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感情論  作者: 笹崎幸


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刹那のダイアド(1)

こんにちは。

ゆるゆると続けていければと考えております。

感じたこと、思ったことは自分の中にためておくのではなく、発露してこそその輝きを放つものであります。

(コメント、感想等お待ちしております。)

 感情について考えることがある。期待、喜び、信頼、恐れ、驚き、悲しみ、嫌悪、怒り。これらはいったいどこから来てどこへ消えていくのだろうか。

 感情は、何のためにあるのだろうか。




 いつもの光景だ。もうすっかり見慣れたいつもの光景。少し日焼けした壁紙に明朝の光がそっと差し込む。ああ、今日が始まってしまう。憂鬱な気持ちに苛まれながら身を起こし、時計を見る。時刻は午前四時を少し回っていた。


 父親が多額の借金を残して蒸発し、母親とまだ幼い双子の妹と弟で構成される早瀬(はやせ)家の家計を支えるため、(れい)は朝のコンビニバイトに始まり、様々なアルバイトを掛け持ちしていた。


 朝のアルバイトが終わると、玲は双子の(さき)耀(よう)を起こし、自身も高校の制服に着替える。双子を学校まで送るついでに、母親の営む洋食屋の仕込みを手伝い、やっと登校する。


 玲の通う高校は地元でも有数の進学校であり、玲の成績は言ってしまえば中の上程度であったが、大学に進学することを目指していない玲にとっては成績よりも母親の強い意志で進学させられた高校生活を満喫できているので、朝の憂鬱や放課後に同級生と遊ぶこともできないことも、家族の幸せを考えればそれで十分だった。


(れい)―」


 通学路を俯きながら歩いていると聞きなれた声がした。


「なんだよー、今日も元気ない感じ?」


 幼馴染の相沢(あいざわ)だ。相沢はとにかくいつも元気で成績優秀。現状に満足している玲とは対照的に向上心に満ち溢れ、彼の真っ赤な目には希望が満ちていた。


「お前は本当に朝から元気だな。その元気を分けてもらいたいよ。」


「朝から元気ないなんてもったいないぞ、俺はその日を最高の日にするために朝から気張ってるのさ。」


 少し悪態を含ませた返事の端から玲の疲労をくみ取ったのだろう。相沢はいつもの元気論を振りかざしてきた。


「確かに一日中元気でいられたらそれがいいんだろうけど、誰にでも感情の浮き沈みくらいあるもんだろ?」


「何、なんか嫌なことでもあったの?」


 怪訝(けげん)な顔でこちらを見つめる相沢の顔を見て、玲は今朝の出来事を振り返る。


「うちの妹が星座占いで最下位だったからって学校に行きたくないってごねだしちゃってさ。妹を説得するのに今日の夕飯は外食するって約束しちゃったんだけど、今日もバイトがあるから俺抜きで母さんと弟の三人で行って来いって言ったら俺と一緒じゃないと嫌だって泣き出しちゃって。」


「めちゃくちゃ妹に愛されてんじゃーん。かわいい妹ちゃんがいてうらやましい限りだよ、本当に。」


 相沢はにやつきながら玲の背中を叩く。


「他人事だからって楽しんでんじゃねーよ。はぁ、どうして双子でこうも性格が違うんだか。」


「あー、確かに咲ちゃんは子供っぽいとこあるけど耀くんはなんか大人びてるっていうか大人しいっていうか咲ちゃんとは全然違うよね。」


「咲も耀みたいに少しは大人しくしてくれるといいんだけど。まぁ、双子といっても性別も違うし容姿も咲は父さん似、耀は母さん似だから性格もそれぞれに似ちゃってるのかなぁ・・・。」


 身内の話に花を咲かせているうちに学校に着き、またいつもと変わらない日常が送られていく。




 そう思っていた。






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