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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
70/119

第六十四話 D;YourWriteOnline 5

グラたん「第六十四話です!」


「どういうこと?」

「そうですねぇ……まず先に魔剣アヴェルカについて説明しちゃいましょうか」


 かつて運営の不手際で浮遊大陸のボスに設定されていた五大龍王の一角、エヴィルガンド。これをレイドボス形式かつ人海戦術によって討伐しようと試みた最前線プレイヤーたち。エヴィルガンドは三段階進化する強敵であり、第一、第二段階を死闘の末に打ち破り、第三段階へと移行した時、カーリュ・レミテスが参戦したのだ。

 その時に持っていたのが魔剣アヴェルカ。その効果は一振りで敵のHPを固定で十分の一削るという文字通りの魔剣。その後、プレイヤーたちの一斉攻撃によってエヴィルガンドは仕留められたという動画が今でも残っている。

 その動画をパルに見せ、その中にはコノミたちの姿もあり当人たちは恥ずかしそうに頬を掻いた。


「この時から魔剣アヴェルカの捜索と五大龍王の討伐は全プレイヤーたちの夢であり願望でした。五大龍王はすぐに見つかり、最大規模のレイドボスとして君臨し続けました。しかし魔剣アヴェルカだけは何処を探しても見つからず、YWO内のクエストをクリアし続けても出てきません」


 そう言ってメンタはティアールを見て、次にコノミたちを見た。


「……結局何処にあったのかは分かりませんが、今はパル姉の手元にあるわけです。本来あるべき場所からGM権限を乱用して、ログイン時から装備させていたんですからね?」

「うっ……」


 ティアールは言葉に詰まり、パルから半眼を賜った。


「ティアール? ボク、ズルは嫌だって言ったよね?」

「ううっ……」

「まあそれは良いんですよ。パル姉が強くてデスゲームをさっさとクリアできるのはありがたいです。ぶっちゃけ、運営が一プレイヤーだけに直接チートばっかり詰め込んでいたとしてもオレは別に何も言いません。はい」


 そこまで言われ、そんなヤバイ情報をコノミたちに聞かせて良かったのか、と今更ながら思うがパルの顔色で察知したメンタは手で制した。


「勿論、そんな情報を他のプレイヤーに言ったら阿鼻叫喚ものです。でも今は周りにプレイヤーもいませんし、魔法系統の気配もありません。加えて、コノミさんとロージンさんなら大丈夫ですよ」

「その根拠は?」

「だって先程『脱出を手伝わせて欲しい』って言っていましたからね。この意味、分かりますか?」


 あっ、とパルは声を上げた。


「そっか、メンタが知っているほどのプレイヤーならとっくにデスゲームから脱出していてもおかしくないもんね」

「はい。わざわざこんな世紀末ゲームの中にいるなんて狂気もビックリします! つまり、脱出できそうなプレイヤーを見つけてはパーティーに入れて貰い、攻略を手伝っている……そんなところでしょうか?」


 ロージンはコノミを見て、二人揃って両手を上げた。


「いや、まいりました。正直、ただの美少女プレイヤーたちだと思ってた」

「推測も間違ってない上に、直接手を加えてくるなんて、ね。ティアールさん?」


 その視線にティアールたちは乾いた笑いしか浮かべられなかった。

 そして二人は立ち上がって会釈した。


「改めまして! 我らが友、カーリュ・レミテスからこのYWOを任されたGM、ロージンです!」

「同じくコノミです! 私たちは現実での肉体を持たない代わりに残された全YWOプレイヤーと次世代を任された管理者だよ!」


 思いっきり埒外の事を言われ、パルは頷いた。


「そっか! じゃ、ボクたちも一回クリアしたら手伝おっか!」



『――え”っ!?』



 パルの狂気的な提案にメンタたちは声を揃えて固まった。特にメンタは卒倒した。  

 

      

