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プロローグ トラックに轢かれた僕は
「行ってきまーす」
三月のまだ寒い朝の空気に、明るい声が響く。
高橋ミナトはごく普通の男子高校生である。
現代日本に生まれ、父親と二人で暮らしている。
ミナトは玄関のドアを勢い良く閉め、所属する空手部の朝練へと向かう。
「おう、気をつけてな」
家の奥の洗面所から父親のくぐもった声が聞こえる。歯磨き中だろうか。
「はーい」
小走りになりながら、入り組んだ住宅街を抜けて車通りの多い道路へと出る。
今日もまた、普段と何ひとつ変わらない一日が始まろうとしていた――
しかし突然、横断歩道を渡る僕の方に向かって車のエンジン音が近づいてきた。
危ない――と思う間もなく、僕の体は信号無視の大型トラックに撥ね飛ばされる。
そして地面に叩きつけられる瞬間、僕は父親と、幼い頃に死別した母親の顔をぼんやりと思い出す。
ごめん、父さん、母さん。
「……あなたのこと、助けてあげるわ」
意識が途切れる寸前に、僕は母親とよく似た、銀髪の女性の姿を見たような気がした。




