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村長との商談と最初の商品

 ラッカ村に足を踏み入れた悠真を、村人たちは遠巻きに見つめていた。


 当然だろう。


 この村にとって、見慣れない人間の旅人は珍しい。ましてや、見たこともない服装をして、透明な容器に入った水を持ち歩いているのだ。


 歓迎されるとは思っていなかった。


 敵意がないだけ、まだましである。


「こっちだ」


 門番のガルドが、ぶっきらぼうに声をかけた。


 ミナは父親の隣を歩きながら、何度も悠真を振り返っている。


「村長の家へ行くの?」


「ああ。お前は家に戻れ」


「でも……」


「母さんが心配している」


「分かった」


 ミナは不満そうに唇を尖らせたが、素直に頷いた。


 そして悠真へ向き直る。


「ユーマ、また水を売ってくれる?」


「需要があるなら、できるだけな」


「じゅよう?」


「欲しい人がいるなら、という意味だ」


「じゃあ、たくさん欲しい!」


 ミナが笑う。


 その笑顔を見て、悠真も少しだけ表情を緩めた。


 ここへ来てから、初めて見る自然な笑顔だった。


 しかし、その笑顔の裏側にあるものを、悠真は見逃さなかった。


 ミナだけではない。


 道沿いに並ぶ家々の前には、空になった水桶が置かれている。畑の土は乾き、葉の先が茶色く変色していた。


 村全体が、水を求めている。


 村長の家は、村の中央にある少し大きな建物だった。


 木造の壁には補修した跡がいくつもあり、屋根には乾燥させた薬草が吊るされている。


 ガルドが扉を叩いた。


「村長。俺だ」


「入れ」


 中から、落ち着いた声が返ってくる。


 ガルドが扉を開けると、悠真も後に続いた。


 室内には大きな木製の机が置かれていた。その向こうに、白い髭を蓄えた獣人の老人が座っている。


 頭には短い角が一本生えていた。


 獣人にも、いろいろな種族がいるらしい。


 老人は悠真を見て、細い目をさらに細めた。


「その者が、例の旅人か」


「はい。草原で見つけました」


「正確には、ミナが見つけた」


 悠真が訂正すると、ガルドがちらりと睨んだ。


 老人は気にした様子もなく、椅子を指差した。


「座りなさい」


「失礼します」


 悠真は椅子に座った。


 ガルドは壁際に立ったままだ。いつでも槍を構えられる位置を保っている。


「私はラッカ村の村長、バルドだ。お前の名は?」


「佐倉悠真です。ユーマと呼んでください」


「どこから来た?」


 予想していた質問だった。


 だが、答えは簡単ではない。


 現代日本から来たと言って、信じてもらえるはずがない。かといって、適当な国名を口にすれば、後で矛盾するだろう。


「遠方の国から来ました。事故に遭い、気づいたときには草原にいました」


「事故?」


「乗り物による災難です」


 バルドはガルドへ視線を向けた。


「魔法の影響は?」


「感じませんでした。ただ、妙な服装をしていて、身分証も読めないものです」


「妙な服装という自覚はあります」


 悠真は自分のワイシャツとスラックスを見下ろした。


 この世界では、確かに浮いている。


「身分証を見せてもらえるかね」


 悠真は財布から運転免許証を取り出し、机の上に置いた。


 バルドはそれを手に取り、裏表を眺める。


「文字は読めぬが、偽造品には見えない」


「そちらの文字については、俺も分かりません」


「お前にも読めぬのか?」


「俺の国の文字です」


 バルドは眉をひそめた。


「では、なぜこの村へ来た?」


「生きるためです」


