第六十五話 精神不安定破損状態
グラたん「第六十五話です!」
時間は現在、博麗神社。
悲劇といえば悲劇、救出喜劇といえば喜劇な内容を話し終えたパルは一息つき、魔理沙は眉間に皺を寄せて叫んだ。
「一言いわせてくれ。長い!」
「でもおかげで展開が読めたわ。パル、VR内部にはあんた一人が行きなさい」
霊夢がそう言うとパルも魔理沙も意外そうに視線を向けた。
「え?」
「どういうことだ、霊夢?」
「適材適所よ。パルの話を聞く限りじゃ、あんたのハード内にはティアールたちがいるはずよね? 彼女たちに協力して貰った方が多分早いし、あたしたちは足手まといになるわ。それに精神を結合させるだけなら頭数は必要ない……そうよね、永琳」
推測を確証に換えるべく永琳に話を向けると、同意して首肯した。
「ええ。……その頭の回転は仕事以外には発揮できないのですか?」
関係ないとは思うが、発揮できていれば博麗神社はもっと拡大し、参拝客も多く集まって順風満帆な人生を送っているだろう。
「娯楽には全力フル回転させてるわよ」
「クズや」
「黙りなさい」
「みょがぁぁ!?」
てゐの真顔にチョキの目つぶしを食らわせ、黙らせる。
「準備できたわよ」
機材の設置を終えたパチュリーと美鈴が居間へ来ると各々が立ち上がり、庄子を全開にして永琳とてゐも隣の部屋から薬を持って来た。
「おっ、内部準備が完了したらしいぜ。永琳、薬は出来てるか?」
「HAPPYなヤクなら任せろ!」
てゐがポーションポットをを高く振り上げ、それをイナバに渡すと同時くらいに永琳がアイアンクローで顔面を掴んだ。
「ぎゃぁぁぁああああああああああ!! つぶれる! か、カオ! かぺぇっ!!」
パキッと何かが罅割れるような音がしたが、きっと気のせいだろうと魔理沙は思いこむ。
「パルさんの話の合間に完成させましたよ。飲ませるタイミングはパルさんが入ると同時くらいです」
顔面の潰れたてゐを捨て、薬の中身を小皿に移し替えてメンタの枕元に移動した。
「了解だ。紫、繋げそうか?」
ギチィ、ギチィと嫌な音を立ててスキマが連結し、メンタの胴体の上にスキマが開く。
「いつでも構いませんよ」
うむ、とスルトが視線をVRを被ったパルに向ける。
「さて、各自の準備は整っているようだぞ」
「うん。皆、ありがとう」
自信ありげな、皆を信頼している笑みを見せられて霊夢も魔理沙も、全員が『任せた』とパルに視線を向けた。
「へへっ」
「さっさと行きなさい」
「頼むぜ、パル」
「うん!」
メンタの隣に横たわり、目を閉じる。
「スタート!」
VR内へ行くためのコマンドキーを口上し、パルの意識が遠のいていく。
「行ったみたいね」
「こっちで中継見れますよ。画面、出します」
VR内部をモニターしていた刻夜が片手間で内部生中継のディスプレイを出し、内部映像が映し出された。
そこでは再度デスゲームとなったYWOのモチーフにしているため、メンタも即座に発狂してナイフを手に魔物を駆逐していた。
『ヒャァハハハ!! 駆逐! 駆逐してやるデスデスデスマス!!』
『ぷぎゅぅぅぅ!!』
『死にやがれデス!』
魔物を八つ裂きにして死体蹴りをする姿は正に狂人。画面を見ていた魔理沙たちは一斉に引いた。
「見事にぶっ壊れたぜ」
「予定通り過ぎて引くわ」
その合間にイナバと永琳がメンタに薬を飲ませ、飲み込ませる。
「薬は飲ませました。紫様」
「ん~、こっちは繋いだわ。幽々子とレミリアとの接続も問題ないわ」
幽々子は冥界から支援し、レミリアはその場で腕から魔力を吸い取られて紫の隙間に注ぐ役目をしている。それを見たスルトが顎に手をやって思案した。
「経路は問題あるまい。しかし内部が少し不安定だな……どれ」
右手の人差し指をスキマに向け、同じくスキマを発動させて異空間の接続を補強してしまう。
「貴方も大抵ぶっ壊れ性能よね」
紫も半場呆れるくらいにはスルトの能力は破格だ。
「ククク……誉め言葉だ」
「おっと、パルが来たぜ」
画面を見るとデスゲームもどきの中に入ったパルが半獣人姿でメンタの前に降りたっていた。メンタもパルが助けに来てくれると思っていたため視野に入るや両手を上げて喜んだ。
