39 幕間 冒険者パーティーを追放されたけど何故か天才美少女剣士が仲間になってくれて最強過ぎる①
帝都バロンで最大とされる酒場、「黄金の三日月亭」は、今日も賑わっていた。
一度に千人の客を収容することができ、それに劣らない料理人従業員がめまぐるしく働く。
料理も山海珍味あらゆるものが取りそろえられ、各地で造られた美酒が並べられる。
朝も昼もあらゆる階層、職業の者が訪れる。
商人、兵士、旅人、そして王侯貴族もお忍びで。
帝都に行ったならば、ここを訪れるべし、とあまたの旅人が言い残した。
「おい、こっちにも酒を持ってきてくれ」
酒を旨そうに飲むもの。
「くうー、うめえ。この鳥の串焼き、最高だ」
料理に下鼓を打つもの。
舞台では美しい踊り子が舞う。
歓声、おひねりが飛び交う。
「いいねえ、都の女は色気もひと味ちがうって」
世界から冒険者が集まる酒場としても、その筋の者に知られており、今日もそこかしこのテーブルでは、多くの剣士や戦士風情のものがテーブルで酒を酌み交わしていた。
世に再び魔物がはびこり始め、人々に不安がもたげているが、冒険家業を生業とする者にとっては、ふってわいた好景気だ。
「何かいい話はないか」
「みろよ、これ。倒した魔物の牙で作った首飾りだぜ」
そこかしこで情報交換が行われている。
「あの洞窟では奇跡の宝石が見つかるらしい」「ラーム渓谷で新しい竜がでたらしいぜ」
一旗揚げようと息巻く地方から出てきた者。
もちろん、普通に酒を飲みにきた商売人、職人、王宮の非番の兵士まで。
数多な人種の入り乱れるこの酒場では、ギルド以上に貴重な情報が取り交わされる。
欲望と名声、欲望と見栄が行き交い、渦を巻いていた。
「ちくしょう……どいつもこいつも景気いい面しやがって」
その広い客席の一番壁際、小さな席に一人の青年が酒を煽っていた。
そして酒場に集う夢や野心に満ちあふれた無数の顔と顔を、不機嫌そうに眺めていた。
「なんで俺だけいつもこうなんだ……」
手に持っていた杯を再びのどに流し込む。
「ごほっうぐ、」
元々酒は苦手な上に、杯に注がれているのは、「女神の火酒」と呼ばれるとても強い穀物酒だ。古来英雄豪傑が嗜んだとされるが、ほんのりと苦みとえぐ味があって、癖が強い。そんな酒を一気に無理に飲んだせいで、喉が焼けるように痛く、すぐにせき込んだ。
それでも、青年は今日は酒で酔いたい気分だった。
理由は冒険者パーティーを追放された。
つい10日ほど前、リーダーから突然告げられた。
「もうこのパーティーにお前の居場所は無い」
ただそれだけ。
仲間と思っていたメンバーからの蔑むような眼、他人をみるような眼が突き刺さり、耐えられず飛び出した。
たちまち寄る辺の無い身となった。仕事を探さないといけない。
ここ何日かは帝都の冒険者ギルドに最低級の剣士として登録しゴブリン退治、害獣駆除など安い依頼でしのいできた。
だが昨今、都に冒険者、勇者が押し寄せているおかげで、仕事のとりあいになっており、依頼を受けにくくなった。
他から声はかからず、手持ちの金ももう尽きかけている。
かといって今更、冒険者を廃業して、商人、職人など他の仕事をする気にもならない。
それならなんのために勇者を志し、故郷を離れて苦労してこの帝都までたどり着いたのか。
「それにこのまま、帰ったらいい笑い物さ」
絶対に名をあげてやる。
そう言って青年が故郷を飛び出したのは、一年前。
魔物が地にはびこりだして、各地で我こそは勇者と名乗りをあげて、各地から集まり、散ってゆく。冒険者の時代が到来した。
そんな中で、田舎に閉じこもっていることなどできなかった。
自分の力を試したい。
村を通りがかった旅の勇者一行に頼み込んで、メンバーに入れてもらった。
幼い頃から夢見た冒険者となって旅をする。
周囲が止めるのを聞かずに、強行し新天地へ飛び出した。
だが、すぐに世間は広いことを知った。
ちょっと剣術が上手いぐらいでは、たかが知れていた。
世の中には実力のあるものが沢山いて、自分など及びもつかない。
すぐに底の浅さを見透かされ、最初に加わった旅の一行もすぐにお払い箱になった。
その次の冒険者一行も、使いぱしり、雑用、こき使われたあげくに逃げ出した。
仲間を作れず、かといって一人で傭兵家業をできるほど実力も器量もない。
勇者崩れ。彼、ルシオのような者をそう呼ぶ。
旅だった先で仲間を失い、また故郷に帰ることもできずに、町や村をうろついている。
魔王討伐で一旗あげようとする者があちこちにいる一方で、そういう者も珍しくない時代だった。
故郷へ錦を飾るなど夢のまた夢。
「ううっ」
酔いが回ってきて、急に涙がこみ上げてきた。
金がついに尽きたルシオは決断に迫られていた。
今手持ちの最後の金で故郷に帰る船便の旅券を買うか。
それとも冒険者として、華々しい手柄を立てるなどの逆転にかけるか。
名が売れれば、仲間も選び放題、金も募り放題。だが今のルシオにとっては遠い夢だった。
「あなた、大丈夫?」
いつの間にか、テーブルにつっぷして泣いていたルシオの隣の客席に一人の女が座っていた。
銀髪。
そして透き通るような白い肌。
美しい。それも妖しく気高い。
身につけている防具、そして腰に剣を差しているから、剣士だろう。
女剣士は時たまいる。
ただし、この少女ほど年若い子はそうはいない。
「あ、ああ。大丈夫だよ」
倒してしまった杯を起こし、塗れてしまった机の上を吹く。
「そう? でもさっきから酒を煽っては、せき込んだかと思うと、泣き出して……忙しそうね」
「ごめん、心配かけたようだね」
「何か悩み事でもあるのかしら」
「え? な、なんで……」
「だって顔にかいてあるわ」
顔をごしごしふいた。
「フフ冗談よ信じないでよ。こんな簡単な嘘」
「なんだよ……ひどいな」
改めて少女のいでたちを見てみた。屋内にもかかららず、マントについているフードを深くかぶっている。