 悠真は正直に答えた。


「食料も水もありません。俺には戦う力も、魔法もありません。だから、自分にできることをします」


「それが商売か」


「はい」


 悠真は、鞄からペットボトルを一本取り出した。


 バルドの視線が、容器に集中する。


「これは水です。俺の国で一般的に販売されている商品です」


「この透明な容器は何でできている?」


「樹脂……植物や石油を原料にした素材です」


 説明しても、完全に理解してもらうのは難しいだろう。


 悠真はペットボトルを机の上へ置いた。


「密閉されているため、持ち運びやすく、異物も入りにくい。村で商売を許可していただけるなら、これを販売します」


「いくらで?」


「銀貨一枚です」


 バルドは黙った。


 ガルドが口を挟む。


「この村で売られている水袋と同じ値段だ」


「ただし、容量は少ない」


「それなら、村人は買わん」


「水袋の容量と、こちらの水の品質を確認してから判断してください」


 悠真は慎重に言葉を選んだ。


 ペットボトルの水が、必ずしも村の水より安全だとは限らない。この世界の環境を知らない以上、現地の水を一方的に否定するつもりはなかった。


 だからこそ、付加価値を明確にする。


「この容器は一度開封すると、誰かが触れたかどうか分かります。それに、蓋を閉じれば持ち運びも可能です。遠くへ水を運ぶ人や、外へ出る仕事のある人には便利でしょう」


 バルドは腕を組んだ。


「便利さに銀貨一枚を払えということか」


「便利さだけではありません。必要なとき、必要な場所で、確実に飲めること。それが商品の価値です」


 商社時代、何度も同じ説明をした。


 ただの製品を売るのではない。


 機能、安心、時間、手間を含めた価値を提案する。


 相手の課題を解決できるなら、価格には意味が生まれる。


 バルドはペットボトルを手に取った。


「一つ、尋ねたい」


「どうぞ」


「この水を、どれだけ持っている?」


「今は、これを含めて九本です」


 正確な数字を答えた後、悠真は内心で舌打ちした。


 仕入れポイントは十。


 最初に飲んだ一本と、ミナへ売った一本を除き、現在の手持ちはない。


 しかし、バルドに見せるため、さきほど追加で一本購入していた。


 残りポイントは九。


 その一本も売れば、ポイントは十に戻る。


「九本……」


 バルドは考え込んだ。


「少なすぎるな」


「最初は試験販売です」


「試験販売?」


「村の需要と、適切な価格を確認するためのものです」


 バルドは悠真をじっと見た。


「お前は、商人としてこの村に居着くつもりか?」


「許可をいただけるなら」


「村に何をもたらす?」


「水だけではありません。食料、衛生用品、火を起こす道具。村の皆さんが必要とするものを確認し、仕入れます」


「本当に仕入れられるのか?」


「俺のスキルが許す限りは」


 言ってしまってから、悠真は口を閉じた。


 《異界仕入れ》の詳しい性質を、他人に話すべきではない。


 バルドの目が鋭くなる。


「スキル?」


「商人として使える、特殊な技術です」


「魔法とは違うのか」


「俺の国では、魔法とは呼びません」


「では、何と呼ぶ?」


「……企業秘密です」


 苦し紛れの答えだった。


 だが、バルドは怒らなかった。


「商人が自分の仕入れ先を秘密にするのは、珍しいことではないな」


 どうやら、納得したらしい。


 ガルドが低い声で尋ねた。


「もし許可したら、どのような条件を望む?」


 悠真は少し考えた。


 こちらから要求を出すだけでは、信用されない。


「まず、村の空き家か、商売に使える場所を借りたいです。代金は必要なら支払います」


