金属の聖女
第1章:女児国
2021年1月1日 金曜日。
一本の赤い糸の絆が現れ、運命の渦を引き寄せた。今回、テヒモシンと共にいるのはネーベルセレとギギュウムだ。
ネーベルセレが静かに呪文を唱える。真っ白な雲の帯が足元に集まり、三人を優しく空へ持ち上げた。彼らは果てしない海の上を滑るように進み、まったく見知らぬ地平線へと向かう。雄大な大陸が前方に徐々に姿を現した。それはテヒモシンの記憶にあるどの地図にも存在しない土地だった。
「どうしてこの大陸は地図に載っていないんだ?」
テヒモシンは好奇心を抑えきれずに尋ねた。
ギギュウムは、膨大なデータ庫の知性を宿した瞳を輝かせながら答えた。
「ご主人様、現在のほとんどの地図は16世紀のメルカトル投影法を使用しています。この投影法はヨーロッパ中心に偏っており、『三域大陸』が右下の隅に押しやられてしまいます。多くの簡略化した地図では切り取られたり、単に忘れ去られたりしているのです。」
「三域大陸……この土地の名前ですか?」
ネーベルセレが首を傾げて尋ねた。
「その通りです。」
ギギュウムは頷き、相変わらずプログラマのような平坦な口調で答えた。
地面に降り立った瞬間、古く神聖な空気が一行を包み込んだ。
「ここはどこ?」
「ここは『女児国』という国家の聖なる大地です。」
テヒモシンは呆然とした。「女児国? まさかここは女性しかいないのか?」
「正確には違います。」
ギギュウムが説明を続けた。「男性も存在しますが、この社会は完全な母権制で運営されています。女性が政治・権力・財産の血脈を握っています。彼らは豊穣、華やかな美しさ、そして繁栄の象徴を崇拝します。この社会では、女性のバストサイズが権力と発言力に比例するのです。」
テヒモシンはその奇妙な社会システムを聞いて冷や汗をかいた。ギギュウムはさらに言葉を重ねた。
「この国の男性は成人すると、義務として病院で精子を提供し、人工授精によって子孫を残すことになります。その後、全員が国境へ送られ、生涯を軍隊として国家防衛に捧げます。」
ゴーン! ゴーン! ゴーン!
重く響く銅鐘の音が静寂を切り裂いた。それは侵略を知らせる警報だった。
「僕には……感じる……」
テヒモシンが振り返った。「新しい友達が危険に晒されている!」
強大な存在としての直感がテヒモシンを導いた。説明する暇もなく、彼は「光速」を発動させた。巨大な爆音と共にテヒモシンの姿は閃光の中に消え、ネーベルセレとギギュウムを後に残した。
「無事でいてくれよな、僕の新しい友達!」
テヒモシンが停止した先は、悲惨な戦場だった。炎に包まれた中、ただ一人「少女」が立っている。彼女の眼前には、数千万の敵軍の銃口が向けられていた。
テヒモシンは即座に少女の前に立ちはだかった。軽く手を振っただけで、恐るべき空間圧力が爆発した。一瞬のうちに、千万の軍勢は砂塵のように吹き飛ばされた。
「大丈夫か?」
戦場が静まり返った。少女はテヒモシンを見つめ、堪えきれずに彼を抱きしめて激しく泣き出した。その頃、残りの二人もようやく追いついてきた。
「戦争は本当に残酷ですね……見て、死体があちこちに。しかもみんなお年寄りばかりです。」
ネーベルセレが痛ましげに言った。
ギギュウムが周囲を観察しながら言った。「ここ数十年、女児国は娘しか生まれていません。国境守備隊だった男性陣は、今や白髪の老人ばかりです。」
少女が震える声で尋ねた。「あなたは……神様ですか? どうして一瞬で……」
テヒモシンはわざと息を荒げ、疲れ果てた様子を装った。「君を守るために全力を尽くしたよ。これからは、君が僕を守ってくれると嬉しいな。」
少女の瞳が不思議なほど強く輝いた。「女児国の名誉にかけて誓います。あなたをお守りします。たとえこの命を捧げても!」
「そこまではいらないよ。」
ネーベルセレ:「ご主人様って、そんなに強いんですか?」
「ギギュウム、彼女が何者か調べてくれ。」
テヒモシンは話題を逸らすために指示を出した。
ギギュウムの瞳が輝いた。「データ解析の眼」。
「ご主人様、彼女はクロム(Chromium)――現在知られている最も硬い金属の化身です。」