『メンタ!』
『わーいパル姉ー!』
「驚く手際の掌返しね」
「言ってやるな。そんだけメンタの精神はガタがあるんだ」
さもありなん。これで当初の目的は果たしたが、画面を見ていた霊夢は悪い事を思いついてニヤリと笑った。
「ねぇ、せっかくだし指令を送ってみましょうよ」
「は? 指令?」
何故、と魔理沙は考えたが霊夢と同じ思考に至り嗤った。
「……なるほどな。面白そうだ」
「悪趣味ですが……まあ対価としては悪くないかと」
「悪乗りは良くないのだけれど」
「ククッ……期待しているぞ」
各自、ある程度なら大丈夫だろうと悪乗りを始める。
「よっしゃ! それじゃまずは――」
カタカタ、とキーボードを入力してパルへ指令を送る。
ぴろん、と音が鳴ってパルはメニュー画面を開き、メッセージを確認する。
『メッセージ、魔理沙からだ。……って、え?』
そこに書かれていた内容は本当にやらなければいけないのか、と驚いた。
『指令:メンタを裏切れ』
できるのだろうか、とパルは驚く。
『どうしたんですかパル姉?』
『う、うーん……これやるの?』
少々待機し、何処からか見ているだろう霊夢たちに対して告げた。
対して霊夢たちはやや難しそうな表情になって腕を組んだ。
「訝しんでいるわね」
「内容が内容だからな」
「ここは強引にやるべきだ」
今度はてゐがメッセージを入力し、飛ばした。
『また来た……ええ……っ』
『追記:メンタには言うな。時間が無いためすみやかに実行されたし』
無茶振りだ、とパルは思う。思うが時間が無いのは事実だろうし――とも考える。
『どうしたんですか?』
メンタが心配そうにパルの顔を覗き込み、パルは心を鬼にして決心した。
『……ごめん、メンタ』
背中に背負っていた魔剣アヴェルカを抜剣し、メンタから距離を取る。そんなパルの変化にメンタは警戒しつつ身構える。
『パ、パル姉?』
『本当は嫌だけど……ええい!』
魔剣アヴェルカを肩に担ぎ、少し前かがみの半身の構えで大剣スキル『弧断』を発動させる。5mの距離を一瞬で詰められ、ギリギリ視界で捉えたメンタはなりふり構わず右に飛んで避ける。
『うわっ! こ、殺す気ですか!』
『ゴメン死んで!』
『鬼がかってますね!?』
助けにきたはずなのに死ねとはどういうことなのかメンタは説明を求めたが半狂乱状態で大剣を振り回すパルの耳には届かない。
「あーもう! 誰が戦えって言ったのよ!」
「指示が悪いな。私に任せろ」
魔理沙が主導権を奪い、カタカタとキーボードを叩いてメッセージを送る。
軽音と共にパルも戦闘を中断し、不承不承と言った感じにメッセージを開いた。
『また? えっと……』
『戦わなくていい。代わりに言葉で攻めろ。例えば、メンタなんて嫌いとか』
そっちの方が酷だ、とパルは思わず叫んだ。
『ちょっと魔理沙! これはいくらなんでも酷いよ!』
だが時間がないし強硬に進めることは賛成なので再度指示を送る。
『必要なんだ。恨むなら紫を恨め』
が、まさか引き合いに出されるとは思っていなかったのか紫が魔理沙の首根っこを掴んで振るい始める。
「魔理沙! なんで私のせいにしようとしているのですか!」
「アハハハハハ!」
「ククッ」
「霊夢に、スルトさんまで!」
二人だけでなく他数名も微笑しており、永琳も笑いを噛み殺していた。
戻ってVR内部。パルも必要なら、と割り切ることにして魔剣アヴェルカを背中に納め、もう一度心を鬼にしてメンタの方を向いた。
『もう……メンタ!』
『何でしょうか?』
両手の拳を固く握り、肩を震わせながらパルは叫ぶ。
『今のメンタなんて嫌い! 大嫌いなんだからね!!』
『が……ガハァッ!?』
見ればメンタのHPが八割ほど削れ、派手な血噴きエフェクトが飛び散ったが、メンタはすぐさま持続性回復ポーションを手に取って飲み込み半分ほどにまで回復させる。
「おい、今にも死にかけてるんだが」
「エグイな」
「うわぁ……」
全員が唖然とする中、レミリアが見様見真似でキーボードを打ち込んで送信ボタンを押した。
『指令:もっと冷たく突き放して』
――必要、なんだよね?