「宿を借りる金はあるのか?」


「銀貨一枚だけです」


「それで商売をするのか」


「はい」


 ガルドは呆れたように息を吐いた。


「無謀だな」


「よく言われます」


 悠真は続けた。


「それから、村の人に商品の需要を聞く許可をください。売るものを決めるために、村の状況を調べたい」


「村人を騙すつもりはないか?」


「ありません」


「法外な値段で売るつもりは?」


「適正価格を目指します」


「適正価格とは何だ?」


 バルドの問いに、悠真は少し考えてから答えた。


「売る側が次の商品を仕入れられ、買う側が生活を維持できる価格です」


 部屋の中が静かになった。


 悠真は言葉を続ける。


「安すぎれば、俺が商売を続けられません。高すぎれば、村の人が買い続けられません。どちらか一方だけが得をする取引は、長続きしないと思っています」


 バルドは黙って悠真を見ていた。


 しばらくして、老人は小さく笑った。


「変わった商人だな」


「そうでしょうか」


「商人は皆、もっと利益の話ばかりする」


「利益は必要です。ただ、相手が困窮していれば、利益を取りすぎても次の取引がなくなります」


「村人の暮らしまで考えるというのか」


「考えなければ、商売が続きません」


 それは、半分だけ本音だった。


 残り半分は、自分が弱っている人間を見捨てられない性格だからだ。


 商社時代、利益を優先する会社の方針に反対したことがある。


 数字の上では正しくても、その数字の裏側には、取引先の倒産や従業員の解雇があった。


 あのとき、悠真は何も変えられなかった。


 だから今度こそ、自分の手で選びたい。


「分かった」


 バルドが言った。


「仮の商売許可を与えよう」


 ガルドが顔を上げた。


「村長、本当に?」


「ただし条件がある」


 バルドは指を一本立てた。


「商品は、まず私かガルドに確認させること」


「分かりました」


「二つ。村人に無理な借金をさせないこと」


「もちろんです」


「三つ。売上の一割を村の維持費として納めること」


 悠真は少し考えた。


 銀貨一枚の売上なら、十分の一をどう扱うのか。硬貨を割れないなら、十回に一回納める方式になるだろう。


「十回に一度、売上を村へ納める形でもよいですか?」


「構わん」


「それと、村の水不足を改善する商品を扱う場合、税を一時的に軽くしてもらえませんか?」


 バルドは目を細めた。


「いきなり条件をつけるか」


「商売を続けるためです。水のように需要が高い商品は、仕入れ量を増やしたい。そのため、最初の利益を次の仕入れに回したいのです」


 バルドはガルドを見る。


 ガルドは少し考えてから頷いた。


「水に限るなら、村への納め分を二十回に一度にしてもいいでしょう。ただし、価格を勝手に上げないこと」


「承知しました」


 悠真は頭を下げた。


「ありがとうございます」


 その瞬間、視界に文字が浮かんだ。


```text

ラッカ村との仮契約が成立しました。


信用度:微小


新たな機能を解放します。


《簡易販売記録》

・商品名

・販売価格

・販売数

・顧客評価


取引の透明性が高いほど、

信用度が上昇します。

```


 悠真は表示を見ながら、胸の内で息を吐いた。


 どうやら、契約によって新しい機能が解放されたらしい。


 このスキルには、単なる通販以上の仕組みがある。


 販売記録を開く。


```text

現在の販売記録


天然水 500ml

仕入れ数:3

販売数:2

自己消費:1


売上:銀貨2枚

仕入れポイント:10pt

