第6話 あなたと結ばれます 3
披露宴が終わり、私たちは新居へ向かった。
王城の一角にある家。ここが私たちの新しい家として与えられた。
二階建ての可愛い家だ。寝室、書斎、そして――私のための研究室も用意されている。
「セリア」
レオンハルトが私の手を取る。
「これから、ずっと一緒だ」
「うん」
私は微笑む。
「ずっと、一緒」
彼が私を抱き上げる。
「わっ!」
「新婦を抱いて、寝室に運ぶ。そういう風習があるんだ」
レオンハルトが照れくさそうに言う。その顔は、少し赤くなっている。
「そ、そうなんだ……」
彼が寝室に私を運ぶ。
ベッドに、優しく下ろしてくれる。
「セリア」
「うん」
「愛してる」
その言葉に、胸が熱くなる。
「私も、愛してる」
レオンハルトが、ゆっくりと顔を近づけてくる。
私も、目を閉じる。
唇が、触れ合う。
そして――。
長い、長い夜が始まった。
――――――――
数日後。
私は研究室で、魔法書を読んでいた。
でも、今は一人じゃない。
隣には、レオンハルトがいる。
彼も床に座って、魔法書を読んでいる。
「この魔法陣、面白いな」
最近、彼は魔法に興味を持ち始めて、時々一緒に本を読んでくれる。
「でしょ? これを使えば、もっと効率的に――」
私が説明していると、扉がノックされた。
「どうぞ」
入ってきたのは、アレックスだった。
「よう、新婚さん」
彼が笑う。
「調子はどうだ?」
「うん、すごくいい」
私は微笑む。
「レオンハルトと一緒だと、研究も楽しい」
「そうか。それはよかった」
アレックスが一冊の本を取り出す。
あの黒い革装丁の本。
「最後のページに、お前たちのことを書き記したい。いいか?」
「うん」
アレックスが本の最後のページを開き、羽根ペンで丁寧に文字を書き込んでいく。その手つきは慎重で、一文字一文字に想いを込めているようだ。
『聖女セリア・ルミナスは、騎士レオンハルト・フォン・ヴァルハイムと真の絆を結び、“聖女の宿命”を打ち破った』
『真の愛と絆を見つけし聖女は、宿命を超える』
『これより、聖女は孤独ではない』
『愛と絆があれば、どんな運命も変えられる』
その文字を読んで、涙が溢れた。
これから先の聖女たちは悲しい宿命に悲観しなくてもいいんだ。
「ありがとう、アレックス」
「どういたしまして」
アレックスが微笑む。
「さて、俺は行くよ。邪魔したな」
彼が部屋を出ていこうとする。
「アレックス」
私が呼び止める。
「ん?」
「リディアのこと……」
「ああ。あの水晶は、王城の地下深くに保管してある。厳重に封印されてるから、心配するな」
アレックスが少し真剣な顔になる。
「ただ……いつか、封印が解ける日が来る。その時は――」
「その時は、私たちが向き合うよ」
レオンハルトが言う。
「今度こそ、彼女を救えるように」
アレックスが頷く。
「そうだな。じゃあ、その時はまた頼む」
彼が部屋を出ていく。
私とレオンハルトは、二人きりになった。
「セリア」
「うん?」
「これから、どんな未来が待っているかわからない。でも――」
レオンハルトが私の手を取る。
「お前と一緒なら、怖くない」
「私も」
私は微笑む。
「レオンハルトと一緒なら、どんな未来も楽しみ」
私、レオンハルトと結婚した。
聖女の宿命を、打ち破った。
そして――。
これからも、床でゴロゴロしながら、クッキー食べながら、魔法書読みながら。
レオンハルトと一緒に、幸せに暮らしていく。
それが、私の選んだ人生。
ぐうたらだけど、魔法オタクだけど。
でも、それでいい。
だって、レオンハルトは全部受け入れてくれたから。
私は、幸せ者だ。
窓から差し込む光が、床に散らばった魔法書を照らしている。
私たちは床に座ったまま、寄り添い合った。
私たちは、キスをする。
窓の外では、太陽が輝いている。
新しい未来が、始まろうとしていた。
―第6話 終―
―第1部 完―




