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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
83/119

第七十六話 役満級っ!?

グラたん「第七十六話です!」

 一方で少し離れた場所では満足行くくらいまで売り上げを伸ばしたレミリアたち、紅魔の館が暇そうに椅子に座っていた。


「おかしい」

「何が?」

「さっきまで増え続けていたお客が全く来なくなったわ」


 先程までは賑やかだったブースも今は閑古鳥が鳴いており、それはレミリアたちも例外では無い。別の場所では盛り上がりを見せているためその内戻って来るだろうとレミリアは思う。


「こういうのは需要が少ないと思うけど?」


 パチュリーが本を手に取り、呆れ気味に呟く。今回の作品はメイド×メイドではなく、主人と従者本となっている。


「いいえ。割と多いわ」

「そう、だけどこれは人為的な何かを感じるわ」


 まるで魔法もしくは能力を使っているかのような――と思う。


「運命を見て見たら?」


 するとレミリアはハッと鼻で嗤った。


「能力を客商売に使うなんて器の程度が知れるわよ。こういうのは正々堂々やってこそよ。けど……フラン、美鈴、パチェ」

「はい!」

「ノルマはもう達成しているし遊びに行きましょうか」


 お客が来ないのであれば商売を続ける意味はなく、ノルマ以上は稼いでいるのでここらで切り上げても良いだろうとレミリアは考える。


「おー!」

「いえー!」

「なら、まずは片付けないとね」


 三人共に店じまいの準備を進め、そこへ店舗見学をしていた永琳と輝夜が訪れた。


「もう店じまい?」

「向こうは大盛況だったけど良いのかしら」


 輝夜もいつもの仰々しい恰好ではなくサマーワンピース姿で、永琳も半袖の赤紺のチュニックを着ている。 


「あら、二人共」

「大盛況って何処が?」

「メンタさんたちの所ですよ。これ、現時点の総評よ」


 烏共が数時間単位で調べている売り上げの紙を貰い、レミリアは絶句した。


 1位 博麗紙社  32000部

 2位 紅魔の館  3920部

 3位 天魔様の本 3400部


「馬鹿な……役満級っ!?」


 実に紅魔館の10倍近い売り上げを叩き出しており、多少なりと相場を知っているパチュリーも目を丸くした。


「やくまんって何?」

「役満とは麻雀の役でして――」


 よく分かっていないフランは役満と麻雀について美鈴から教えて貰っている。


「随分とぶっ飛んだ数出したわね。これって三日分以上の部数を刷ってるわね」


 ほんの少し前は自分たちが買っていたのに――とレミリアは不審げにメンタたちの居るブースに視線を向けるとちょうどその方角から疲れ顔の藍とブース巡りを楽しんでいる橙が見え、此方へと向かってくる。


「本当にもう……紫様は……」

「みずあめー」

「藍に橙、どうしたのですか?」


 永琳が聞くと、藍は嘆かわしいとばかりに顔に手を当ててしゃがみ込んだ。


「ううっ……紫様がお金に眼が眩んでメンタさんとてゐさんに能力を使わせて売り上げを――」


 その言葉に流石にパチュリーもあんぐりと口を開けた。


「本当、程度が知れたわね」


 その点レミリアは勝負に乗らず、自身の力のみで挑もうとしていたことは賞賛されて然るべきだとパチュリーは思う。部数では負けてもプライドでは大勝しているのだから誇って良い、と言おうとレミリアを見ると――。


「負けるかぁぁ!! 能力発動!」


 キレたレミリアが負けじと能力を発動させようとした。


「コラッ!? 美鈴抑えて!」

「八卦封印!」


 美鈴の『能力封じ』は気功を相手の体内に送り、脳波を見出して行動不能に陥らせる技だ。これは霊夢でも食らえば意識があるまま動けなくなるのだが、怪物と呼ばれるレミリアは取り押さえられても持前の剛腕でダダを捏ねた。


