68 情報収集は怠らず
其れはさておき。
「実は……」
お金が苦しいことを打ち明けます。
そうか、それは大変だな、とだけ慰められます。
といってお金の貸し借りは難しい。
お互いに旅をする立場なので、またどこで出会うかわかりません。
お金を貸してくれるところもないし。
なので出資を募るわけです。
「いい情報をくれたら、少し協力してやってもいいぜ。だいたいなんで、金に困ってるんだ?」
気のいい勇者さんたちです。
「リディナ隧道で、死竜に襲われて、馬車の放棄を余儀なくされまして」
真っ暗な洞窟で、ほうほうのていで逃げてきた。運良く振り切った。その辺りのことを身振り手振りで伝えます。
「は? 嘘だろう?」
目の色が変わり、唖然としてしまいました。
最初は信じてもらえませんでした。
それはそうです。当然の反応。だって最後のダンジョンあたりでエンカウントするような魔物が出てきたんですから。
「いえいえ、本当なんです。かなりの死霊系モンスターにでくわしたあげく、最後に死竜でしたから、うちのヒーラーさんがもう精魂尽き果ててしまいまして」
きゅうにざわざわ。この肉弾派パーティー、魔法使い、聖職者がいないので、死霊系相手は弱点です。
力押しが通じない相手です。
「俺も戦ってみたいぜ」
いきる戦士を抑えて、勇者さんは、すぐに迂回する決断をしました。
「あたしたちにはまだ早いって」
「やめておこうぜ、エレーナって言ったっけ、情報ありがとうな」
「それが賢明だと思います」
うちらは運良く逃げることができましたが、次はわかりません。
「貴重な情報、ありがとう、じゃあな」
「がんばってね、エレーナ」
別れ際にスキンヘッドの勇者さんから、約束通り、この国の有力者の情報を交換にいただきました。
早速、その足でこの城下町の貴族商人たちの下へ向かいます。
有力者たちへこの旅への趣旨を理解してもらい、出資してもらう。
要はお金の無心です。
この世界では魔物を倒すとお金を落とすという便利なシステムにはなっていません。お金はお金として旅の中で調達しなければいけません。
途中で手に入れた毛皮や体の一部が高級品として売れる時もありますが、それだけでは、旅の費用を賄うことはできません。
一番の収入源は出資してもらうことです。
有力者を紹介してもらって、自分たちを売り込むのです。
お返しはこちらの出資リストに出資者として名を連ねること。後日名をあげたときに、自分が協力者としてアピールできるのです。
疑問に思うかもしれませんが、今のところこれが一番お金集めの有効手段です。
意外に商人やお金持ちってお金のことばかり考えているように思われがちですが、名誉も欲しいのです。箔をつける意味もあれば純粋に世の役に立ちたい。




