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外伝 クラウスと兄の物語4

「はぁぁぁぁぁぁ………。」


昼下がりの庭園で私は大きなため息をついた。


兄上と距離ができ始めて約3か月たった。


とはいえ、距離ができたといっても避けているわけじゃない。


ただ、兄上が国王教育をやめ、自分が学びたいことだけを学び始めたせいでもあった。


兄上が学びたいこと。


それは自分の国に生きる人がどういう生き方をし、国で生きる人々はどういう職業につき、またどういう問題があるのかを見て回るというものだった。


それはもちろん、実際に目にしなければわからない事ばかりで兄上は社会見学という名目でほとんど城からいなくなっていた。


私を支持する貴族が多すぎることもあり、兄上はもうずいぶん前からまともに使用人の世話を受けていない。


それは使用人に限らず、護衛も兄上に対し意欲を見せなかった。


誰も兄上を目上の存在、王族として扱わないが兄上がそれを父上に報告することが無いため私も口を出さずにいるしかできないでいた。


だが、正直私は心配で心配でならなかった。


王族が護衛もつけずに毎日毎日街に出ることがどれだけ危険な事なのか。


それこそこう言いたくはないが、兄上が死んでしまえばと思っている貴族も少なくない。


様々な危険要素があるというのにもかかわらず兄上は緊張感を見せてこない。


それも私が兄上から距離を置いている理由の一つになっていた。


王族として王族らしい待遇、行動をしていない兄上を見る度、本当に兄上が王位につくことが無いと見せつけられているようで、私は誰にも守られることのない兄上を見る度につらい思いになっていた。


そんな日が半年も過ぎた頃だったと思う。


(……あれ……兄上?)


真夜中、寝付けずに部屋のバルコニーから外を見ていると小さな影が夜の庭園をかけていた。


他の人なら見逃すかもしれないが兄上が大好きな私は見逃すことも見間違えることもしなかった。


(ど、どこに行くんだろう。今から行けば追いつける……?)


そう思い私は部屋を飛び出そうとした。


だけど、そううまくはいかなかった。


「どこへ行かれるのですか?クラウス王子殿下。」


「あ……。」


兄上が社会見学へ出かけるようになって3か月くらいたったある日、とある貴族の申し立てて私の部屋の前に警護がつくようになった。


以前なら容易に兄上の部屋に行けたというのに、今はそれすら叶わない。


(……窮屈だな。)


やりたいこともできず、言いたいことも言えない。


そんな人間が将来この国の王になるかもしれないと思うと私は笑えて仕方なかった。


無力。


それを思い知らされている人間がどうこの国の将来をいい方へと導くのだろうか。


そう思うが当時の私には何もできなかった。


「えっと、何でもない。警護、ご苦労様。」


私はそういうと大人しくベッドの中へと戻った。


兄上は堂々と自分の部屋の扉から出たのだろうか。


それとも鳥のように自由な兄上の事だ。


バルコニーから飛ぶように庭園に出たのかもしれない。


(……本当に兄上はすごい。僕にできないことは全部できるんだもん……。)


私はそんなことを思いながら涙で枕を濡らした。


私は兄上のように自由になることも、自由の為に行動を起こすこともできない。


(……お願いだよ、兄上。どこにも、どこにもいかないで――――――。)


日に日に遠くなっていくような兄上。


そんな兄上を思いながら切に願う。


けれど兄上と私の道が完全に一つになることが無くなる事件は無情にも起きてしまうのだった―――――――。

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