「離せぇぇ! あっちがその気ならこっちもやるわよ!!」


 これはいけない、とパチュリーも魔導書を開いて拘束術式を展開しつつ諫める。


「貴方カリスマはどうしたのよ!!」

「カリスマなんてブレイクするためにあるものよ!」


 ギャース! と顔面も崩壊させて子供のように暴れ、いつも重要視しているカリスマを投げだす発言にパチュリーと美鈴は面食らった。


「ちょっと、自分が何言ってるか分かってるの!?」

「お、落ち着いてください! レミリア様!」


 ギャー! と騒ぐ傍らで橙はフランの方へ寄っていく。


「フランもみずあめいる?」

「いる。ありがとー」


 そうして、水あめを舐めながらコスプレ撮影ように用意していた三脚カメラの録画ボタンを押し、レミリアの醜態を撮影する。

 後に、この映像は咲夜に発見されて高値で取引されることになる。



 西側のステージライブでは諏訪子・神奈子を神衣した早苗、依姫を神衣したパル、咲夜の三人が歌って踊っていた。早苗はメインボーカルを務め、パルと咲夜はサイドでギターを弾いている。

 勿論、ずっとその状態では早苗もパルとあっという間に体力の限界が来るため、途中で諏訪子がキーボード、神奈子がドラムを担当して負担を減らし、依姫は咲夜と交代でギターパフォーマンスを見せている。


『これが私たちの神衣だ!』

『行くよ!』

『三曲目・嵐の唄!』


 チェイルズ・オブ・ゼステリャ・ジ・クロウズのオープニングが流れ、観客も更に盛り上がってペンライトを激しく振るい始める。


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

『踊れ! 踊れ!』


 そこに混じって最前列で兎兵士たちが隊祭士たちと共に踊る姿があり、一切乱れない御多芸に隊祭士たちも負けじと追いすがっていく。


「雷閃! 雷閃!」


 その様子を背後の壁よりに見ている灰色の人は眼を細めていた。


「あの子もあんな楽しそうに歌えるのね……ま、サイリウムくらいは振っても良いかな」


 初めて見る依姫の楽しそうな表情に彼女は仮面越しに微笑み、右手を高く上げてサイリウムを振り下ろした。

 余談だがサイリウムとはライブ会場などで使われる棒状のライトのことだ。これが数百人規模で振られるだけでも圧巻の光景となる。 



 一方で東側のステージライブは観客が楽しむ西側と違い、暴力的なまでに動かされる荒波と化していた。


「さっさと踊りなさい! 五曲目・サンダーグリッツ!」


 その元凶がステージのセンターで荒々しく身丈に合わない左手の義手を振り回し、右手のマイクで叫ぶ霊夢だ。ステージの下では隊祭士、導師、下位賊が必死になって追いすがり、爆発的な熱気に包まれて熱中症になる観客たちを外へ引っ張り出していた。


『ぬおおおおおお!!』

「うぐぐ……」

「くそっ! 思ったより激しいな!」

「これが御多芸って奴なの!?」


 曲は序盤から激しく、腕を激しく横に振るい華麗なステップを踏んで踊る。


『フッ! フッ! 行歌陣! 行歌陣!』

「食らいなさい!」

「来ますよ!」


 霊夢の声と霖之助の合図で右側の隊祭士がしゃがみ、左側にいる下位賊たちが身構える。


『真王遠月波!』


 うおおお! と雄たけびを上げながら右から左へ波を作り、既に悲鳴を上げている足腰に鞭打って彼らは再び立ち上がる。


「ぜぇーぜぇー」

「お嬢、お水飲む?」

「うん……」


 レリミアたちは三曲目で倒れ、端で休憩しつつ倒れた者たちと共に会場を眺めている。一線級の隊祭士も数人倒れており、下位賊などは大多数が地面に伏せている。

 全体的にステージを見てみると、ボーカルは霊夢、ベースは魔理沙、ギターがアリス、ドラムはさとり、キーボードをこいしとお空が弾いている。お燐はイナバと共に裏方の照明を担当している。

