第九話
リードは1人悩んでいた。昨晩、レイラが森へ行きたいと言い出した。そこでリードはある決意をした。レイラと一緒に行く前に1人で行き偵察をしようと。土地勘がない場所で意図せず魔物と遭遇した場合、レイラを引き連れて逃げるのは無理だと判断したからだ。ただ、そこには一つ大きな問題点があった。
どうやってレイラと離れて1人で森に行けばいいのだろう、、
そう、リードとレイラは常に行動を共にしていた。教会には2人の他に子供はおらず、勉強をするにしても運動をするにしても食事、睡眠、2人セットだった。
だから困る、、。僕がレイラに行くと言えば大人しく、はいそうですかとなるわけがない。絶対に付いてくる。
悩むリードは案をとりあえずは出し続けた。
・・・食事、就寝後、トイレ、勉強中、朝、、それくらいか?
少ないながらも思いついた案をひとまず整理する。どれもこっそり抜け出せそうではあるが、食事とトイレは抜け出せる時間が少ないため却下。選択肢から外していく。残るは勉強中、就寝後、朝になった。
勉強中はお腹が痛いなどで抜け出せるが、却下した2つより時間が長いだけであってこれも却下。残るは就寝後、朝となる。
就寝後、、、夜目が利くわけでもないし夜に森へ行くなんて1番危険だろ、却下。
最後は朝か。朝一に行けばバレはしなさそうだが、、いやそれしかないな。
リードはようやく結論を出し、早朝に偵察に行くことに決めた。そうなれば次の問題だが、いつ行くのかということだ。できれば月明かりがある日が好ましい。早朝と言っても朝日が出てからだと間に合わない可能性がある。まだ暗い時間帯に出ることが必須だった。
まぁそれまではなんとかレイラに言い訳をして堪えてもらうしかないよな。可能性は低いけどあまりに引き伸ばすと1人で行ってしまうこともあるかもしれない、、なるべく早く解決しないと、、、。
レイラの言い訳を考えているうちにもう日が暮れる頃だった。食事を済ませレイラと共に寝床へ着く。そのまま流れるように自分のルーティンをこなす。
今日も何事もなくてよかった。メリーがレイラとたまに遊びに夢中になる時があるからもしかしたら、その時がチャンスだったりするか?
もう結論は出したとはいえ、渋々と出した結論だったので新たな可能性を探していた。大丈夫。まだ僅かばかりの猶予はある。
そんな安心しきったリードを嘲笑うかのように月は顔を出した。
・・・今日?
リードは狐につつまれたようで少しの間、放心状態となったがぶるぶると顔を横に振り慌てて考えだす。
え、今日?確かに遅すぎると困るとは思ったけど、、早すぎても困るんだよ。極端な選択しかないのかよ!!しかもいつになく良く見える、、、行くしかないのか?
この機を逃したらチャンスは無いのではないか?そんな焦りがリードの思考力を鈍らす。タイムリミットは考えている内に、すぐそこまで来ていた。
んもうっ!!あーもう知らない。善は急げ、思いたったが吉日だ!!
リードは責任をことわざへと丸投げをしてコソコソと教会を抜け出したのだった。
森へ入るとぞわりと寒気が走ったがここまできたら行くしかないとそのまま静かに突き進む。リードがしようとしていることは花畑までの土地勘を掴むこと。そのためあらかじめ決めた範囲を蛇行しながら進んだ。もちろん、土地勘は一朝一夕で掴めるものではない。だがここに限っては解決策を持っていたのだった。
えっと、、ここは木にダメージが入ってる?樹皮が剥がれているのか。花畑から見てこの方向に教会がある。その近くには・・・
このようにリードは数ある樹木の中からわかりやすい特徴をもったものを探しだし、そこを起点に規則性を探し出す。それでも難しかった場合は何か印をつけていった。
そうして、早々に作業を切り上げ危険な場所、何かあった時の隠れ場所を探すことに時間を費やした。
よし、これでなんとかやることはやれた。よかった、間に合いそう。
幸い魔物などと遭遇することはなく、糞などの痕跡も見つからなかった。これならば安心してレイラと行けそうと、ホッとする。何も心の準備など出来ていなくどうなると思ったのだが終わりよければ全てよしなのだ。
リードは教会に戻り自分の寝床へとまた着く。もう日もでており明るかったが、不安から解放されたことによりドッと疲れがでて眠ってしまった。
「リード、リード、リード!!起きて!」
そんな呼びかけにハッと目を覚まして
「ごめん、レイラ」
「いいよ、だけど今日は全然起きないんだからっ!」
どうにも何回、何十回も呼びかけていたらしくレイラは少し頬を膨らませながら言った。だがリードは少し笑いながら続ける。
「今日は森に行こうか」