ここまで来たらもうやるしかない、と両手を一回開いて思いっきり握り直す。
『う、嘘ですよね? ごめんなさいパル姉! 調子に乗りました! お願いですから見捨てないでくだ――』
メンタの懇願に対し、パルは嘘を付かれた時のような凄く冷めた視線でメンタを睨みつけた。
『ヒッ――』
『だから? メンタのことなんてもうどうでもいいよ』
『グボロっ』
HPが二割弱削れ、しかし持続性の効果によってじわりじわりと回復していく。
「お嬢様!?」
「あら、手が滑ったわ」
「酷ぇ……鬼だ、鬼がいるぜ……」
吸血鬼なのだから鬼なのだろう、と霊夢は思いつつキーボードに手を伸ばすと先に紫が悪ふざけで追記を打っていた。
『ううっ、メンタが……メンタがぁ……』
内部ではパルの精神の方も削れてしまっており、震え声で小さく呟いていた。
『指令:もっと冷徹に、言葉を強めて』
――嘘ぉ!?
と思うがもう後には引けない。
――で、でもやらないと駄目なんだよね、きっと! 後で全部事情説明するから今は耐えて、メンタ!
が、そこでパルの意識は残ったまま依姫が乱入してアバターを乗っ取った。
一方でメンタは必死に土下座して理由とかどうでも良いまま謝っていた。
『ごめん……な、さい。ごめんなさいごめんなさい』
『――五月蠅いよ。何度も同じ言葉を言うとか子供だね』
普段のパルなら絶対に言わないだろう侮蔑の言葉にメンタだけでなく霊夢たちも流石に絶句した。スルトに至っては思わず口が開いてしまったくらいだ。
『あ……が……』
もはや命乞いのような表情のメンタをパル(依姫)は見下した。
『そうやって憐みを集めて救ってもらいたい? 都合が良過ぎると思わない?』
『あひっ……』
『惨めだね。今の君はそこらの魔物よりも劣る畜生だよ』
『あ……ああ……』
『いい加減気づきなよ。これまでだって全部演技だったってことくらいさ。君は無様で醜くて浅はかだ。僕の妹であることすらおこがましい』
『うぁ……』
『泣いたら誰か助けてくれると思った? そうやっていつまでも甘えてるから僕は見放したんだ。それくらい分かってよね』
ふぃーっと満足気に仕事した表情で依姫はパルの中へと戻り、主導権がパルへと戻って来る。
「誰がそこまでやれって言ったぁぁ!?」
「てへっ」
紫が右手の拳を軽く額に当てて年不相応に笑み、背後から霊夢がハリセンでブッ叩いた。スパーン、と良い音が鳴り後頭部を抑えた。
「痛い!?」
「あんた馬鹿なの!? 死ぬの!? どうすんのよこれ! 完全に取り返しがつかないわよ!」
「すぐに次の指令を、救いを与えた方が良いわね」
代わりに永琳が打ち込み、メッセージを送信する。
――メンタが精神的に死んでる! ど、どどどどうしたいいの!?
パルも依姫の乱入によってパニックが最高潮にまで達し、もはや理性的な判断が出来なくなっていた。
『指令:救いを与えなさい』
そこへこんな文章が送られてくれば色々な解釈が出来るだろう。
――こ、これってまさか介錯!? な、なにか、か、考えがあるんだよね、魔理沙たちにも……! うん! メンタ、今、楽にしてあげるからね!!