 五曲目が終わり、霊夢は息を切らすことなく化け物じみた体力を見せつけて左手を掲げ、六曲目を合図する。


「次! 容赦しない! 六曲目・リーサル・エヴェイン!!」


 霊夢は歌い続けられるが魔理沙たちはそろそろ体力的に限界だ。普段家に籠っているアリスは顔を赤くし、さとりたちも腕を痙攣しかけていた。


「くっ!」

「魔理沙……んっ……激しっ……!」

「あ、アリス! 変な声出すな!」


 曲が始まれば文句を言う暇はなく、隊祭士たちもまた数十人単位で脱落する。


「ぜぇぜぇ……これは一体何時まで続くんだ?」


 導師である枢は比較的体力があるが、永遠に終わらないのではないかと思わせる連続曲の攻めに疲弊の色を見せていた。 

 だがファンの一人として、導師という重要職を任されたからには最後までやり遂げる覚悟で両腕を上げ、隊祭士たちに発破をかけ踊り出す。


 

 十二時を回る頃には来舞も一段落を終え、メンタたちも満足気な売り上げを見て合流地点である地下会議室へと来ていた。地下は関係者以外立ち入り禁止となっており、スルトが作った屈強な警備兵ゴーレムが待機巡回しているため一般人も貴族すらも立ち入れない場所となっている。

 待ち合わせがこの場所になったのも、大人数のため休憩スペースを使っては迷惑になり、大きく幅を取ることになってしまうからだ。

 その他にも魔力が強いとか大半が妖怪だからという理由もある。

 そのメンタたちは冷房のガンガン効いた会議室で飲み物を片手に机に伏していた。 


「し、死にます」

「明らかに発行部数が異常だったな」

「でもおかげで大繁盛! 博麗の名前も売れて信仰も集まってホクホクよ!」


 売り上げは上々。橙たちもじゃがバターを食べてホフホフと息を吐いている。


「ホクホク~」

「お芋ホクホク~」

「はふはふ」


 次いで、発行部数で負け、矜持でも負けかけたレミリアがへッと嗤う。


「能力使って、ね」

「卑猥な本売って、ね」

「紫様……遂にそこまで落ちぶれましたか……」

「……やれやれ」


 藍と咲夜も呆れ気味に溜息を吐き、機材の収納を終えたパルたちがお弁当を持って会議室に入って来る。


「お昼持って来たよ~」

「いっぱい作ったから完食してね!」


 ガラガラガラ、と台車を持って来る所を見るに全員でも食べきれるかどうかを疑う量だと霊夢は思った。


「パル姉と依姫姉の手料理待ってました!」


 が、パルの味ならまだしも依姫は料理が出来るのか、と紫は訝しむ。

 弁当箱を開くとおにぎり、サンドイッチ、唐揚げ、卵焼き等々の手軽な料理からシュウマイ、牛丼など重いものまで作られている。

 各自が適当にバラけて座り、昼食を手に取っていく。


「うまー!」

「美味しい!」

「まだまだ来るからね!」


 パルの言葉を聞いて入口の方を見れば早苗と咲夜が台車に鍋を乗せて入って来た。それならば遠慮はしなくて良いとフランとこいしたちは両手にサンドイッチを手に取り、頬袋に詰めていく。 