```


 今、手元にある銀貨は二枚。


 ポイントは十。


 そして、商品は一本。


 この一本を売れば、再び仕入れポイントを獲得できる。


 しかし、目先の水を売るだけでは、村の問題は解決しない。


「村長」


「何かね?」


「商売を始める前に、村の状況を見せてもらえませんか?」


「水を売るのではないのか?」


「売ります。ただ、最初から水だけを仕入れるのが最善とは限りません」


 悠真は自分の考えを説明した。


「水が不足している原因が、単純な量の問題なのか、水を運ぶ容器の問題なのか、保存の問題なのか。それによって必要な商品が変わります」


 バルドはしばらく黙った。


 やがて、椅子から立ち上がる。


「ついてこい。村を案内する」


 村長、ガルド、そして悠真の三人は、村の中を歩き始めた。


 最初に向かったのは、村の中央にある井戸だった。


 井戸の周囲には、十人ほどの村人が集まっている。


 しかし、水を汲んでいる者はいなかった。


 井戸の横には、ひび割れた木桶が積み上げられている。


「水がないのですか?」


「水はある。ただし、深い」


 バルドが井戸を覗き込む。


「乾季になると地下水位が下がる。昔は簡単に汲めたが、今は長い縄が必要だ」


 悠真も中を覗いた。


 底は暗く、どれほど深いのか分からない。


 井戸の横には、古びた滑車が設置されている。軸は錆びつき、縄も擦り切れていた。


「滑車を直せば、汲み上げやすくなるのでは?」


「修理できる者がいない」


「部品は?」


「村にはない」


 悠真は井戸を見ながら考えた。


 水そのものを大量に持ち込むより、井戸の設備を改善した方が長期的には効果が大きいかもしれない。


 だが、必要な工具や部品を仕入れるにはポイントが必要だ。


「次は?」


「食料庫だ」


 案内された建物の中には、麻袋がいくつも積まれていた。


 しかし、袋の数は少ない。


 バルドが一つの袋を開く。


 中には麦が入っていたが、所々に黒い粒が混ざっている。


「虫が入っている」


 悠真は眉をひそめた。


「保存状態が悪いですね」


「保存食を作るにも、塩や油が足りない」


 続いて、洗い場へ向かった。


 村人たちは衣服を水でこすっている。洗剤らしきものは見当たらない。


「石鹸は?」


 悠真が尋ねると、ガルドが首を振った。


「交易商が来たときに買う。だが、最近は高くてな」


 悠真は思わず息を止めた。


 水不足。


 食料不足。


 衛生用品の不足。


 想像していた以上に、村の状況は厳しい。


 現代の商品を持ち込めば、簡単に問題を解決できるように見える。


 しかし、商品を売り続けるには、村人の収入が必要だ。


 石鹸を売っても、買う金がなければ続かない。


 水を売っても、村の水源が枯れれば意味がない。


 単に便利な商品を並べるだけでは、商売とは呼べない。


「どうだ?」


 バルドが尋ねた。


 悠真はすぐに答えなかった。


 仕入れポイントは十。


 初めて訪れた異世界の村。


 手元にある商品は一本の水。


 できることは限られている。


 それでも、優先順位をつけなければならない。


「まず、水を売ります」


 悠真は言った。


「ただし、同時に村の人から、使っている水桶や縄の状態を詳しく聞かせてください」


「水を売りながら、井戸も見るのか?」


「はい。短期的な水の供給と、長期的な水の確保。両方が必要です」


 バルドは頷いた。


「では、今日の夕方、村人を集めよう」


「ありがとうございます」


 その日の夕方。


 村の中央にある広場へ、村人たちが集まった。


 悠真は机を一つ借り、そこに商品を並べた。


 商品といっても、ペットボトルの水が三本だけだ。


 そのうち二本はすでに売れたため、残っているのは一本。


 少なすぎる。


 だが、最初から大量に売るつもりはなかった。


「こちらは水です。価格は銀貨一枚」


 村人たちの間から、ざわめきが起こる。


「高い」


「水袋より少ないぞ」


「本当に飲めるのか?」


 悠真は反論しなかった。


 むしろ、彼らの反応は当然だと思った。


「おっしゃる通り、量だけなら水袋の方が多いかもしれません。ただし、これは密閉されており、持ち運びが簡単です。遠出をする方、病人のために衛生的な水を必要とする方には役立ちます」


 村人たちは互いに顔を見合わせる。


 中年の女性が手を挙げた。


「病人に飲ませても大丈夫なのかい?」


「俺の国では、普通に飲まれている水です。ただし、病気を治す薬ではありません」


「子どもでも?」


「はい」


 女性は隣にいた小さな男の子を見る。


 男の子は、ペットボトルをじっと見つめていた。


 女性は革袋から銀貨を取り出した。


「一つ、ください」


 悠真は商品を渡した。


 女性は蓋を開けず、何度も容器を確認する。


「本当に、これで銀貨一枚かい?」


「はい」


 女性が水を受け取った直後、画面が表示された。


```text

販売を確認しました。


商品:天然水 500ml

販売価格:銀貨1枚


仕入れポイントを1pt獲得しました。

顧客評価:実用的

```


 ポイントは十一になった。


 初期値を超えた。


 悠真はわずかに目を見開いた。


 ミナに売ったときは、ポイントが元に戻っただけだった。


 しかし今回は違う。


 顧客評価が影響しているのか。


 それとも、村の生活に役立ったからなのか。


 悠真が考えている間に、別の女性が声を上げた。


「あたしも欲しい!」


「俺もだ!」


「残りは一つです」


 悠真が告げると、広場が静まり返った。


 需要はある。


 だが、商品が足りない。


「明日、また持ってくるのか?」


 誰かが尋ねた。


「はい」


 悠真は答えた。


「明日から、必要な商品を調査して持ってきます」


 その言葉に、村人たちの表情が少しだけ変わった。


 疑いが消えたわけではない。


 だが、期待が生まれた。


 商人にとって、それは最初の一歩だった。


 その夜、悠真はガルドから借りた空き家の中で、仕入れ画面を開いた。


```text

現在の仕入れポイント:11pt

所持金:銀貨3枚


候補商品:


・天然水 500ml 1pt

・固形石鹸 1個 1pt

・マッチ箱 1pt

・保存食パン 2pt

・食塩 500g 2pt

・ロープ 10m 3pt

・手回し式滑車 8pt