 メンタが倒れてしまっては攻略も進まないということで今日は宿を取り、パルたちはコノミ、ロージンの二人と今後について話し合っていた。


「……で、さっきの話、マジ?」

「うん。ボクは構わないよ」


 でも……、とパルはリアル側を思案する。


「あの人が許してくれるかどうか……」


 そこへ事前にリアル側に申請を飛ばしていたティアールがディスプレイを開いて見せた。


「あ、パルさん。バウゼンローネ様からメッセきてますよ」

「えっ?」


 パルだけでなくコノミたちも覗き込み、内容を見る。


 『通称”私の可愛い子猫”パルへ。OK! 以上』


『軽ッ!?』


 そのあんまりな一文に全員が驚愕して叫んだ。


「あ、あれ……? バウゼンローネ様って、もっとこう……偉くて怖いイメージがあったんだけど……」

「……分かりません。こればかりは本当に……」


 彼女たちは知らないが実の所、彼女はノリもフットワークも軽く一個人の権限の範囲内でなら簡単即決で決めることも珍しくない。


「と、とりあえず! パルさんたちが手伝ってくれるなら心強いです」

「うん! これからよろしくね!」


 パルがコノミたちの手を取り、コノミたちも頷いて握り返した。


「此方こそ!」

「助かるよ!」

「ほら、メンタもティアールたちも!」


 パルに手を掴まれてティアールも握手を交わした。


「え、えっと、よろしくです!」

「はい、可能な限りサポートします」


 少々戸惑いながらも手を握り、笑む。


「じゃ、まずはパルたちを脱出させないとね」

「うん! 頑張ろう!」

『おー!』


 パルが拳を上げるとコノミたちも拳を上げて賛同した。

 後に、起きて説明を受けたメンタは何処か諦めた表情で力なく拳を上げたとか。

     


 グランドクエスト『天空の覇者』。

 最低でもレベル90は必要であり、出てくる敵も軒並み強敵という鬼畜仕様のダンジョンの最奥にいるラスボスを倒すことがクリア条件となっている。

 しかし最前線プレイヤーたちの攻略により、現在はラスボス手前まで攻略が進んでいる状態だ。ダンジョン自体は全5層となっているため、安全マージンを充分に取り、一線級装備と前線級のプレイヤー技術があればラスボス以外は突破出来ると言われている。

 ダンジョンがあるのは天空城から北西に向かった浮遊島。周りの雑魚もレベル200と高く、そこらのプレイヤーでは叩き落とされて死亡する光景が常時広がっている。


「こんなところかな」


 最前線プレイヤーの一角であるコノミたちが提示できる情報はこのくらいであり、ラスボスの情報は皆無。


「5層のボス情報は無いんですか?」


 今回は起きているメンタが聞くとロージンは首を横に振った。


「あるが……ま、最初は事前情報なしの方が良いと思うんだ」


 メンタは何故とは問わず、嘆息した。


「何で?」


 代わりにパルが聞くと二人はニヤリと笑って答えた。


『それがゲームの醍醐味だからさ!』

「あ、それもそうだね」


 パルは納得し、ティアールたちは苦笑いして、メンタはもう一度溜息を付いた。

 


 第一層ボス、木漏れ日の樹王。

 攻撃方法は至ってシンプルで、根っこによる無敵貫通の刺突と長い枝を振り回す範囲攻撃、巨体を揺らして葉っぱを落とし風魔法で飛ばしてくる通称ハッパカッター。

 厄介なのは膨大なHPと、そのHPを10分に一割回復する粘り強さ。

 基本戦術としては前面に大楯を構え、中衛、後衛の高火力攻撃が望ましいとされており、実際にこれが一番早く倒せる方法でもある。


 第二層ボス、死霊の大王。

 一層のボスとは対極とも言える存在で常時魔法攻撃無効化が付与されているため第一層を魔法高火力で突破した猛者たちを阿鼻叫喚に陥らせた元凶だ。

 攻撃方法は範囲魔法を連発してくるため全体魔法防御と敵の魔法威力を低下させる弱体化を常に付与していなければ全滅は避けられない強敵だ。

 しかしHPは一層の半分以下であり回復を使用しないことから前衛の大楯に剣を持たせ、中衛の弓使いには槍を、銃使いは強襲装備をさせることによって対処が可能と実証されている。

