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25 無事朝を迎えました

「まだ他にいるかもしれないから、ここから動くなよ」


 勇者様とルビーさん、お二人は念のため周囲に目を光らせています。

 シルヴァさん、マリーさんの後衛組も錫杖や杖をまだ構えて完全には警戒を解いていません。

 そしてわたしはそれをよそに何か得物が無いかの確認。

 魔獣ですと、珍しいものが手にはいることもあるのですが……野生の狼では、皮と肉ぐらいです。


「みなさん、どうしますか?」


 大したお金にはなりませんが、一応持って行くかどうか確認をしましょう。


「いや、いいよ。エレーナ」


 お肉屋さんに持って行くと、わずかなお金と引き替えてくれたり、処理してくれます。ただし、かなり臭いがきついので香辛料などを沢山使って長時間煮込まないととても、食べられたものではありません。

 グラスタニアには、強いお酒と一緒に飲むと美味という人が年配の片に結構いるようですが、わたし自身もそれほど狼の肉は好みませんし、パーティーメンバーもこれでお酒でも一杯……という人はいません。

 結局打ち捨てることにしました。

 まあ、お肉に処理するのも面倒ですし。


 落ち着きを取り戻すと、また眠気がしてきました。

 朝まで少し時間があります。 

 まだまだ空は星が輝いています。


「まだ朝まであるし、お休みください、ですよ」


 シルヴァさんが結界を張り直す作業をしつつ、次の見張りをしてくれることになりました。

 皆でお礼をいいつつ、それぞれ寝床へ帰還。


 以後この夜は何かが襲ってくることはありませんでした。




 そして朝になりました。


「よいしょっと」


 わたしは今、ちゅんちゅんという鳥のさえずりを聞きながら、鍋を火にくべてます。

 空はしらじらとあけてきています。

 今日もまた長い馬車の旅。

 朝は出発の前に、簡単に食事をすませるので、そのための準備を一人しているのです。

 これもやはりわたしの仕事。一番早く起きて支度するのです。

 よく寝坊することもありますが。


「ふわあああ……」


 あくび一つ。

 前世も今もスタミナ不足は変わらず。また寝床もまともではありませんので、昨日の疲労感はどっとでます。

 まあテント無しで、ただ毛布にくるまって寝ることもありますので、昨晩の寝床はだいぶましです。

 朝あちこちが痛くなります。 




「おはよう、エレーナ」

「おはようございます、勇者様。昨日はお疲れさまでした」


 ペコリ一礼。勇者様への敬意は怠りません。


「ああ……おはよう」


 眠い目を擦ってのんびり起きてくるみなさんをパンとお粥をごっちゃにした朝ご飯でお出迎えします。

 鍋がいい感じでぐつぐつ煮えています。

 勇者さまは、たき火のそばの石の上に腰掛けました。


「おはよう、エレちゃん」

「エレーナ、ふあ……」 


 続いてシルバさんとルビーさんも起きてきました。


「皆さんもお疲れさまでした。今日は街に着くといいですねぇ」

「ああ……」


 二人ともまだ眠そう。

 やっぱり襲撃があった夜は頭がさえて眠りも浅くなってしまうんですよね。

 そして、法術を使って一番精神を消耗したマリーさんは一番遅く起きてきました。

 昨日は、お疲れさまでしたと声をかけたら、当然ですとツンと返されてしまいました。

 嫌われてますね。わたし。昨日あんなふっかけましたから。

 それでいて戦闘では役立たずだから、ほんと、顔がありません。

 でも気にしてはいません。気にしたら勇者メンバーとの旅はやってられません。

 途中で魔法の一つでも覚えれば格好いいのですが、あいにくその才能はわたしにはありません。

 わたしがレベルアップして覚えた能力といえば、面の皮が厚くなったことぐらいでしょう。


 ともかく朝食の時間です。

 皆さんに一食ずつお椀を渡します。


「どうぞ」


 マリーさんにもお皿を差し出します。


「ご苦労様です」

「いえいえ」


 朝食に作った雑穀のお粥をマリーさんに気持ち多めに入れました。

 頑張っていただいたせめてもの気遣いです。

 夜襲は頻繁にあるわけではないですが、決して始めてではないので、みんな慣れたものです。

 そんでもっていざ朝食。


「昨日はルビーのお手柄だな、いつもあんな感じだったらいいんだけどな」


 さすがリーダーの勇者様は、他のメンバーを労っておられます。


「流石、冒険者ギルド出身ですね」

「いやー、勇者様がすぐに来てくれたからこっちは助かったよ」


 昨日は、もっとこうすれば上手くやれたななどとプチ反省会などを食べながらします。

 何もしていないわたしは、ニコニコして聞いているだけです。

 他の方は必死に命かけてたたかっているのに何もしていないのですから、何も言えません。

 異世界に来て勇者パーティーに加わって、わたしは何をしてるのか思わず自問自答。

 でも、このメンバーの方たちは、そのことを腐す人はいませんからその点いい方ばかりですよね。 


「ああ、エレーナさん」


 マリーさんに突然声をかけられびくっとなるわたし。きっとお小言の一つでももらうかと予想。


「はい、なんでしょう」

「手袋ありがとうございました」


 うわ。ちょっとうるっときたかも。

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