79 リディナ王との謁見
翌朝から謁見準備に大わらわ。
王様に会うのだから、そんなみすぼらしい格好はできません。
屋根裏部屋が朝からドタバタ。
「エレーナ、俺の外套、どこにいった?」
「はいはい、ここに」
買ってきたばかりの白い外套をお渡しします。
勇者様は、結構みてくれには気を使うかっこつけやさんです。
昨日早速市場の冒険者向けの衣装を扱っているお店で、購入してきたものです。
「エレーナ殿、あたしの帽子、どれがいいと思いますか?」
「えっと、こっちの方が色も形も厳かでいいと思いますが」
シルヴァさん好みの、いっぱいアクセサリーがついてて派手で奇妙な形の帽子よりも、いつものオーソドックスなとんがり帽子をお勧めします。
そして魔法使いらしい黒のローブ。ベルトを忘れずきゅっと締めて。
「エレーナさん、わたしのローブは……」
「はい、洗濯しておきました」
元々綺麗好きなマリーさんには、白いローブで汚れが目立ちやすいので洗っておきました。
「エレーナ、あたしのすねあて、どこか知らない?」
「はいはい、ここにあります」
禁酒の鬱憤をはらすように、久々に大酒飲んで夜遅くに帰ってきてよっぱらって廊下に投げ捨てられていたのを朝見つけたので、拾っておきました。
ついでに朝からうるせえ、眠れねえとお隣に止まっている方から、壁ドンされたのであやまりにいきます。
「ごめんなさいーー気をつけます」
ちっという舌打ちをいただきました。
色々ありましたが、時間までに準備を万端に整えます。
「よし、みんな準備できたか?」
勇者様の点呼。
「はーい、できましたよ」
「あたしもです」
「こちらも準備万端です」
もちろん、わたしも正装ですよ。といってもいつもの格好に、白いスカーフをつけただけ。
おっと眼鏡も忘れずに。
「はい、わたしもできました」
商人系のお供らしく記録用のバッグ、計算機も持って。
いよいよ宿を出発して、朝食もそこそこに出発。
リディナ王との謁見に向かいます。
あらかじめ呼んでいた馬車に乗って、王城の門へ。
緑色の甲冑の兵士さん、そこで待つように指示されます。
そして迎えの方を待ちます。
やがて案内役の身綺麗なご老人が出てきました。
「勇者様、ようこそ、我らがリディナ城へ」
お城で執事をつとめていらっしゃるとか。
「よろしくお願いします」
勇者様が応対してくれます。
「あなたがこちらの方々を率いる勇者様ですか」
「はい。今日という日に、王様にお目通りのお許しいただけたことを感謝いたします」
うやうやしく胸元に手をやって小さくお辞儀する勇者さま。
「いや、なかなかに礼儀もあって、今後に、期待してしまいますな」
きっちり受け答えもこなしてくれて今日の勇者様、ひと味違います。
いつもの田舎者っぷりをみせてあげたいくらい。
案内役の方の後をついていきます。
「こんにちは」
城門を通るときに、衛兵の立派な制服を着た槍を持った兵隊さんに挨拶。
びしっと敬礼されます。
小国といえども規律が行き届いています。
辺境の小城といえど、やはりそれなりにお城の体裁はあります。
城門を抜けると、入り口の間、宴の間、そして謁見を行う会見の間。
もうすぐ王様がいらっしゃる前に見せてくれました。
「どうぞこちらへ」
そして待合いの小さな部屋に通されます。
もうすぐ晴れの舞台。
見知らぬ国での王様に会うのは、勇者様一行として旅をしている、と実感する瞬間の一つです。
何度も繰り返しますが、そう簡単に王様にほいほい会えるものではなく、このロールプレイングゲームちっくな世界独特な習慣です。
しばらく出されたお茶を飲んで待っていたら謁見の時間がやってきました。
案内係の方の呼び出しです。
「じゃあ、みなさん、いってらっしゃい」
「おう、行ってくるよ。エレーナ」
「じゃあね、エレちゃん」
案内係の後について、みなさんいってしまいました。
「おみやげ、待ってますからね」
去っていく背中に向けた一言で皆さんの苦笑い。
謁見できるのは四人まで。
当然ながら私は、お留守番になります。