 

 第三層ボス、ビックリ箱。

 もはや何の捻りも無いネタ切れを疑うネーミングだが第三層ボスとして君臨出来る強さがある。箱自体は攻撃しないが、開けた瞬間に四方八方からLv90を超える魔物が出現し、箱を壊さない限りエンカウントが終わらないという鬼畜仕様だ。

 加えて箱にはYWO内でレアスキルと言われていた『鉄壁』を所持しており、効果は全てのダメージを十分の一にする。これが敵として出てきているのだから笑えない。

 そのHPは第一層ボスと同等くらいはあり、壊すのには高火力で押し切るしかなく、ここまで溜めていた回復薬が底を尽きて止む無くコンティニューする嵌めになった猛者たちは大勢いる。


 第四層ボス、暗黒大魔王ノストラダムス。

 Lvは500とこれまでで最高峰とも言われておりステータスも第一層と第二層を合わせたような手抜き仕様となっている。それがプレイヤーたちを絶望へと叩き込んだ。

 つまり、基本ステータスが第一層ボス並であり自動回復付きとなっており、第二層ボスの常時魔法攻撃無効化に加えて弱体無効化を付与されている正真正銘ラスボス仕様に猛者たちは頭を悩ませた。

 そしてある時、ようやくHPを半分ほど削ると通常攻撃に確率で即死が付与されることが判明し、全滅を喫したとか。

 即死耐性を完備したプレイヤーたちはこの難関をようやく突破して最後の第五層へと挑んだ。


 第五層ボス――。



 ダンジョンに侵入したパルたちは最初の第一層ボス、木漏れ日の樹王と戦っていた。

 配置は耐久力の高い盾持ち戦士であるロージンとディルメアが盾を構えて前線に立ち、エーコ、メンタ、コノミ、パルはアタッカーとして動き、シィとハチとティアールが後方から回復支援をする。


「でりゃぁ!!」

「腐腐腐!!」


 その中でもパルとメンタは躱しながら斬りまくるという曲芸じみたことをしでかしていた。特にパルは魔剣アヴェルカの効果もあってか戦力の中心となっていた。

 本来であれば百人近いレイドを組み、一斉射撃でHPを削るのが主流ではあるがこのパーティーにそれは必要無った。

 そしてこの姉妹ばかりにヘイトが行かなかったのはロージンのおかげもある。


「タワーディフェンス・ハウル!!」


 ロージンとコノミの戦術は、ロージンが前衛に出てヘイトを稼ぎコノミが攻撃することが多い。そのため多少数が多くなってもロージンが盾を構え、ヘイト値を上昇させるスキルを叫んでいればパルたちの方に被弾することは少ない。


「交代ですわ!」

「頼む!」


 ロージンのHPが三割を下回った時はディルメアが一時代わり、その間に集中して回復魔法をかけていく。

 そうしてたった三分後、木漏れ日の樹王は爆散した。



 続いての第二層ボスも存外苦戦することなく倒し、第三層に至っては魔剣アヴェルカの第二能力、『魔剣アヴェルカの攻撃力より敵防御力が低い場合、即死させる』によってパルが魔剣を振り回している合間にパルの範囲攻撃を含めてメンタたちが箱に一斉攻撃を加え、戦いは終わった。

