40 幕間 冒険者を追放されたけど何故か天才美少女剣士が仲間になってくれて最強過ぎる②
少し変わった格好ではあるが、この冒険者が集う酒場では珍しくはない。
勇者として名をあげたい。そして世界を冒険したい。
自分を誇示したいという者が多く、格好もかぶきもののように珍妙にして人目を引こうとする者も珍しくない。
それを考えれば、この少女戦士はむしろ控えめな方だ。
「それより、何を悩んでいたの? 良かったら聞かせてくれる?」
「実は……」
頼まれたわけでもなく、洗いざらい話だした。
酒に酔っていたのもあるが、誰かに聞いてほしかったのだ。
ずっと胸にためていたものを吐き出したかった。
「そう、それは辛いわね。仲間に恵まれなかったなんて」
一通り話し終えると、少女は肩に手を置いて慰めてくれた。
「でも仕方ないさ。僕には結局実力が無かったから仲間と言えるのができなかった」
気持ちが落ち着いてきた青年は、ようやくこの少女のことが気になった。
自分になど話しかけてくるのはいったいどういう子なのだろうか。
「ところで、君はどこからきたんだい? その衣装、ちょっと違う感じがするから、セレドア地方かい、それとも……キータル高原かい?」
違った文化を持つ遊牧民、あるいは高原地方の地域をあげた。
「ふふ、もっと遠くよ」
だが、少女は笑って答えない。ますまず謎の少女だ。
「君は偉いな、その歳でたった一人でこの世界を渡ってるなんて。寂しくないのかい?」
女性冒険者は珍しくないが、男でも一人を貫くのは難しい。その苦労は並大抵でないことをルシオは身を持って知っていた。
「その方が気が楽なの、わたしにとってはね」
「ますます凄いな。僕は冒険者がこんなに大変だとは思わなかった……物語のようには上手くいかないもんだって」
ルシオは幼い頃からの思い出を語った。昔の勇者の冒険譚を。
そして自分に重ね合わせたが、誰にもできない物語だからこその冒険譚であることを見落としていた。
「幼なじみの娘にも、あんたには無理だって笑われて……思い切って自分の夢をうちあけてみたんですが、無惨な結果」
「察するわ、あなたのーー想い人だったのでしょう?」
「なんでそれを……」
「だから、顔に書いてあるわよ」
また顔をごしごし擦る。ルシオはすぐ顔にでる性質であった。流石に今度は嘘とはわかっての仕草である。
「彼女にも言われてしまって、それで見返してやろうと意地になったのね」
少女はルシオの心をあっさり見透かす。
「そこまでわかるんだ。たまたま来ていた冒険者一行に、勢いに任せてなんでもやるからって潜り込んだ」
書き置きを残して、故郷を飛び出した。
「それでリディナ王国を飛び出したんだ。立派な男になって見合うだけの男になって帰るって」
「随分遠くから来たのね。リディナ王国はずっと東の国でしょう?」
だが、すぐに現実に直面した。
旅の道中では、いいように雑用に使われて、ろくに戦いにも参加させてもらえない。
そのうち要領がよくないことを見抜かれて、体よくさよなら。
勇者の世界は実力主義。
仕えないと思われたら、あっさり切られるのが現実だ。
渡り歩いて、なんとか帝都にたどり着いたが、ここでまた放出された。
お前なんかもう仲間でもねえ。ミスしやがるし、
「それが今はこの有様さ……」
ふいに杯に残った酒を飲み干した。見知らぬ少女剣士にたまっていたものをぶちまけてすっきりした顔に変わった。ようやく夢から醒めて現実に向き合う気になった。
「やっぱり俺には無理だったんだ。ばつが悪いけど……故郷へ帰ろう」
今度は強い酒にもむせない。そして決意を込めて立ち上がろうとする。
「待ちなさい、ルシオ」
そのやっと芽生えた決意を遮るように腕を引っ張った。
「な、なんだよ、君は……」
「あきらめるのが一番いけないと思うわ」
ルシオは困った顔をした。励ましてくれるのだろうが、せっかくの決意が台無しだ。
撤退する決意は進む決意よりも難しい。
「あなたも冒険者のはしくれ、でしょう? なら冒険で事態を変えたらどう? 大きな成果をあげて流れをかえるのよ」
少女の問いかけは、ルシオの下した難しい決意を溶かしていく。
あなたも冒険者、という甘美な響きに心が揺らぐ。




