消えた未来
きっと彼も、何か重いものを背負っていたのだろう。
『いくら泣き叫んだって、いくら待ったって、帰ってこねぇんだ。』
荷物を纏める玲奈の脳裏に過る息吹の言葉。
(まあでも…触れられたくない部分もあるわよね…)
誰にでもそういった部分はある。自分自身にも。
(最後にお礼も言えたし…)
「よしっ!」
荷物の纏めも終わった。
両親が眠っているこの地から出ていく準備は整った。
息吹の言う通り自分は甘えていたのかもしれない。
もうこの世にはいない両親にいつまでも縋り続け、この地に止まった。
でも今度は。
今度は、一人で歩もう。
両親に縋り続けるのはもう止めよう。
「行こう。」
大丈夫。きっと、歩いていける。
しかし、小屋を出た玲奈を待っていたのは、
明るい未来などでは無かった。
「出てきたぞッ!!」
「やっぱりここが住み処だったか!!」
「………え?」
玲奈を取り囲む様に待ち構えていたのはここの近くに住む住人達だった。
その手には銃。
「…あ、あの…。どうしたんですか…?」
「どうしただとッ!?貴様が一番良く知っているだろうが!!」
噛みつく様な勢いで怒鳴られ、玲奈が首を竦める。
しかし、玲奈自身はこんなに怒鳴られる様な事をやった覚えはない。
「貴様のせいだ!貴様がソルディアの人間を連れてきたから!幼い子供の命が失われた!!」
まさか。
「う…そ。」
まさか。
「あの…ナイフ?」
出掛けた先で玲奈は糸目の男…ディストと赤毛の少女…シキに襲われた。
シキが放ったナイフを玲奈はなんとか避け、逃げ出した。
だがそのナイフは玲奈のローブを掠り、近くにいた少年に突き刺さった。
そしてその少年は、命を落とした。
「い…や…。」
「何故…何故、あの子が死ななければいけなかった…!?」
玲奈の瞳から涙が溢れる。
だが、怒り狂った住人達は気付かない。
「なんであの子が死んでお前が死なないッ!?」
「お前なんて必要ないのに!!」
「やはり銀髪の人物は、不幸しか運んでこない!!」
「死ね…。」
ぼそり。玲奈の真ん前にいた銃を持った青年が呟く。
「お前が…ッ!お前さえ居なければ…!!弟は死ななかったッ!!」
叫び、鋭い眼光が玲奈を射抜く。
「…死ねよ。」
「死んで…ッ!死んで償えええぇぇぇ!!」
向けられる銃口。
逃げようと思えば逃げられたかもしれない。
でも。
自分には、明るい未来など無い。
乾いた銃声が響き渡った。
赤く染まる世界。
薄れていく意識の中で両親が優しく笑った気がした。
「!」
「?どうした?鈴音。」
目を見開き、今まで歩いてきた道を振り返る鈴音に息吹が首を傾げる。
「いえ…。玲奈さんの声が…。」
聞こえた様な気がして。
「気のせいだろ。ここにはいねぇし。」
「ですよねぇ…?」
何でだろー?と呟きながら行きに乗ってきた馬車に乗り込む鈴音。それに続く息吹。
玲奈の声は、誰にも届く事はなかった。
やらかしてしもうた暗い話ww 実際はシキが殺したのに、全て玲奈のせいだと思い込んで玲奈を殺してしまった村人の人々。
玲奈がいなかったら確かにこんな事は起こらなかったんでしょうけど…我ながら書いていてなんだかなあと思いました。うん。
そして今回おまけはおやすみです。すみません。