 極悪とまで言われた第四層のボス、ノストラダムスも魔剣アヴェルカの餌食となって果てた。



 最下層。現トッププレイヤーたちの中でもごく一部の強者のみが謁見を許される場所。

 辺りは静まり返り、大聖堂のような壮大さを持ってパルたちを迎え入れた。


「いよいよだね」

「はい。魔剣チート乙です」


 その当人たちはピクニックに来たかのような明るさで第五層の扉を開け放ち、同時に前方へ走り出した。

 第五層のボス、ノア。かつてYWOを最初にクリアした団体、最強廃人集団グランドフィニッシャーが挑む予定だったボスであり、ティアールたちはその存在を知っており、実物を見るのは凄く久しぶりだった。

 ノアは記念すべき第一声を声にしようと口を開き――


「はぁっ!!」

「よくぞ来……」


 パルの振り下ろした魔剣アヴェルカを顔面で受け止める。戦闘は既に始まっているためHPは一割が削れている。

 ちなみにこれでHPが削れなければパルは口上句が終わるまで待ち、後に正々堂々と戦っていただろう。


「た、矮小なるも……」  


 また振り上げて、斬る。


「のたちよ。我はノ……」


 上段。


「ア。ユア・ライト・オ……」


 上段っ。


「ンラインを作りあ……」


 上段ッ。


「げた偉大なるお方カ……」


 上段ッ!


「ーリュ・レミテ……」


 上段ッッ!


「ス様よりお前た……」


 上段ッッ!!


「ちプレイヤーを……」


 上段ッッ!!!


 HPは9割削れており、パルは最上段に構え直す。


「倒す使命を与えられた存在だ。さあ、我を倒して地獄へ帰還して見せよ!」

「終わりだぁぁあああああ!!」


 ドカッと最後の一撃がノアの脳天を直撃し、爆散した。


「酷い」

「酷いな」


 そのあんまりなクリアにコノミとロージンは苦笑いし、ティアールに至っては少し泣いた。

 目の前にゲームクリアの文字が浮かびあがり、同時にノアが居た付近に一枚のディスプレイが浮かび上がった。

 その中にいるのは日本担当の魔王軍幹部、バウゼンローネ・アクワイロットその人だ。


『おーい、春~』

「バウゼンローネ様?」


 初めて見る顔にメンタは首を傾げ、コノミとロージンも注視した。地球を滅ぼした魔族というのだから強面の人物だとメンタは思っていたのだが、全然そんなことはなくちょっと無口そうな犬耳少女に刮目した。


『デスゲームクリアおめでとう。後ろにいるのは妹さんたちだね』

「はい! 水玉――こっちではメンタとコノミとロージン、それと管理AIのティアールたちです!」


 バウゼンローネは仔細承知というように頷いた。


『事の顛末は管理AIティアールから聞いているよ。でもデスゲームに残って救済したいって本当? なんだったら妹さんだけでもこっち側にログアウトすることも出来るけど……』


 と、言われてメンタは訝しみつつも否定した。


「パル姉がこっちに残るならオレも残ります! というかパル姉が説明してくれてませんので誰だか解りません!」

『私? 私は魔王軍幹部第二位バウゼンローネ・アクワイロット。今は日本統括を担当していて春と貴方を保護している……いわば保護者で偉い人だよ』


 それを聞いたメンタは勢いよく空中に飛び上がって着地と同時に土下座した。


「生言ってすみませんでしたぁ!!」


 その意味が解るバウゼンローネは頷いた。 


『うん。いいよ。それに事実上の出来レースも終わりだしね』


 バウゼンローネの言葉にパルは首を傾げたが、尋ねる前に言葉を被せられた。すんでティアールたちは一斉に目を逸らし、事情をあまり把握していないコノミたちも予想がついてしまった。