思いっきり大剣を振り上げ、その頭部を一撃で粉砕せんと大剣スキル『金剛大切断』の構えを取った。
「オィィ!? なんか大剣振り上げてんぞ!」
「何故!?」
「退きなさい!」
永琳を強引に退かして霊夢が素早くメッセージを打ち込み、送る。
『せめてもの情けだよ、うおおおおおおお!! ――ん?』
メンタの頭部に当たる寸前でパルがメッセージに気付き、強引にスキルキャンセルを行う。その反動で暴風に近い衝撃波が撒き散らされメンタは力なく地面に倒れた。
『追記:介錯はダメ! もう良いからメンタを連れてゲートまで急いで!』
『あ……う、うん、そうだよね! やっぱりそうだよね!』
やはり自分の考えが間違っていた、と歓喜してメンタを担ぐ。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……』
せーのっ、とパルが合図を言ってメンタをスキマ内に放り込み、パルも疲弊した様子でログアウトボタンを押した。
居間でも各自ミッションコンプリート出来たことに安堵し、今回の戦犯である紫に白い視線をぶつけていた。
「はぁ……とりあえずこれで何とかなったかしら?」
「一応な……。で、紫……」
「……はい」
「明らかに悪ふざけが過ぎたな。原因の釈明は全て其方が行った方が良い」
「……はい」
紫もスルトの言葉に反論できず、小さくなって首肯した。
――だけど悪乗りしたのは全員なのよね。
と霊夢はふと思った。
「ところでパルたちが眼を覚ましたんだけど」
レミリアが言うと霊夢たちは一斉に振り返っててゐと永琳が二人の傍に付き添った。
「今は二人の精神状態の確認が先よ」
「だな。パル、メンタ、何か異常はないか?」
メンタは特に何の異常も無さそうにてゐを視つつ、何の穢れも無い健やかな笑顔で頷いた。
「――はい。何一つ問題ありません。ご迷惑をおかけしました」
パル――はメンタに対して呵責があって顔向け出来ないため代わりに依姫が表に出て不機嫌そうな顔で告げた。
「……今まで通り何もないよ」
ただパルと依姫の状態を完全に理解できていないてゐたちからすれば精神を患ったと捉えられてもおかしくはない。
『嘘つけぇぇぇえええええええええ!!』
全員の叫びが博麗神社に木霊した。
数時間が経過し、綿密な診断を終えた永琳は診断結果を告げていた。
「……概ねの原因は判明しました。パルさんとメンタさんの症状は精神不安定破損状態とでもいうべき状態です」
ほうほう、とてゐが分からん素振りで頷いて続きを促す。
「要するに?」
「精神と性格の逆転、メンタさんであれば大人しい清楚な少女に、パルさんであれば深い憎悪と悲観を伴う少女になっています」
――ただ、パルさんというよりは依姫様に近いような気もしますが。
そこは診断ミスとしたくないため永琳は敢えて黙っていた。
するとてゐ、魔理沙、レミリアたちは一斉に手と膝をついて嘆いた。
「思い出してくれよメンタァァ! 一緒に夏コミやるんだろぉぉおおお!!」
「貴方が主導で始めたことよ! 最後まで責任取りなさいよぉ!!」
が、今のメンタは記憶そのものが飛んでいるため掌を頬に当てて可憐に微笑んだ。
「ごめんなさい、夏コミって何の事ですか?」
一方でパルの変化を見抜いたスルトは口元に手を当てて面白そうに笑った。
「ククッ……面白い事になってるな」
「何が言いたいのよ?」
永琳の診断結果そのものを鵜呑みにした咲夜はパルの傍に付き添って心配しつつも諫める。
「パル、そんな言い方はいけません」
「今更良い子ぶる気はない……僕は……」
「パルお姉ちゃーん」
そこへフランがパルに向かって飛び抱きつきを食らわせ、まさか振りほどくわけにもいかないので受け止める。
「フラン、お姉ちゃんならこっちにもいるのに何故パルの方に行くのかしら?」
代わりにレミリアが拗ねたように口を尖らせた。
「えっ? だって抱き心地良いし」
主に胸部の――というのに頬を擦りつけてレミリアは尋常ならざる殺気を放出させる。
最後に紫は両手を振るわせて――主に今後の収入やら巫女仕事やらを考え――近年稀に見る程の本気の表情で海の底の如く深く、空のように果てしなく後悔した。
「圧倒的混沌……これが私が引き越した事……」
珍しく反省している紫を全員がそっとしておき、てゐは永琳に泣きついていた。
「師匠ぉぉぉ! なんとかしてくれよぅ! こんなメンタ嫌だぁぁ!!」
「無理です。肉体的ならまだしも、ここまで精神的に影響を受けているとなると治すには時間がかかります」
「どのくらい?」
霊夢が聞くとカルテを見つつ適当に答えた。
「早くても一年くらいです」
「ガフッ」
