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大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


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48/112

黒電話よ、安らかに──昭和が息絶えた日

昭和から平成、そして令和まで生き抜いてきた遺物だった。


しかし――

“麗奈ちゃん枕カバー”通販開始から数日。


ジリリリリリリリリリリリリリ!!!!

という威勢のいいベルは、次第にこう変わっていく。


ジ…リ……リ……

……リ…………


麗奈

「え……今、息してる?」


「なんか呼吸みたいになってるねぇ」


祖母

「がんばれ!!がんばるんだ電話!!

 あと“ひと鳴り”だよ!!

 黒電話、前畑!!がんばれ前畑!!」


麗奈

「前畑って誰?」



※昭和11年、ベルリン五輪女子200m平泳ぎ決勝。

アナウンサーが興奮しすぎて

「前畑頑張れ!」を20回以上連呼した伝説の実況で

当時日本中が熱狂した。




しかし黒電話は——


ジ………………(沈黙)


祖母

「前畑ァァァァァァァ!!!!」

麗奈

「だから誰なのよ前畑!!」


黒電話は静かに息を引き取った。

※前畑秀子さんは金メダルを獲得している。



「よし、黒電話は永眠。

 次は先日買ったFAXの出番だ」


麗奈

「使い方、誰も分からなかったやつね!?」


一家全員でFAXと戦うが……


祖母

「紙が入るけど……帰ってこないよ?」

「裏?表?どれでもない?」

「このボタンを押せば送れる……はず!」


— ピーッ、ガガガガガガガ、ブブブブブ…(謎の音)


麗奈

「怖い!!壊れてる音じゃん!!」


「もう……パン屋のおさむさん呼ぼう」


麗奈

「なんでパン屋!?」


「修さんは、何でも直せる男だ」


数分後。

エプロン姿の中村修が到着。


「……お前らなぁ……」


麗奈

「開口一番それ!?私たち何した!?」


「令和にFAXも黒電話も使いこなせないのは、

 商店街で大宮さんとこだけだぞ」


「おお、ウチが“レア”ってことだな!」


「レアじゃねえよ!危険物だよ!!」


修は慣れた手つきでFAXを分解し、

5分で完全復活させた。


祖母

「紙が……紙が向こうへ飛んでくよ!

 す、すごい……令和……本当に文明だ……」


「FAXは昭和からあるっての!!」


麗奈

「修さん、本当にありがとうございます……」


「次、壊したらパン買いに来ても直さねぇぞ」


麗奈

「脅し!?……いや、ごもっとも!!」



翌日の地元FM局(FMさいたま)。


パーソナリティ

「大宮ふとん店さん、黒電話が壊れたとか?」


麗奈

「はい……もう寿命で……

 今日からは“FAXで注文受け付けま〜す”!」


パーソナリティ

「FAX!?令和の時代に!?

 大宮さん、攻めるねぇ〜」


リスナー

「FAX持ってません!」

「コンビニから送ります!」

「FAXの時点で笑った!」


スタジオ大爆笑。


店に戻ると、修がFAXの前で腕組みしていた。


「詰まったら呼べ」


麗奈

「うち……パン屋さんにIT担当頼ってる……?」


クロじい

「ニャ(むしろ修がいないと無理)」


こうして大宮ふとん店は、

黒電話に別れ、

“昭和文明の亡霊”FAXを相棒に

再び通販の嵐へ挑むのであった。



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