『じゃあGM権限の方はティアールに渡してあるから受け取ってね。それと春――パルたちにはログアウト出来るようにこっちでも処理しておくね』

「ありがとうございます! バウゼンローネ様!」


 パルの笑みにバウゼンローネは微笑んで手を振って答え、背後に二人の小さな半獣人の子供が見えた所で通信は切れた。


「と、いうわけで今日からパルさんが私たちのマスターです!」

「イエ――!」


 ティアールの宣言にエーコたちが一斉に手を叩いて同意し、手慣れた手つきでパルにGM権限を付与し、二人にログアウトボタンを追加した。


「えっと、これで終わりなのかな?」


 パルはイマイチ実感を掴めないためティアールに聞き返す。


「はい、勿論です」

「そっか」


 ティアールが頷いたのを見て、パルは魔剣アヴェルカをティアールに向けた。


「え、あの、パルさん?」 

「パル姉?」


 メンタも起き上がってパルを見て、その微笑みとは裏腹に眼が全く笑っていないことに気付いて怯えた。


「ねぇ、ティアール、エーコ、ハチ、シィ、ディルメア――」


 コノミとロージンは危険な気配を感じ取り、そそくさと上層に向かう階段へ移動した。メンタもすぐに動いて逃げ、それ以外は逃げられなかった。


「出来レースって、どういうこと?」


 

 出来レース。それは既に順位が決められており、どうあっても覆らないズルい行為であり、今回の場合はパルを重点的に贔屓したレースである。

 また、初めから一位が決められている行為のことを言う。

 


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 YWOにパルたち以外のプレイヤーがいなくなり、完全にサービス終了したのはそれから2年後の話になる。

 その2年の中で変わったモノと言えば春と水玉が自身の名前をYWOに置いて来たことだろう。春はパルと名を改め、水玉もメンタと名乗るようになった。

 ティアールたち管理AIはバウゼンローネの管理下でYWOの再構築をすることになり、コノミとロージンもそれに協力することになる。

 全てを終えて現実世界に戻った二人はバウゼンローネの計らいで今後は自由に余生を過ごすことになり、パルはYWOの後継版に協力し、メンタは『フルーツ・レイン』として活動を再開することにした。


 YWOが終了し、それから更に2年後に彼女たちは幻想郷へと誘われる。

  





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


~春・地球~


 西暦xx年。それは夏の出来事だった。

 非日常というのは唐突に訪れるものだと春は思う。それは今日という日。

 日本ではVRゲームというものが流行している。春もメンタの影響でいっぱしのゲーマーとしてそれは知っていたし、遊ぼうかなぁと興味を持った頃にはVRハードは売り切れていた。

 メンタは事前に知っていたのか購入しており、その性でデスゲームに囚われてしまった。そして地球でも魔王軍という魔族の軍隊が侵攻し、あっという間に世界を蹂躙していく。その最初の様子をパルは眺めていた。

 空中に開いた大きな穴から大量の魔族たちが出現し、手当たり次第に人間を襲っていく。


「殺せ!」

「殺せ!!」


 憎悪。何が彼らをそんな風にさせているのかパルには全く分からないが、それは目の前にもやってきた。


「死ねっ! 人間!」

「ひぅっ!?」


 春は抵抗出来ない。そのすべを知らない子供だった。

 ――意識はそこで途切れている。


 バウゼンローネ・アクワイロットという少女がいる。地球での名称は琴吹悠木と呼ばれていた犬の半獣人の少女だ。

 彼女は魔王軍の幹部であり、自ら進んで日本の統治を買って出た。それは日本という場所に思い入れがあり、彼女の最も好きな人が居た場所だからだ。

 彼女にも魔族の怒りは分かる。日本において犬耳というのは付け耳を差す言葉であり、獣人はいないのだ。そのため虐められることも多かった。

 その状況で手を差し伸べてくれた人が彼女の最も好きな人だ。

 そんな彼女も成長し、今は嫁多き彼にどうやって気持ちを伝えようかと模索する一方で自身が奥手であることも自覚している。そのためずっとモヤモヤしたままの関係となってしまっている。


「はぁ」


 と、彼女は溜息を吐いてつい先日叩きのめした元凶を見やる。

 彼女の家の客間で寝かせているのは世にも珍しい薄紫色の髪の毛をした少女。彼女のせいで制圧しかけていた人間たちが反抗をし、それを半場駆逐する勢いで掃討するハメになっていたのだ。 

