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48 コボルト退治①

 翌日。

 朝早く起きたわたしたちは、水汲みや畑仕事を手伝った後に、老夫婦の作っていただいた朝ご飯を美味しくいただきました。

 そして食事後、早速受けた依頼を果たすために出立します。

 旅は一時休止。こういう寄り道が許されるのが勇者の旅の良いところです。

 コボルトがいるという森に出かけて行きます。

 もちろん今日は徒歩です。

 裏山の獣道のような細い細い道を一時間ほど歩くと、徐々に森が深くなり、生い茂った草むらが行く手を阻むようになってきました。

 時々かついでいる袋が木の枝に引っかかったり……。


「はあ……はあ……」


 汗塗れです。

 今日はわたしエレーナも出番となるので気合い入れて重装備したのが間違いです。胸と背中を防護する皮のチョッキ、帽子、腰巻きが結構重い。

 腕あて、膝あて。フル装備なので、この陽気に暑い暑い。

 背中の荷物も肩に食い込んできて痛いです……。


「大丈夫? エレちゃん、持とうか?」


 ルビーさんがひょいっと持ってくれました。

 体は彼女のほうがずっと大きいのに、山道での身のこなし方を心得ているのか、上手で、枝やひっかかることはありません。

 それにずっと軽装備。

 流石冒険者系ギルド、その上経験を積んでいます。コボルトなど、もう目じゃないのです。

 皆さんリラックスしています。


 


 やがて、小さな川を渡り、岩肌がむき出しになった斜面を上ると、急に森が深くなってきました。

 高い木々の枝葉に遮られ、昼でも夜のようです。

 なるほど、確かにコボルトが出そうな雰囲気がします。

 こういう色んなものが茂って見つかりにくい場所は住処になりやすいです。

 みなさん、おそらくここで間違いないと頷きあっています。

 コボルトの住処の探索が始まりました。


「おい、みんな、ちょっと集まってくれ」


 やがて周囲を探索していた勇者様が声を上げて、呼びます。


「これは確かに、そうですな」

 

 シルヴァさんがつぶやきました。学識のある人の評価。

 ルビーさんもそうだ、と頷きます。なりたての頃から何度も退治の経験があるルビーさんも同じ評価。

 二人一致すれば間違いない。

 コボルト特有の三本指の足跡です。


 他にも、食べたネズミやリスの死骸などの形跡が見つかりました。

 この辺はやはりいわゆるコボルトの森のようです。

 どこかに住処があるはずです。


「よし、エレーナ、頼んだぞ」

「はい、勇者様」


 いよいよわたしの出番。

 普段先頭に参加しないわたしが、珍しく前面にたちます。

 コボルトに罠をしかけます。

 彼らは、家を建てるだけの技術は持ち合わせていませんので、木の茂みや洞に住んでいます。

 またコボルトは警戒心が強いので、道ばたで会っても逃げてしまいます。

 なので、巣を見つけてまとめて駆除しなければいけません。

 そこでーー宝石を使っておびき寄せるのがわたしの役目です。


「よっと」


 宝石を地面に置いてゆきます。

 そして風下に回って様子を草むらから覗きます。

 

 しばらくするとーー。

 一匹がやってきました。

 地面に落ちている光る宝石をみつけました。

 これを罠だと気づく知性はありません。

 あ、拾って、気味の悪い笑い声の後に、向こうに行きました。

 住処は向こうにあるようです。


(よし、行くぞ)


 気配に鋭いコボルトに声を出さず目で合図を送り合います。

 勇者様とルビーさんが、音を立てずに足跡を辿り、おいかけます。

 私たちも後を追いかけます。

 もし見失ったらまた宝石を置いて、後をつけるのを繰り返しながら住処に辿りつくのです。

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