「つまり、金属を操れるってことか?」
テヒモシンが少女に尋ねた。
少女は無邪気に笑った。「何言ってるんですか? 私は普通の人間ですよ。金属を操るだなんて。」
テヒモシン:「君はモゴドト神の力によって生み出されたばかりだ。存在時間で言えば、まだ……3時間しか経っていない。」
「ははは! 3時間? 面白い冗談ですね!」
「どうやって証明したら信じてくれるんだ……」
この頑固さには本当に頭が痛くなる。
「とりあえず街に入ろう。」
テヒモシンは話題を変えた。「そうだ……君の名前は?」
「私の名前はテツです。」
テヒモシンは眉を上げた。「テツ? 随分男らしい名前だな。」
「だって私は男ですから!」
少女が当然のように答えた。
三人が一瞬固まった。
ネーベルセレが驚いて叫んだ。「え? 誰があなたを男だって?」
「国境のおじさんたちがそう言ってました。男の人だけが前線で国を守るって。だから私の名前もおじさんたちが付けてくれたんです。」
ギギュウムがため息をついた。「ここのおじいさんたちは歳をとりすぎてボケちゃってるのか……?」
ネーベルセレ:「ご主人様、ちょっと来てください。」
雪の上に横たわる老いた死体たちを見て、テヒモシンの胸は重くなった。
「どの国がこんなことをしたんだ?」
「ここのおじさんたちから聞いたんですけど、『小人国』の兵士だそうです。」
テツが答えた。
ギギュウムが素早く情報を提供した。
「三域大陸には三つの国があります。小人国は豊かで人口が多く(1億5千万〜3億人)、英雄国は砂漠の真ん中にあり人口は(1千万〜3千万)で元々中立だったのですが、何故か小人国の軍に道を貸しました。そして最後にこの女児国――この厳しい氷雪の大地で、人口は5百万人にも満たないそうです。」
テヒモシンは目の前の少女を見て優しく微笑んだ。
「これから、僕が君に新しい名前を付けるよ。君の名前は『Saintlyshu』だ。中国語で金属は『金屬』、英語で聖女は『Saintess』。合わせて、君は金属の聖女という意味になる。」
「どうして名前を変えるんですか? 私は男の子ですよ!」
(まだ自分が男だと思っている)彼女が抗議した。
テヒモシン:「君は女の子だよ。この名前の方が君に似合ってる。」
「違います! 私は男です!」
ギギュウムが首を振った。「この『金属娘』はなんて頑固なんだ……」
テヒモシンはため息をついた。彼女に自分の性別を理解させるのは、まだ長い道のりになりそうだ。
「ネーベルセレ、ギギュウム、君たちはここに残って国境を守り、戦場を片付けてくれ。僕はSaintlyshuと一緒に王都へ向かい、指導者たちに会う。」
テヒモシンとSaintlyshuの影が白い雪の上に長く伸び、遠くの山々――女児国の中心が隠れている方向へと向かっていった。
第2章:女児国の恩人
死の嵐が去った後、濃厚だった火薬の匂いは恐ろしいほどの静寂に取って代わられた。テヒモシンは、まだ自分を粗野な軍人だと思い込んでいる少女の方を振り返った。
「もう安全だ。みんなを避難壕から出してあげて。」
Saintlyshuは大きく息を吸い、軍隊でしか使わないような力強い声で叫んだ。
「全員、外に出ろ! 敵は撃退した!」
古びた地下壕から、何千人もの女性たちが泥まみれで震えながら姿を現した。彼女たちは数分前まで地獄だった戦場を見回した。そこに残っていたのは、無惨な鉄屑の山だけだった。
「みんな、彼にお礼を言って!」
Saintlyshuはテヒモシンを指差した。「この人が一人で侵略軍を押し返してくれたんだ!」
ボロボロの前線軍服を着ていても、Saintlyshuの毅然とした態度が彼女の言葉に絶対的な重みを与えていた。たちまち、数万の人々が冷たい地面に跪いた。
「私たちのような卑しい者を救ってくださり、ありがとうございます!」
「恩人です! 女児国の救世主です!」
その合唱は一帯に響き渡った。威厳ある宮殿の最上階バルコニーから、女児国大統領は全てを静かに見守っていた。絶対君主制が支配するこの国で、この光景は決して小さな衝撃ではなかった。