 彼女――春はバウゼンローネが戦ってきた中でも強い方に部類される敵だった。勿論戦闘中は殺すつもりで聖剣デュランダルを振るい、彼女が繰り出す剣や弓を片っ端から切り落としていたのだ。だが、どういうわけか彼女は途中で力尽きてしまい、バウゼンローネも疑問を持って近寄ると、彼女は気絶していたのだ。

 強敵であればこそ殺しておくのが正解なのだが、運の良いことに魔王軍の方でも境界世界の方でもドタバタがあり、春は未だ生き永らえていた。



 春が目が覚めたのは地球の制圧が終わった秋頃のことだった。


「起きた?」


 目の前にいるのはバウゼンローネ。周囲にあるのはよく見かける家具。天井は木製で作られているのか檜の良い匂いがする。


「う、うん……」

「貴方、名前は?」

「ボク? ボクは古爪春……お姉ちゃんは?」


 春はほぼ無意識で呟いた一言なのだが、恋や家族は知っても姉妹というものを知らないバウゼンローネにとっては心打ち抜かれる一言だった。


「私はバウゼンローネ・アクワイロット。……ね、もう一度お姉ちゃんって言ってみて?」

「お姉ちゃん?」


 今度こそバウゼンローネは蹲って萌えた。


「くっ……コロォ!!」


 謎のワードを叫び、春はちょっと驚く。余談だが今のは『くっ、殺せ』を言おうとしていたのだが心が揺らぎ過ぎて上手く言えていなかった。

 バウゼンローネは立ち上がり、かつての敵に抱き着いた。


「わぁぁ!?」


 女子というものは可愛いものが大好きでありそれは例えば人間にも当てはまる。欲しければ手に入れたいと思うのが生物であり、彼女は手が届くところにいる。

 であれば手に入れるのは道理というものだろう。


 

