67 城下町にて
町を探索していたわたしに、どこかのパーティーが話しかけてきました。
「やあ、君も、どこかのパーティに加わっているのかい?」
ちょうど果物屋さんの前を通りがかった時に声をかけられた。
勇者役の方がスキンヘッドなのが、なかなかの個性的。
このメンバー、女剣士、男戦士等々、肉弾系の方々で固めておられます。後衛は弓使い。
魔法系はいらない、という思い切りの良さ。
「はい、まあそんなところですね」
勇者の旅一行は、だいたいの雰囲気でわかります。
少し旅にくたびれつつも、自由な雰囲気があるそうです。
この目の前のどこかの勇者パーティーさんたちもそんな感じです。
同じ目的をもつ同士だとなおさら。
「やっぱり、そうか」
どこから来たのかい、と定番の質問を受けました。
「グラスタニアのエレーナともうします」
グラスタニア出身であることを話すると、へえ、エレーナはなかなか由緒あるところから来てるじゃないか、とお世辞を言われます。
自分たちは大陸南部のゼラン共和国からきた、とのことです。
ゼランは二十年ほど前に王国が倒れて共和国になった新しい国です。
この魔物がはびこり始めた、この混乱を好機と捉えて、何組もの勇者パーティーをつくって送り込んでいるんだとか。
新興国らしく各国に先駆けて、魔王討伐で名をあげようという国をあげた熱い意気込みが伝わってきます。
「俺たちも負けないけどさ。そっちも頑張れよ」
ゼランは特に勇者や魔王に纏わる場所ではないので行くことはありませんが、聞くところによると、国中がたぎっているとか。
ゼランは反面グラスタニアのような歴史と伝統は無いのです。倒れた王国も二百年で七つの系統が入れ替わっているらしいですし。
「君たちのグループには、魔法使いや聖職者がいるのか。いいな」
スキンヘッドの勇者様は羨ましがります。
政変の混乱で教会が支部の拠点を移したり、地元の魔法学校が閉鎖されたりして勇者の旅にお供させる若い魔法使いや聖職者が、いなくなり、そのせいで肉弾系パーティーになっているんだとか。
歴史や伝統が失われてしまった苦しみがあるそうです。
「そちらにも、いろいろと悩みがあるんですね」
ついでに君は何の職業スキルで旅に加わっているかも聞かれました。
お金とアイテムの管理係であることを伝えると、ちょっと微妙な反応が返ってきます。
地味、マイナー。ニッチ。そんな職業があったんだ。
ええ、そんな反応でしょうよ。
「それで、一人でうろうろして、どうしたんだい? 他の仲間は?」
あちらは、メンバーみんなで楽しくお買い物をしているようです。
一緒に名物である桃のパイをみんなで手にして和気藹々。仲がいいですねえ。
次はどこへ行こうかとか。
まるで修学旅行です。
今夜みんなで食べる食べ物だったり、武器物資の調達やら、楽しくわいわいやっているのが目に浮かびます。
ああいう雰囲気、うちのパーティーには無いです。基本わたしたち一行は町ではバラバラ。
道中ずっと一緒だから、町でぐらい、一人でそれぞれのんびりしたいということで、各自自由行動。
みんなボッチ傾向があるんですね。
まあ、前世で修学旅行で京都に行ったときもわたしはこんな感じでしたから、別に気にしません。
新幹線の中でひたすら漫画読んでいる奴、携帯ゲームやっている奴、清水寺で買い物バラバラ。
イニシアチブをとる人もいなくてぐだぐだな班行動してましたから。