Saintlyshuはきょとんとした。「どうしてみんなが彼を恩人って呼ぶんですか?」
近くにいた老婆が震える手でSaintlyshuの服の裾を掴み、涙ながらに説明した。
「前線が落ちていたら、小人国の連中が街に雪崩れ込んでいたでしょう。私たちのような弱い立場の者は、真っ先に踏みつけにされるはずでした。あの方は敵を倒しただけでなく、この土地の魂を鬼畜どもから救ってくださったのです。」
Saintlyshuはテヒモシンを見つめ、純粋な憧れの眼差しを浮かべた。「彼は私も助けてくれたんです。」
その後すぐ、テヒモシンとSaintlyshuは宮殿の奥深くに召喚された。内部の空気は非常に緊張していた。
「小人国の全軍団は領土から一掃されました。」
Saintlyshuが簡潔に報告した。
大統領の隣に座る女首相は目を細めてSaintlyshuを見た。「どうしてこんなところに女の子が前線にいたの?」
「え? 私……本当に女の子なんですか?」
Saintlyshuは呆然として周りを見回した。返ってきたのは、居合わせた全員の力強い頷きだけだった。
女首相は手を振って混乱を振り払った。「性別の話は後回しにしましょう。続きを。どうやって一人で六千万の軍隊を倒せたのですか?」
テヒモシンは驚いた。「六千万? そんなにいたのか?」
「国防大臣、衛星データを公開しなさい。」
大統領が冷徹に命じた。
巨大なホログラム画面が広間に現れた。数字が踊り、絶望的な現実を描き出した。
【小人国の侵略軍】
・兵力:60,000,000人(人海戦術)
・装甲:各種戦車500,000両
・空軍:攻撃ヘリ200,000機、戦闘機5,000機以上
・火力:砲兵100,000門+数千の発射体弾道ミサイル
【女児国の防衛軍】
・兵力:1,000,000人(大半が老人と新兵)
・装甲:10,000両
・空軍:ヘリ1,000機
「あれはすでに決定づけられた虐殺でした。」
女国防大臣は歯ぎしりした。「あなたがいなければ、この国は24時間以内に消えていたでしょう。」
テヒモシンは顎を軽く撫で、話題を変えようとした。「なぜ小人国はここまで狂ったように攻めてくるのですか?」
「独裁者の貪欲さです。」
女大統領が答えた。「奴は三域大陸全体を領土にしようとしています。」
テヒモシンは眉をひそめた。「ではなぜ英雄国を侵略せず、小人国は……いや、なぜ英雄国を素通りして女児国を攻めたんですか?」
女首相は迷わず即答した。
「千年の歴史の中で、小人国は英雄国に一度も勝ったことがありません。」
短い一言だったが、千年分の重みがあった。
テヒモシンは数秒考え込み、さらに質問を続けた。
「英雄国は中立国だと聞きました。なぜ小人国に領土を貸して女児国を侵略させたのでしょう?」
女財務大臣が冷たい笑みを浮かべた。実利を隠さない笑みだった。
「お金です。英雄国は小人国から1,000億ドルと1,000トンの金を受け取って領土を貸したそうです。」
テヒモシンは声を低くした。「英雄国は……小人国が女児国を飲み込んだ後、自分たちが次に狙われることを恐れないのですか?」
女国防大臣は小さく息を吸い、背筋を伸ばした。
「戦略界では現在、四つの仮説が議論されています。」
部屋が水を打ったように静まり返った。
仮説1:英雄国は絶対に侵略不可能な防衛システムを持つ
・小国ながら先進軍事技術、侵入困難な砂漠地形、効果的なゲリラ戦術を有する可能性。
・歴史上、小人国は一度も勝てていないため、正面衝突を恐れている。
仮説2:強力な抑止力兵器の保有
・大量破壊兵器、またはより強大な勢力との秘密同盟を持つ可能性。
・攻撃すれば制御不能な結果になると小人国は理解している。
仮説3:不敗の歴史
・前述の通り、英雄国は小国でありながら千年もの間、小人国に一度も敗北していない。この事実は特別な戦術・軍事力・地理的優位性を示唆しており、小人国は深入りすることを避けている。
仮説4:内なる強さへの自信
・精鋭部隊や独自の防衛戦略を持ち、小人国が越えられない何かがある。1,000億ドルと1,000トンの金を受け取ったのも、より大きな取引の一部であり、自国の主権を守れると確信している可能性。
