スキル『採掘』
取り急ぎ書き溜め分だけ毎日出します。
切れたら不定期になりますのでご容赦を。
何につけても自分の置かれている状況を知らなければどうしようもない。
例えばこの洞窟の壁だ。
見た目はただの土だが、実は鉄で出来てたりとか…。
-- …おや?
土壁に近づくと、今まで何も書かれていなかった左下の錬成ウィンドウに文字が出てきた。
□ 土:5kg/0kg → ゴブリン
…………なんだこれ。
壁から遠ざかる。
文字消える。
壁に近づく。
文字出てくる。
……これは、土を掘れと言っているのか?
まるでコンピューターゲームの様だな…
しかし今の僕には手がない。
土を取りたくても文字通り手が出ない。無い袖もとい無い手は振れない。
-- うーん…。手を使わない『採掘』、かぁ…。
思わずそう独り言ちた瞬間、目の前の土壁がボコリと音を立てて崩れた。
……。
ど、どどどどういうことだ!?
まさかこの土壁、わずかな衝撃で崩れるくらい脆いのか!?
いやでも僕は壁には触れてすらいない。
それで崩れるならもうこの洞窟自体がやばいのでは!?
……。
……やべぇ
……逃げな。
(幸い入り口までは10mもない!
急げ急げ!中にいる内に崩れたら生き埋めだぞ!)
慌てて外に出るべく入り口に向かって歩を進める。
…とはいえ歩いている感じは一切しないのだが。
1mくらいの高さ、ちょい早歩きぐらいの速度でふよふよと移動している感じだ。
洞窟の出口まで8m
……5m
……3m
……1m
-- よし!洞窟脱しゅぶぅぅぅぅぅ!!
洞窟から出れると確信した瞬間、僕は何かとてつもなく硬い物にぶつかった衝撃を受け、はじき返された。
再度ゆっくり近づいてみて分かったが、この洞窟の出口には何か見えない壁のようなものがあるようだ…。
最初あれほどの勢いあっても破れなかったのだから、力づくでのこれの突破はとても現実的ではない。
-- はぁぁぁぁ…まじかぁ…。
-- この見えない壁、どこまで続いてるんだ?
-- この横の壁を『採掘』しても無理なのか?
ボコリ…ドサッ
……え?
左を向くと入り口近辺の土壁が崩れている。
先ほど洞窟の奥で崩れたのと同じような崩れ方で、地面には小さな土の山が出来ている。
-- ……もしかして
一抹の望みをかけ、左側の土壁を向いてその『言葉』を口にしてみる。
-- ……『採掘』
ボコリ…ドサッ
-- 『採掘』『採掘』
ボココ…ドサドサッ
-- 『採掘』『採掘』『採掘』『採掘』!!
ボココココ…ドサドサドサッ
……間違いない。僕が採掘って言うのに連動して壁が崩れてる。
宙に浮いてる視界といい、見えない壁といい、この魔法の如き現象と言い…。
この世界は一体何なんだ?
……まぁいい。
ともあれ土を手に入れる方法は解った。
土壁に近づくだけでこれ見よがしに出てくるくらいだ。
この「□ 土:5kg/0kg → ゴブリン」という文字にはさぞかし重要な意味があるに違いない。
どうやら採掘という言葉は土を入手する事まで含んでいたらしく、錬成ウインドウの文字が
■ 土:5kg/6.2kg → ゴブリン
となっていた。
白かった□が黒塗りの■になり、スラッシュの右側の数字が0kgから6.2kgに増えている事から、スラッシュの右側が僕の持っている材料の量、左側が必要な量、矢印の右側が材料で作り出せるものを意味していると考えてまず間違いない。
そして作り出せない場合は左側の四角い記号が白塗りで、作り出せる場合は黒塗りなのだろう。
たぶん。
恐らく。
きっと。
とはいえ…ゴブリンか。
「悪戯好き」「悪意を持った妖精」「醜い魔物」「小鬼」「最弱のモンスター」...
と、かの魔物には控えめに言ってネガティブイメージしかないのだけど…
…。
ええい!ままよ!やってみなけりゃ始まらん!!
失敗したとて死にはしないだろ!
ゴブリン!錬・成!!