```


 表示された商品を、悠真は一つずつ確認していった。


 水を仕入れれば、確実に売れる。


 石鹸なら衛生状態の改善につながる。


 マッチは火起こしを楽にする。


 保存食は、食料不足への対策になる。


 ロープや滑車は、井戸の改善に使える。


 どれも必要だ。


 しかし、十一ポイントしかない。


 全部は買えない。


「どうする……」


 悠真は机に置いた銀貨を見つめた。


 銀貨三枚。


 仕入れポイント十一。


 村の需要は大きい。


 だが、最初に選ぶ商品を間違えれば、次の仕入れに繋がらない。


 そのとき、画面に新しい表示が現れた。


```text

初回地域貢献ボーナス条件


ラッカ村の生活改善に、

三種類以上の商品で貢献してください。


達成報酬:

仕入れポイント+5pt

```


 悠真は画面を見つめた。


「三種類以上の商品……」


 単一の商品だけを売るのでは足りない。


 水、石鹸、マッチ。


 この三つなら、合計三ポイントだ。


 残り八ポイントで、保存食か滑車も仕入れられる。


 悠真は考えを整理した。


 まず水を三本。


 石鹸を二個。


 マッチを二箱。


 合計七ポイント。


 残り四ポイント。


 明日、売上でポイントが戻れば、ロープも仕入れられる。


 しかし、手回し式滑車は八ポイント。今は買えない。


「水だけじゃない。小さくても、村の暮らし全体を良くする商品を売る」


 悠真は購入画面を開いた。


 まず、天然水を三本。


《購入しました》


 続いて、固形石鹸を二個。


《購入しました》


 最後に、マッチ箱を二つ。


《購入しました》


 画面の残量が表示される。


```text

残り仕入れポイント:4pt

```


 悠真は購入した商品を机の上へ並べた。


 透明なペットボトル。


 白い固形石鹸。


 小さなマッチ箱。


 どれも、日本では当たり前に手に入るものだった。


 だが、この村では違う。


 それぞれが、誰かの生活を少し変える可能性を持っている。


「明日は、これを売る」


 悠真は決意した。


 そのとき、空き家の外から物音が聞こえた。


 窓の隙間から外を見る。


 暗い村の道に、数人の人影が立っていた。


 先頭にいるのは、昼間に水を買った女性だった。


 その隣には、見知らぬ男がいる。


 男は悠真の家を指差し、低い声で何かを話していた。


 やがて、男がこちらを見上げる。


 暗がりの中で、その目だけが妙に光っていた。


 悠真の背筋に、嫌な予感が走る。


 この村で商売を始めたばかりだというのに、もう何か問題が起きたのだろうか。


 それとも――。


 画面の端に、警告が表示された。


```text

周辺に敵対的な意図を持つ人物を確認。


注意:

商人活動に伴う競合・妨害の可能性があります。

```


 悠真は、机の上に並べた商品を見た。


 水。


 石鹸。


 マッチ。


 そして、残り四ポイント。


 戦う力はない。


 逃げる場所もない。


 それでも、ここで商売を続けるしかなかった。


「商売っていうのは……商品を仕入れて、売れば終わりじゃないんだよな」


 悠真は小さく呟いた。


 相手との交渉。


 信用の構築。


 競争相手への対応。


 時には、身を守るための判断も必要になる。


 外で、誰かが扉を叩いた。


 ドン、ドン、と重い音が響く。


「佐倉悠真という商人は、ここにいるか?」


 低い男の声だった。


 悠真は扉の前へ歩み寄る。


 そして、慎重に問いかけた。


「どちら様ですか?」


「商売の話がしたい」


 男はそう答えた。


「お前がこの村で何を売るつもりなのか、聞かせてもらおう」


 悠真は扉を見つめた。


 異世界での商売は、思っていたより早く、次の段階へ進もうとしていた。

名前:ミナ

年齢:14歳

種族:獣人

職業:採取人見習い/悠真の協力者

レベル:2

体力:D

筋力:D

敏捷:C

魔力:E

知力:D

交渉力:D

商才:D

戦闘力:F

固有スキル:《土地勘》

所持金:銅貨8枚

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