「おおっ、美味いぜ。って、霊夢どうした? 踊り疲れてバテたか?」


 魔理沙も舌鼓を打ち、あまり箸を進めていない霊夢の方を気に掛ける。


「そういうわけじゃないけど……」

「なら?」

「食べても何故か味がしないのよ……」

「悪い冗談だぜ。いくらヴェルベット役やってたからと言ってもそこまでなるか? な、メンタ」


 唐揚げを飲み込み、メンタは少し唸ってから答えた。


「イマジネーション効果とかでしょうか? ちなみに服とかに効果付与はしていませんよ」

「なら一時的な物かしら? ……でも味がしないのってなんか悲しくなるわね」

「今食べているおにぎりの感触を具体的にいうと?」


 ――具体的に……感触的には粘土が近いかしら? あー、いや泥に近いかしら? 塩も砂食べてるみたいな感じだからね……。漬物は西瓜の白い部分を噛んでる感じかな。

 そこまで考え、談笑しながら食事を進めているパルたちの方を見て押し黙った。


「……それは言わないでおくわ。作ってくれたパルと依姫に悪いからね」

「……ですね」


 メンタも考えていたことを読み取り、それが良いだろうと頷いた。

 そのパルたちは各々の感想を聞き、美鈴たちの本当に美味しそうな表情を見て満足気に頷いた。


「美味いっ!」

「ヤバイ!」

「そう? 良かった!」


 その横から依姫が箸で卵焼きをつまみ、パルを振り向かせて口元に運ばせる。


「パル、あーん」

「あーん」


 ぱくっ、と食べ、それを目撃したメンタが驚愕した。普段なら恥ずかしがってしないだろう行為を目の前でさせられればそうもなるだろう。


「ナッ!? あのパル姉が何の抵抗も無しに――」


 ガタガタガタと震え、メンタの表情がだんだんと消えていく。


「メンタ、しっかり」

「戻ってこーい」

「あ……ぁぁ……AA……aa……」


 ぷしー、ぷしー、と人間ならざる音声を発し、メンタは虚空を見つめた。


「メンタ、死す」

「良い奴だっだよ……」


 既に戻らないことを確認し、てゐたちは唐揚げへと手を伸ばした。



 別の場所では咲夜がパルに自信作のサンドイッチを食べさせており、至ってなんでもないようにこの後の予定を聞いた。


「パル、午後はどうするの?」

「んっと……午後一番に来舞するくらいだよ」

「なら丁度良いわ。諏訪子様と神奈子様に頼まれていることがあるからちょっと手伝ってほしいんだけど」

「良いよ~。早苗はどうする?」


 早苗の方を見ると一枚の書類を手に泣いていた。


「私は諏訪子様に無理やり血判状押されました……」

「ええ……い、一体何をするんですか?」

「そういうと思って持って来たわ」

「説明書~」


 ぽんっ、と諏訪子から渡された説明書を開き、パルは内容を読み込んでいく。



 それは前日の夜にまで遡る。

 主犯はやはりメンタとてゐの二人。


「さて、こういう催し物をするのも三回目になりますね」

「一回目は王様ゲーム、二回目はダウト……と言ってもあと残っているのは人狼ゲームとか麻雀か?」

「それも良いんですけれど、今回はちょっと諸事情がありまして守矢VS博麗の合戦をすることになっているんです」

「それって弾幕ゲーってことか?」

「『両者を恨まない』という点ではスペルカードルールを適応させて貰います。一応候補は五つくらい考えてあるんですが……まあ、引いてからのお楽しみということにしましょう」

