70 王様との謁見準備
「はあ……」
そして午後。
城下町の広場にやってきて、噴水前の階段に腰を下ろします。
飛び込み、アポ無しで有力者とされる10人ほどまわって成果なし。
タイミングが悪かったのか手堅くお金を出してくれそうなところは、つい最近、すでに他のグループが行ってしまっていて、今はお金を出す資金が無いと断られてしまった。
ついてないときはとことん駄目です。
この国は、基本勇者パーティーが必ず立ち寄る場所で、日常的にやってきます。
勇者パーティーに対して目が肥えています。
地元民のみなさん、巧言令色には耐性があり、ほいほいお金をくれません。
これをクリアできるのは、よほどのプレゼン上手か、過去の具体的な成果を示せるパーティーでしょう。わたしたちも既に中堅クラスではありますが、それではなかなか興味示してくれません。
成果なしに途方に暮れます。
「想像以上に厳しい……」
お金が獲られない以上は節約するしかありません。
かといって、節約ややりくりを気にしすぎて勇者様に、みすぼらしい格好をさせたり、お金に困っているからといって物乞いををさせるわけにもいきません。
勇者様の品格を落とすようなことは絶対避けなければいけないのです。
そのためにわたしがいるのです。頭を下げるのもわたしの仕事。
ここを乗り切らないとわたしの存在意義がなくなります。
「とりあえず、もう一つの仕事を片づけておきますか……」
ここは気分をかえて別のことをすることにしました。
いつまでもしょぼくれている場合ではありません。
お尻を払って立ちあがります。
もう一つの仕事は、リディナ王への謁見の申し込みです。
資金調達の合間に、お城の門まで行って謁見申し込みの窓口にも寄りました。
改めて作り直した書類を持って提出。
城外の兵士の詰め所の隣に、事務室がもうけられていて、そこが窓口になっていました。
沢山申請があるのか、手慣れていて、事務処理が早いです。
審査の後、通知するので、午後にまたここに来い、と言われました。
おおう。
順番待ちです。やっぱり聖なる短剣は、どの勇者グループも欲しいもののようです。
振り返ると後ろにも何グループかいます。
そして午後がやってきました。
他にも午前中にみかけた同じく申請した方々の顔がみえます。
そこかしこで、やったーという歓声が聞こえます。
悔しそうな顔をしているグループもいます。
どうやら、申請を却下されたようです。まだ旅をして日が浅いようですね。結構きっちり審査しているようです。
表情でわかります。明るい顔と暗い顔。
「申請番号、1923番、グラスタニアの勇者一行のエレーナです」
ほい、できてるよ、と窓口のお役人から渡されます。
結果を知らせる通知です。
書類が折り畳まれています。
「ほら、次が待っているから」
すぐに開こうと思いましたが、別の場所に移動。
ドキドキ……。
こんなのは高校受験以来です。
「うん?」
書類に一部不備があるので、再提出してほしい、と。
ありゃりゃ。
しっかり用意したはずなのに……。
よくよく確認すると、王様への謁見には、どこかの騎士団の胸章が必要だ、と。聖なる短剣は騎士に授けるもの。メンバーに騎士職が必要で、それを証明する胸章が必要だと。
「むむ……」
あの早々メンバーから離脱した国を愛する騎士リック君がグラスタニア騎士団の胸章を持っていましたが、帰国する際に一緒に持って帰ってしまっています。
くっそ。
騎士がいなければ、それに代わる相応のものを示す必要があると。
由緒正しい、貴重な品。
グラスタニアの勇者証では駄目。だいたいはこれがあれば通じるんですがね。書類審査が厳しいリディナ王国は伊達じゃない。
(どうしよう……)
リック君の脱落以来、うちは騎士職が空席のままです。
リディナ王国の騎士団に知り合いや、つてなんてありません。
しかしあきらめるわけにもいかない。
はるばるここまできて、手続きが上手く行かず、手ぶらで出発となると。商人スキルで加わっているわたしの大失態です。面目も立ちません。
もっかいここに来るとなると、結構な時間の寄り道になってしまいます。
はあーまた懸案が増えてしまいました。
シエレンの町では、まったりしていたのと打って変わって、このリディナ王国では、わたしは踏んだり蹴ったりです。




