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71 夜の闖入者


 わたしたちが拠点としている安宿に帰って今日の戦果を報告です。


「これだけです……」


 戦果は、窮状を訴えて、恵んで貰った何枚かの銀貨でした。

 皆さんのがっくりした顔。まだ安宿生活が続く。


「エレーナ、気にするな。なあ、みんな。俺なんかは貧乏にはなれっ子だからな」

「あたしたち、平気ですよ」

「こんなもの、神の試練だと思えば、なんてことはありません」


 皆さんの声に出さない不満が聞こえてきます。

 はー、厳しい。

 夜は、近くで買ってきた堅いパンでしのぎます。


「それで、お願いがあるのです」


 勇者様には明日の出資周りにご同行いただくようにお願いしました。


「しょうがないな」

「申し訳ありません」


 なんとかご了解をいただきました。

 皆さん、まだ旅の疲れが残っていたようで、しばらくしたら寝てしまいました。

 お酒も馬車を失った際に持ってくるのを忘れたので、ルビーさんには我慢してもらっています。


 ルビーさんの歯ぎしりが聞こえてきます。お酒を飲めないまま寝るときの癖です。


 夜。

 ほんと、隙間職業、ニッチな仕事です。

 帳簿の整理、と。

 さて寝ましょう。

 心身疲れていたので、すぐに眠りに落ちてしまいます。






 でもーーその夜はなんか寝苦しい夜でした。

 なんとなく夢うつつ。

 そっと屋根裏部屋の天窓が開いて何かが進入してきました。

 それも二人。

 とん、と床に飛び降りて、わたしのベッドサイドに立ちます。

 耳の尖った女の子二人。青い瞳に銀色と金色の髪。

 なにやらささやきあっていましたが、わたしは夢うつつのまま。


「ねえ、サラ。間違いないよ、この子が女王様の言っていたエレーナだよ」


 天窓から差し込んでいる月明かりをもとに、ぐいっとのぞき込んでいる。


「あ、起こしたら駄目よ、ミラ。遠くから護衛しろって命令なんだから」


(なんか……視線を感じるんですが……)


「見つけられて良かったね。魔族がわたしたちより先にこの子を見つけてたら、大変なことになってたよ」

「でも、途中の森で気づかれそうになっちゃった。これからはもっと離れて見守るようにしないと」


 夢を見てるんだか現実なんだかよくわからない。誰かそこにいます?


「じゃあ、あたしたちは、これで失礼しましょう」

「あ、でも、ちょっとエレーナに悪戯してみたいな。いい? サラ」


 ナイフを取り出して素早く長い髪の毛を切り取った。

 素早く結んで形を作る。


(うーん、なんか寝苦しい……。落ち着いて寝られない)


「あ、ミラ、起きるよっ逃げないと」

「じゃあね、エレーナ、それあたしの贈り物だから好きに使っていいよ」


 ひゅっと素早い動きで、跳躍し、天窓の外へ飛び出ていった。






 ようやく金縛りから起きることができました。

 おしっこ……。

  

 今、なんかいたような気がしたんだけど……。

 黒い影がびゅっと。


「まあ、いいか」


 夢、だよね。

 また明日からお金集めしないといけないし……。

 寝よ寝よ。


「あれ……」


 ふと天井を見上げると天窓が開いています。開けっ放しになってたのかな。

 妙に寒いのはこのせいですか。

 お月様丸見えです。

 


「よいしょっと」


 梯子を持ってきてしめました。

 またベッドの中へ。





 翌朝。

 起きて一騒動がありました。

 あくびして起きあがると、なにやら皆さんが騒いでいます。


「どうしたんですか?」


 勇者様は興奮した面もちです。


「みろよ、エレーナこれ……」


 そしてわたしに手にしたものを差し出しました。

 金色の綺麗な糸のようなものが纏められて、象られています。


「なんですか?」


 聞くとベッドの脇の机の上に、何故かこのブロンドの髪で作られた細工が置かれていたそうです。

 ブロンドの髪はマリーさんと同じですが、それとは全く違うようです。本人も覚えがないそうです。


「わたしよりも遙かに綺麗ですよ、これ」


 金よりも綺麗な金色だとか。

 ちょっと悔しそう。

 こういう不思議なアイテムに詳しいシルヴァさんが、よくよく鑑定してくれました。

 慎重に鑑定しています。

 その目がくわっと開かれました。


「こ、これは……エルフの髪細工ですよ!」


 その手がふるえています。

 シルヴァさんの解説です。

 昔々。

 かつて古の勇者がついに魔王を倒して帰還した時に、仲間に加わったエルフが、また森に帰っていく時別れ際に贈った代物。

 永遠の友情の証。

 それがエルフの髪細工です。

 そして巷では、幸運の証であり、エルフの加護を受けている証として大変貴重なものだそうです。

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