急転した事態
「人参ゲーッツ!!」
「はいはい。」
イエーイ!とハイテンションな来斗。
本当に、先程の出来事はなんだったのだろうか。
「楓、さっき気付いたんだ俺!!」
「なにに?」
「これってデートじゃね!?」
「残念な頭ね。」
「…楓さん。冷たいっス。」
ぐすぐす泣いている来斗に敢えて触れずに帰路に着く。
正直、この男の考えている事は良く分からない。
長い付き合いではあるが、来斗の考えている事や彼が何をしたいのか理解が出来ない。
何故、自分にここまで執着するのだろう。
勿体無い。
自惚れている訳ではないが、彼の好意は自分に向いている。
もっと、彼に相応しい人物が居てもおかしくないのに。
こんな自分に、何故。
なんで、なんで、なんで。
分からない、何故、なんで。
それに、彼は自分のせいで。
「楓。」
「!」
「…顔色、悪いぞ?」
「…ぁ」
名を呼ばれて、思考が中断される。
目の前には彼の心配そうな顔があって。
「…楓?」
伸ばされる手。駄目だ。それに縋ってしまったら。
「…っ大丈夫。ありがとう。行きましょう。」
伸ばされる手を避け、声を絞り出す。
行き場を失った手は宙をさ迷う。
そしてその手の持ち主の瞳は傷ついた様に揺れていた。
何故。
(そんな眼をするの?)
だがそれは一瞬で、次の瞬間にはニカッと笑う。
「ん!分かった!じゃあ行こーぜ!」
「…ええ。」
それだけが、救いだった。
その後は、たわいの無い話をしながら帰り道を歩いていた。
「そういえばさー。」
「?」
ふと来斗が切り出す。
「魔術師の行方不明や死亡の被害って東部だけじゃないんだろ?」
「ええ。西部、南部、北部にも数人の被害者がいるわ。」
「涼雅の旦那大丈夫かなー?」
「涼雅…ああ、あの…」
「「煮干し魔術師。」」
「…やっぱ印象強いのそこだよなぁ。」
「まあ…。あとは、口調…?」
「ああ…確かに…。未だにあの人が息吹の旦那より年上って信じらんねーんだけど…。」
「涼雅って…童顔よねぇ…。」
何年か前、北部で軍に反感を持った者達による大きめの反乱があった。
まだその頃は戦争が激戦化していなかった為、息吹達特別隊もその反乱軍の殲滅に狩り出された。
だが現場に到着した時には一人の魔術師によってほとんどの犯人達は拘束されていた。
だが主犯の人物がまだ捕まらずに抵抗を続けていたらしく、息吹達とその魔術師は共闘し、事態を鎮圧させた。
魔術師の名は神月涼雅。
冷静な判断と魔術の実力を軍に買われ、軍に勧誘されたが、彼の言葉でそれは却下された。
『遠慮しとくわー。そもそもそんな大した能力なんて持ってへんし、ぶっちゃけ…』
『軍嫌いやねん。』
あの時の涼雅の表情は素晴らしいまでに笑顔だった気がする。
「…そうね。あの人も一応一般市民なのよね…。」
狙われた魔術師は行方不明か死亡になっている。
運良く助かった者達も襲われたということだけで後は良く覚えていないらしい。
「まぁ…かなりの実力だし…北の方は被害少ないし…大丈夫じゃないか?」
「…そうね。息吹隊長と鈴音が何か掴んでくるといいのだけど…。」
なんにせよ、今の自分達にはなにも出来ない。
小さなため息を吐いた瞬間。
「彩ヶ殿!!灰原殿!!」
「「!」」
切羽詰まった声と共に息切れを起こした第一区域の一般兵が来斗と楓の前に現れる。
「何だよ?どうしたんだ?」
明らかにおかしい兵士の様子に来斗が眉をひそめて尋ねる。
兵士の口から飛び出したのは信じがたい言葉だった。
「…っ報告です!第二区域責任者殿の命令により第二区域の戦闘兵全員が第二区域責任者殿と共にソルディアに向かいました!!」
「…な…。」
思わず楓の口から零れた驚きの声。
「嘘だろ…。」
ありえない。
第二区域の戦闘兵だけでソルディアに向かったところで勝てるハズがない。
むしろ第二区域の兵は全滅してしまう。
「なに考えてんだよあのおっさん!!」
「…本当ね。司令はどうしたの?」
「山吹司令官殿は軍本部に呼び出されており不在です…!」
「タイミング悪ぃ…。」
今、こうしている間にも兵士達はソルディアに向かっている。
最悪の場合、第二区域の兵士達は全滅。そして、リグレス側の戦力が弱まった所でソルディアはこの戦争を終わらす為、一気に攻め立ててくるかもしれない。
最善の策はただ一つ。
「楓!」
「ええ!」
第二区域の兵士達がソルディアに到着する前に追いつき、撤退させる。
「…間に合ってくれよ…!!」
どうか間に合うように、祈りながら二人は駆け出した。
涼雅さんと息吹さん達は面識があります。もちろん海璃さんとも。
そして結構仲も良いんじゃないかな、と。
んで、息吹さんが涼雅さんを軍に勧誘しているようです↓
おまけ
涼雅さんが軍に誘われているようです。
今日のおまけ当番
涼雅&息吹&海璃
息「軍に入りやがれ。」
涼「出た俺様!」
息「うっせ。いいから入れ。入らねえなら殴る。」
涼「いやいやいや、色々おかしい事に気付こうな?一般人を殴る軍人ってどこにおるねん。」
息「ここ。」
涼「自分なぁ…。」
海「りょーちん、ダーリンなにやってんのー?」
息「お前こそ今までなにやってたんだよ。」
涼(…りょーちん?わい?)
海「現場処理終わって暇だったから来くんに一発アッパー喰らわせてきた!」
息「そーか。」
涼「…あえて何も言わへんでおくわ。アイツああいう役割やもんな。」
海「で?なにやってんの?」
息「涼雅を軍に勧誘中。」
涼「勧誘って言わへんやろー。」
海「あれ!?りょーちん軍に入らないの!?入るよね!?え、入らないの!?入るよね!?入るっていったじゃん!」
涼「う、おおおお…!?落ち着け?落ち着け、な!?しかも入るっていってへんし!」
息「いけいけ海璃ーおせおせ海璃ー(棒読み)」
涼「自分腹立つなおい。あんなあ…入るなんて一言も言ってへんし軍嫌いやねん。生理的に受付けへんねん。」
息「軍人の前で言うか。」
涼「わい、嘘はつけへん性格やねん。ごめんうそ。」
息「嘘かよ。」
海「じゃありょーちん!煮干一年分でどうだろうか!」
息「結局物で釣るんかい。釣れねえだろ。」
涼「…………………………(ごくり)」
息「おい。」




