試練(2)
こんにちは。
今回は早めのペースですが、次回もこうなるとは限りません。
何卒、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
コメント、感想等はいつでも受け付けているので、ぜひよろしくお願いいたします。
ギィ……ギィ……
書類を片手に夕がもたれかかっている椅子がきしむ音が響く。
「なぁ、紫苑。」
夕は自分の机の向かいに並んでいる応接用の机にうつぶせになっていた紫苑に声をかける。
「……なに。」
紫苑は重たげな声で反応する。
「訓練時代のこと、思い出せるか?」
夕の問いかけに紫苑は少し不機嫌そうに答える。
「あの人のことは、思い出したくない……」
ーーー
「はぁ……はぁ……」
玲は息を切らしながら登りかけの朝日を背に小屋へたどり着いた。
ドサッ……
ボロボロになった玲の体は、勢いよく地面に横たわる。
「おい、飯はまだかよ。」
達良は小屋から顔をのぞかせ、不機嫌そうに尋ねる。
鬼か、この人は。
数時間前にこの人に連れられて小屋の外を歩いていたけど、まさかこんなに離れているとは思わなかった。
それに、小屋の周りには大型の肉食と思われる動物が生息していたため、小屋に帰ることだけでも精いっぱいなのに、これからこの人に飯を作らなければいけないらしい。
パートを掛け持ちして、かつ双子にご飯を作っていた母親の偉大さが身にしみて感じられる。
玲は体を持ち上げ、かろうじて採集していた山菜を取り出し、台所へ向かった。
米と最低限の調味料はある。
彼曰く部下が毎月送ってくるらしい。
台所で作業をする玲を見て、達良は口を開く。
「えぇー。山菜かよー。俺、肉が食いたいんだけどー。」
玲はまるで本当の子供のように全力で不満をあらわにする達良に本気で苛立ちを覚える。
「今日のところは勘弁してください。」
借金取りにしか言うことがないだろうと思っていたセリフだ。
玲はやっとの思いで完成させた炊き込みご飯を、難色を示す達良と食べる。
……
食卓には気まずい沈黙が流れている。
「あの……。」
玲が沈黙を破る。
「えぇと、少し気になっていたんですけど、達良さんっておいくつなんですか?」
少しむっとした表情をした達良は答える。
「しらねー。あと、俺のことは先生か師匠と呼んでくれないか?俺も本庁の奴らみたいに部下に敬われたい。」
「あ、はい。すみません、知らないというのはどういうことですか?」
玲は続けて質問する。
「知らないもんは知らないんだよ。ずっとこんなとこにいて年齢数えてる方がおかしいだろ。」
「ずっと?」
「あぁ。月城、暁月ってさっきお前行っただろ?そいつらがクソガキの時代よりずっと昔からここに住んでんだよ。」
「それは、どうしてですか?」
「知らん。」
あぁ、もうこの人に真面目なことを聞くのはやめておこう。
食べ終わった食器を片付け、達良に睡眠を促された玲は床に就く。
目を閉じ、しばらくすると、強烈な眠気が襲い、意識が遠くなっていく。
ーーー
ジリリリリ……
聞きなれたアラームの音がかすかに聞こえる。
少し違和感を感じつつも、目をこすりながら体を持ち上げる。
すると、そこは十七年間暮らした家の寝室だった。
「は?」
寝ぼけているのだろうか。
もう一度目をこすり、頬と叩いてみる。
目を開けると、変わらず自室の窓から太陽の光が差し込んでいる。
「夢じゃないのか……?」