 少し時間が経つと二人ともに落ち着くことが出来、ソファーに座って春と対面していた。


「改めまして、私は魔王軍幹部第二位のバウゼンローネ・アクワイロットよ。現状は……まぁ、分かってると思うけど」

「うん……」


 人類を攻めた側と攻められた側。加害者と被害者という立場のため空気は少しだけ悪いがバウゼンローネは説明を続けた。

 春も説明を聞くにつれて記憶を思い出していく。そして真っ先に気付いたのは家族のことだった。


「あの、水玉――ボクの妹や家族は……?」


 当然それをバウゼンローネは予測しており、一度視線を彷徨わせてからもう一度春を見た。


「会いたい?」


 問われ、春は頷いた。


「……来て」


 バウゼンローネは立ち上がり、春を促した。春も立ち上がって手を握ってとある場所へ向かっていく。

 向かった先はVRゲームに囚われた人間たちを集めた場所、病院だった。

 国家のデータベースを弄れば春の身内を調べることは簡単で父、母、春と水玉という家系だということが分かり、必然的に水玉は保護され、両親の行方も捜索されていた。

 病院に到着し、厳重に管理された病室に水玉はいた。


「水玉……っ!」


 春は少々我を忘れてガラスに張り付き、しかしまだ生きていることに安堵して離れた。


「助けたければデスゲームをクリアすることね」


 バウゼンローネが条件を示すと春は振り返り、頷いた。


「デスゲーム……うん、うんっ」


 嬉しそうにする春を見てバウゼンローネはちょっとだけ嫉妬する。

 だが喜びはそこまでだった。


「次はこっち」


 再び病院を歩き、バウゼンローネに連れられて到着したのは屋上だ。眼下に見えるのは支配された地上だった。

 歩行するのは魔族。人間の姿もあるが首に輪を付けられている。

 春はそれを見て少し沈黙し、バウゼンローネに視線を向けた。


「……地球は今や魔族のモノ。人間は家畜のように扱われ、法も魔族の法以外はまかり通らないわ」


 バウゼンローネが上着のポケットから袋に入った二枚の紙と毛髪を取り出し、春の手に握らせた。


「これ……」


 春はそれを見て薄々感付き、バウゼンローネは首肯した。


「ええ、そうよ。それが春の両親」 

「そんな……」


 春は信じられないというように首を横に振り、俯く。


「遺体は無いわ。……見せようにもそれ以外に無いの」

「食べ……ちゃったの?」 

「そうみたい」


 バウゼンローネは変わり果てた東京を見下ろし、その隣で春は泣き崩れた。

 バウゼンローネが毛髪を見つけられたのは古爪家を訪れていたからだ。家屋は魔族たちも興味がなく侵入こそされていたがそれ以上は何もされていない。毛髪は落ちていたものを回収し、鑑定にかけた結果だ。 

 後に部下から聞いた話だと父親は襲撃された会社の中で喰い荒らされており、母親は帰りがけの道端で殺されていたらしい。遺体は魔物が食べてしまっているため回収も出来ず、こういう結果になってしまっていた。 

 バウゼンローネは春を連れて自宅へと帰り、そっとしておく。慰めることは出来ないし、してはいけない。


 数日すると春も落ち着きを取り戻し、意外にもバウゼンローネとの会話を拒否しなかった。

 それはまだ唯一残っている実の妹を思い出したからであり、水玉を助けたいという逃げ道を利用した結果だ。

 バウゼンローネも春の意志を可能な限りくみ取ってあげたいし、望みは叶えてあげたいと思っている。

 春はデスゲームへと挑む。


コノミ「わーい、久しぶりの本編だ!」

グラたん「回想お疲れ様でした」

ロージン「世界って思っていたよりも狭いのかもしれないな」

グラたん「まあ世界観一緒ですし」

コノミ「それは言わないの!」

ロージン「そういや、カーリュ・レミテス――刻夜や夕夏たちは今、何をしているんだろうな」

グラたん「その当時ですと、境界世界の方で東奔西走してますよ」

ロージン「……苦労してるんだな」

グラたん「物語の中核にいればそうなります」

ティアール「皆様、そろそろ次のYWOを制作をしますのでお集りください」

コノミ「じゃあ行くね!」

ロージン「また機会があれば出たいけどね」

――退出――

グラたん「……次?」

バウゼンローネ「それは勿論、魔族と一部の人間が共に遊ぶための計画。名をRe;YWO――」

グラたん「―――――――――――え”っ?」





※ラスト。お付き合いください。

――――――――

 いくつもの地獄を乗り越え、辿り着いた最後の世界。

 そこに待つのは七つの大罪を冠する王たち。今、最終決戦の火ぶたが切って落とされる。

霊夢「幻想郷怠惰担当……クソニート舐めるんじゃないわよ!」

幽々子「幻想郷暴食担当……ヨームゥ! ゴッハァン!」

てゐ「幻想郷嫉妬担当……巨乳は全員敵だぁぁ!」

椛「幻想郷強欲担当……スルトさん寄越せー!」 

慧音「幻想郷傲慢担当……って! 私は傲慢じゃない!」

白蓮「幻想郷色欲担当……えっ、私そんな感じではありません! 断じて!!」

霖之助「幻想郷憤怒担当……いえ、年がら年中強盗されていたら怒りますよね!?」

 

 混沌極まる演目の舞台。此れを制し、世界を救うことが出来るのか――。


メンタ「次回、Fight・World・Order。幻想夢想世界ハクレイ」

グラたん「はい、お疲れ様でした!」

メンタ「これ色々問題ありそうな気もしますけど……」

霊夢「そうよ! 間違ってないけど酷いわ!」

慧音「断固抗議する!」

てゐ「モギトル!」

白蓮「きゃぁぁ!? な、何するんですか!」

霖之助「……ある意味、幻想郷らしいと言えばらしいですね」


――見苦しいネタにお付き合いいただきありがとうございました――


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