それでは夏コミどころか冬コミにも間に合わない、否、チェイルズシリーズや薄い本と言った素晴らしい娯楽も停滞を余儀なくされる。つまり世界の危機。
眼を見開いたてゐは激しく喀血した。
「てゐ! しっかりしてください!」
イナバが素早く消毒液を使い、永琳が止血をしてその顔に白いティッシュを被せる。
「うるさい。これだから子供は……」
パルもそう言いつつもせっせと介護を手伝うあたり、『パル』の性格が出ている。
「本当に混沌としてきたわね……」
「はぁ、ともかく! パルとメンタが帰還したのは喜ばしい事だから祝いましょう! パーッとやりましょうよ!」
紫が告げると魔理沙やスルトも頷いて立ち上がった。
「その方が良いかもな。よし、私たちは機材片付けるぜ!」
「ふむ、では酒を買いに行くとするか。パル、買い出しに付き合ってくれ」
パルをここにおいても不和を招くだけだろうと考えての提案だったが、意外にも『依姫』は簡単に承諾した。
「しょうがないわね」
「……何気に扱いに慣れてるわね。ツンデレ?」
霊夢は感心し、不意に思いついた言葉を告げると『ああ……』と全員が納得した。
「一理ありますね」
「それだな」
つまりはレミリアと一緒か、いやもうちょっと面倒な感じか、と各自が思考して当人であるパルはそっぽ向いた。
「そ、そんなわけないし」
「ククク……!」
的を得ている、とスルトも堪えきれず小さく笑ってしまう。
「な、何笑ってんのよ!」
「いやいや、…………ん?」
楽し気に縁側に出て、ふと空を見上げると遙か天空から何かが落ちてくるのが見えた。
「どっせぇぇいっっ!!」
落ちて来た物体MIMAは衝撃波をまき散らしつつ右腕は首の後ろに、左腕は水平に構え左手の人差し指はまっすぐ正面を決め、年不相応にウインクして言葉を告げた。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 天下往来唯我独尊天元突破の限界突破! 世紀末の大魔法使い魅魔様参上!!」
――世紀、じゃなくて世紀末なんですね。
――ダッサw。
――しかも色々可笑しい。
各自思う所はあったが、滑ったことに変わりはないためスルーするのが、見て見ぬふりをする方が彼女のためだろうと思いそっと視線を逸らして行動を開始する。
「行くぞ」
「……うん」
「霊夢、メンタ、機材片付けるぞ」
「ええ」
「はい」
「てゐ、庭の片付けをしましょう」
「うい」
「私は料理の下拵えをしてきますね」
「手伝います」
ちょいちょい、と額に手を当てて魅魔は大声で叫んだ。
「こらこら待て待て! 揃いも揃って自由か!!」
はぁ、と溜息を付きつつも顔見知りである霊夢が用件を問いただした。
「何の用、魅魔」
「くぅ~、久々の再開だってのに我が子供たちは冷たいねぇ!」
子供? とパルが視線で問うと魅魔は快く頷いた。
「……似てない」
「教え子兼養子だったからな」
「それでもお義母様なことに変わりありませんよ?」
早苗が一応忠告すると霊夢は雑多に手を振って呆れた。
「良いのよ。いつものこと」
「かぁぁ! かれこれ100年振りくらいなのにそんなんで良いのかい!」
「大袈裟過ぎ。実際30年くらいでしょ?」
「そうだっけ? ま、良いじゃないのさ! 久々の再開を喜ぼうぜ!」
「良いから用件言いなさい。まさか本当に遊びに来たわけ?」
霊夢が臨戦態勢に入り、ピリピリとした空気に変わっていく。魅魔は魅魔で大笑いしながら闘る空気を出した。
「アッハッハ! あんたのそういう所は好きだよ! ……まぁ、間違っちゃねぇけどよ」
それに応えるように全員が臨戦態勢に入る。
「おいおい、まさかここでドンパチやる気か? いくら天下の魅魔様でもこの人数相手じゃ、分が悪い所じゃねぇぜ」
「ハハハ! そこまで命知らずになった覚えは無いよ! 見な」
魅魔が指差した西の空は薄い黒い雲に覆われ、よく見ると紫電が渦巻いているようだ。
「……異変……」
「そうとも。お前さんお得意の異変解決で勝負と行こうじゃないか」
そも、異変を起こすというのは並大抵ではない。『戦争程度』ならそれは事件と呼ばれるものだ。異変は世界規模で行われる超常現象のことを差す。
それを引き起こせるということは人類的にも妖怪的も化け物と扱われる。
「ちっ、この耄碌ババア……」
魔理沙が小さく舌打ちし、続けた。
「面倒だがここに居る総出でかかれば何とかなるだろ!」
「そうかい。でも、そう思ってない奴もいるみたいだがな」
一瞬、風がそよいだ。
死神の鎌に当てられたように畳に倒れる紫、パル、永琳、早苗を眠らせて一瞬で転移させ、全員の視線と注目を浴びた。




