の図書館』第2話
最初の訪問者
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扉を開けた翌朝、
しーちゃんは「記憶の図書館」の奥の間に向かった。
古い窓から差し込む光が、
棚に積まれたノートや手紙のほこりをやさしく照らしている。
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そのとき、廊下から小さな足音が近づいてきた。
入口に立っていたのは、まだ小学校低学年くらいの男の子。
「ここ、入ってもいいの?」
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しーちゃんはうなずき、
「ようこそ。ここは、まだ誰も知らない物語の部屋なのよ」
と微笑んだ。
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男の子は棚の一番下から、
色あせたアルバムを引き出した。
中には、海辺で笑う女の子の写真。
その横には、走り書きの短い詩が添えられていた。
『波は知っている 君がここに来たことを』
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「この子、僕と同じくらいの歳だ」
男の子は写真をじっと見つめた。
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しーちゃんは、その目の奥に
何かを見つけたような気がした。
「もしよければ、この子のために絵を描いてみない?」
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男の子はうれしそうにうなずき、
アルバムを大事そうに抱えて部屋を出ていった。
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しーちゃんはそっと扉を閉めながら思った。
物語は、開くことで息をし始める。
誰かの手に渡るたび、新しいかたちで生きていく。
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その日、「記憶の図書館」には
最初の物語の息吹が満ち始めていた。