「……待て、その言いようだともう既に舞台が完成しているように聞こえるんだが?」

「……神様の力って凄いですよねー、物理法則を無視してますから。ともかく! 場とカードはありますんで、後は役者待ちです!」


 と、言った傍から扉が開き紫たちの姿が見えた。


「来ましたよ」


 今回呼び寄せられたのは紫、藍、諏訪子、神奈子、早苗、霊夢、魔理沙だ。


「……はぁ」

「何やらされるのか全く聞いてないんだけど」

「おう」

「全くだ」

「よっしゃ! やるわよ!」

「おー!」


 諏訪子と神奈子はやる気満々だが藍たちは非常に嫌な予感を憶えていた。その背後からズルズルと何か重いものを引き摺っている音がする。


「うぐぐ……」


 この計画を知っており、制作までして楽しみ隠していたスルトは早苗に捕獲されて簀巻きのまま弁明の余地すらなく連れて来られていた。


「一体何をするんですか?」

「はい! お待ちしておりました!」

「おー、今回も豪華な面子だな!」

「さて、早速ではあるけど準備は整っているかしら?」

「勿論です! さぁ、どうぞ!」 


 メンタが取り出したのはくじBOXだ。箱を振ってみると中から木札の音がした。


「中には五枚のカードが入っており、引いた一枚を今回のゲームと致します!」

『聞いてないんだけど!!』

「あら、後で説明するとは言いましたよ」


 霊夢たちは紫にくってかかり、明らかにヤバそうなBOXを見て前後に揺らす。


「まー細かいことは後々。はい、ペタッと」


 その隣では諏訪子が『参加証』と書かれた血判状に早苗の親指を押し、早苗もそれを確認して目を見開いた。


「何しているんですか駄女神様!」

「だ、駄女神ィ!?」


 ガボーン、と諏訪子が破顔して落ち込み、霊夢は呆れつつ神奈子の方を向いた。


「今回は神奈子たちだったわね」

「ああ。今回は負けんよ」


 こういう催し物やバトルは定期的に、神社の戦力が過多になり過ぎないのように調整の意味合いもかねて行われる。前は紫主導だったため、今回は守矢側が選ぶ権利がある。


「私のターン、ドロー!」


 神奈子がBOXに手を入れ、木札の一枚を引く。それをメンタに手渡し確認を行った。


「えーっと……おっふ。それを引きましたか」

「一体何を引いたのだ?」

「今回のゲームは『従者交換ゲーム』です! ルールは此方になります!」


 事前に用意していたルールブックの一枚を開き、机に広げる。



従者交換ゲーム

ルール

1、『主』一名と『従者』六名で行われる7×7の盤上ゲーム

2、盤上には『従者』六名を置き、『主』は『従者』に指示を出して相手陣営の駒を奪っていく。最終的に全滅させた方が勝者となる

3、ゲームに勝利した場合取られた『従者』は三か月間貸し出しする義務を背負う

4、尚、このゲームで勝敗が決しても相手を害しないこと

5、動かせる『従者』は一ターンに一人のみ

6、ターン毎に『カード』を引き、その効果を『従者』一名に付与することが可能

7、『従者』同士の戦いにおいては先取した方が勝利する

8、基本的に『従者』は一ターンに付き全方向一マス動ける。また、後退も可能


ゲーム目的

両神社の戦闘力及び人脈の確認と交流


勝利条件

敵の全滅

敵『主』が投了を宣言する


敗北条件

自『主』が投了を宣言する




『主』について

 『主』は『従者』を動かす以外でゲームに介入することは出来ない。能力使用は禁止され、どんな理由であれ使用した際は敗北と見なす。


『従者』について

 『従者』は『主』の指示でのみ動くことが可能。しかし命令を拒否することも可能。


『カード』について

 『カード』は五種類あり以下の効果を発揮する。

『疾風』:『従者』を最大三マス動かせる

『破砕』:『従者』の前方、2×3の範囲にいる者を敗北させる

『伏兵』:『従者』の姿を相手から見えなくする。敵『従者』に迫られたら敗北する

『拘束』:『従者』一人を指定して拘束する。『伏兵』を使用している敵『従者』に使用した場合、『伏兵』の効果は消失する

『跳躍』:『従者』一人を飛び越えることが出来る


備考:取られた従者は二度と盤面に上がれない



