第八話 とある事件
「鏡野!お前座る席違うだろ?」
いつもは桜田さんの横に座るが今日は富山さんの隣に座った。
「急いでるんです!見つかったんですよ!急いで!」
「ああ、もう。戸田、桜田の隣に乗れ!」
戸田さんの言葉を聞く前に発進する。犯人と思われる人物が車に乗っているのを発見された。その報告で私達は一路そちらに向かう。
*
「鏡野!お前は規則ばっかり無視しやがって!」
ガミガミ怒られているんで話を変えてみる。
「富山さんもうすぐ定年ですよね?」
「あ?ああ。そうだ」
さっきまでの勢いを失い、まるで温厚なサラリーマンのようになる。
「カミさんとなあ、旅行に行く約束してるんだよ」
「旅行かあ。行けないですもんね」
ほう、矛先が変わった。
*
「あ、あれだな!?」
「はい、番号が一致してます」
サイレンを鳴らした途端に対向車線に入り逃げ出す。ヤバイな。カーレースになる。私は富山さんを見て、後続の桜田さんの車両を見る。
ああ、桜田さんに譲れと言っても聞かないよな。
追いかけていった先にトラックが前を走っていた。鉄パイプを積んでる。前の状況が見えにくい。
一瞬の出来事だった。何が起こったのかわからなかった。
前のトラックの急ブレーキに富山さんも急ブレーキをかけた。瞬間鉄パイプが降ってきた。富山さんの判断で鉄パイプの雨は私をかすめただけで終わった。
横を見る。富山さんは動かない。
私は富山さんを揺り動かした。
「富山さん!奥さんと旅行に行くんでしょ!」
彼の頭からは血が流れていた。意識もない。
「富山さん!富山さん!」
「鏡野!富山さん!」
桜田さんがこちらに来た。
「犯人は?」
「トラックの前でクラッシュして電柱に衝突して、今戸田がみてる。怪我が酷いな。トラックの運転手も同様だ」
最悪だ。こんなところ救急車じゃ間に合わない。負傷者が多すぎる。
「富山さん!?鏡野、どういうことだ?」
「多分頭を、鉄パイプを避けるためにハンドルを勢いよくきった時に頭を強く打ってると思います」
「おい!お前も鉄パイプが!!!」
そう、言わないでよ。血に弱いんだから。さっきから意識遠のきそうなの堪えてるんだから。
「救急には?」
「ああ、連絡してる。お前止血しなくていいのか?」
「動かさない方がいい思うんで。すみません。携帯とってもらえます?」
「え!?あ、ああ!!」
私が以前ドクターヘリを呼んだのを思い出したんだろう。私のカバンから携帯を取り出す。
「鏡野どこにかければいい?」
「佐伯総合病院と西園寺病院と藤堂総合病院に」
「ああ、わかった」
「私の名前出せば…」
*
そのあと私は気を失ったようだった。ん?ここ?ああ、病院ってどこも同じに見える。
「鏡野さん!鏡野さん!」
呼びかけられた方を見るとあの医者がいた。八雲先生。
「八雲先生ってことはここは佐伯総合病院ですね」
「はい」
「他の他の患者は?」
聞けなかった富山さんこと。
「犯人は藤堂総合病院にトラックの運転手は西園寺病院に搬送してます。あなたの同僚は残念ですが…」
やっぱり。私のせいだ。止めれば良かったのに。運転技術のない私が乗り込んでも一緒だった。定年まではなんて思わなければよかった。
「鏡野さん!?」
「はい。大丈夫です。あとはお願いします」
「私が縫うんだから大丈夫よ」
何時の間にか華音がいる。
「華音綺麗に縫ってよね。嫁入りまえなんだから」
「私が縫うんだから嫁入りしても綺麗よ」
「だね」
華音は縫うの得意だもんね。昔から。