「と、こんな感じのルールですが不備とかありますか?」


 メンタが用意したゲームだから、と全員が一言一句見逃さないように食い見つめ、視線を離した。


「特別な問題はなさそうですね」

「でもこれだけだとちょっと物足りなさがあるね」

「そう思われると想定しましてドンこちら!」


 机に置かれたBOXには『外野専用カード』と書かれている。


「これは?」

「読んで字の如く外野カードです! ぶっちゃけ他の人も見ているだけは暇かと思いましたので両ターンが終わるごとに誰かに一枚引いて貰い、その効果を盤上で実現します!」


 ほほう、と諏訪子が興味深そうに続けた。


「ちなみにカード内容は?」

「それを言ったら面白味がありません」


 内容を秘匿され、霊夢たちは嫌そうに身を引いた。


「嫌な予感がするわね」

「そこはご安心ください良識の範囲内です」


 人によって良識の範囲は違い、メンタの場合は一般的にアウトなところも良識に入るため信用してはいけない。


「とは言ってもこのままでは頭数が足りませんね」


 早苗が疑問に思うと霊夢も頷いてメンタに聞いた。


「そうだけど……これって自分の従者じゃなくても良いの?」

「問題ありません。逆に普段主の人が従者やっても良いですよ。ただし誰かを使用する場合は当人の許可を取ってくださいね」


 齟齬や反則を防ぐ意味合いもあり、他人を扱う上で必要措置だ。


「りょうかーい!」

「日程はどうしますか?」

「明日の二時にしよう」

「分かりました!」


 かくして二大神社による壮絶な従者争いが始まろうとしていた。



 一転、現実に戻り、諏訪子たちの説明を聞き終えてパルたちは少々思案顔だ。


「と、言う訳なのだ~」

「つまり人数合わせってことですか?」

「ただの人数合わせならパルと依姫である必要は無い。勝つためにも戦力増強は必要だと思ってね」


 パルとしてもただの人数合わせよりは戦力として求められる方が嬉しい。だが、メイドという立場上、個人で決めるのには抵抗があり咲夜に視線を向けた。


「レミリア様は紫様が先に抑えてしまったけど、私たちは守矢の味方をします。パルはどうしますか?」


 その咲夜から問われ、パルも鷹揚に頷いた。


「勿論、ボクも早苗たちの味方だよ!」


 早苗はホッとしつつも万が一の不穏を露わにした。


「ありがとうございます! でも……もし負けたら私、悩殺水着の刑に処すって神奈子様が……」

「これなのだ~!」


 諏訪子が取り出したのは非常に面積の少ない水着だ。神奈子もニヤニヤと笑っており負けたら本気で着てもらうつもりらしい。


「……パルの水着姿」


 と、そこに依姫もパルの体から出て水着を眺めていた。


「えっ?」

「うん! 守矢が負けたらパルも水着姿にしよう!」


 これを巻き添えという。

 突発的な提案に早苗たちは驚き、パルが着ている姿をイメージしたのか神奈子たちが勢いよく鼻血を噴出した。


「ええっ!?」

「ブッ!」

「ゴバッ!」

「鼻血が……っ!」

「こ、これは全力で負けて貰わないと……っ!」


 そっか、とパルは気にした様子もなく――


「それじゃお姉ちゃんも一緒だね!」


 爆弾を落とした。


「え? なんで?」


 依姫もやや困惑気味に問い返してしまうとパルは不安そうに見つめていた。


「ん? どうして? 一緒……じゃないの?」


 そんな目で見られて耐えられるわけもなく、自分で投げた特大ブーメランが直撃した。


「……分かったよぅ」

「そうだよね!」

「それなら神奈子様と諏訪子様にもやって貰いましょうか」

「レミリア様はもっと際どいものを着て貰いましょう」


 それに便乗する形で早苗たちも口撃して諏訪子たちを追い込んでいく。


「やっ、私は遠慮しておこうかなー」

「それが良いのだー」


 諏訪子たちが拒否すると、ぺたりとそんな擬音がした。


「ナイス、咲夜さん!」


 見れば咲夜がレミリアと諏訪子たちの指朱肉を契約書に押し付けていた。


『アアアアアアアアアアアアアア!?』


 三人の壮絶な悲鳴が響き渡った。 



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