テヒモシンは何も言わなかった。しかし彼の心の中で、一つの確信が生まれていた。
英雄国——決して単純な国ではない。
会談は続き、政治・戦略・歴史に関する仮説を深く掘り下げていった。小さな国でありながら、大陸全体が警戒せざるを得ない力を持つ国について。
大統領はテヒモシンを見て、感謝の眼差しを向けた。「あなたはこの国を救ってくれました。何でも望むものを叶えましょう。」
テヒモシンはSaintlyshuを指差した。「彼女が本当にこの国の国民かどうか調べてください。」
顔認証と国家データベースの照会を経て、画面に結果が表示された。【データが見つかりません】
「この少女は当国に所属していません。」
女首相が断言した。
Saintlyshuは茫然とした。「そんな……では私はどこに属しているんですか?」
テヒモシンは彼女の目を見つめ、優しく微笑んだ。「もう言っただろう。ここは君の居場所じゃない。君の居場所は……僕のそばだ。」
Saintlyshuの顔が一瞬で真っ赤になった。彼女はどもりながら言った。「あ……恩人様……そんなことを言われたら感動してしまいます。」
「そろそろ家に帰ろうか?」
「でも……あなたが去ったら、また小人国が攻めてきたらどうするんですか?」
女首相が心配そうに尋ねた。
テヒモシンは時計を見て答えた。「安心してください。あと5分以内に、国際連合平和維持軍と国連代表が到着します。彼らがここに足を踏み入れた後で小人国が発砲すれば、世界全体に宣戦布告したことになります。あいつらもそこまで馬鹿じゃないでしょう。」
テヒモシンはSaintlyshuと共に宮殿を後にし、政府関係者と共に戦没者の遺体回収に向かった。
国境では、NebelselleとGigyeumuが今も神のように佇み、倒れた者たちを野獣から守っていた。
Nebelselleが軽く手を振ると、幻想的な霧が一行を包み込んだ。彼女は真っ白な雲を召喚し、皆を優しく空へ持ち上げた。
「わあ! 私もこんなことができるんですか?」
Saintlyshuが足元の雲を見て興奮した。
「できないよ。」
テヒモシンが笑った。「人それぞれ、違う能力があるんだ。」
Gigyeumuは頭の中のデータを調整し、付け加えた。
「だから言ったでしょう。あなたの能力は飛ぶことではなく、金属を操ることです。覚悟を決めてくださいよ、『頑固聖女』さん。」
雲は一行を乗せて大洋を越え、馴染みの家へと向かった。背後には、三域大陸の謎と、鋼と光によって刻まれたばかりの新しい伝説を残して。
第3章:ご主人様の護衛
家の扉をくぐった瞬間、懐かしく温かな空気がテヒモシンを包み込んだ。
HuaZessin、JoouSeele、DeesSwano、DaljoaMoonがいつからそこに待機していたのか、全員揃って声を合わせた。
「おかえりなさいませ、ご主人様!」
テヒモシンは軽く頷き、後ろで所在なさげにしている少女に合図した。
「みんな、顔合わせをしてくれ。新メンバーだ。」
しかし、次の自己紹介の展開は、彼が顔を覆いたくなるようなものだった。それは新兵歓迎会というより、世界に裏切られた者たちの集団心理療法のようだった。
Nebelselleが最初に進み出て、冷たい声で言った。
「私は長女。人類が大嫌い。奴らは私を誹謗中傷し、攻撃したわ。」
HuaZessinが燃えるような瞳で続けた。
「私は次女。人類が大嫌い。奴らは私を残酷な炎で焼き殺そうとした。」
DeesSwanoは額の薄い傷跡に指を当てながら。
「私は三女。人類が大嫌い。奴らに頭を殴られて血まみれにされた。」
Gigyeumuは眼鏡を押し上げ、機械のような平坦な声で。
「私は四女。人類が大嫌い。奴らの裏切りと殺害計画のせいで。」
DaljoaMoonが小さく身震いした。
「私は五女。人類が大嫌い。奴らは私に致死性の電流を浴びせて拷問した。」
重苦しい「怨念」の空気の中、JoouSeeleだけが穏やかに微笑んだ。
「こんにちは、私は六女。人類に対しては……特に問題はないわ。」
全員の視線が最新メンバーに集中した。Saintlyshuはごくりと唾を飲み込み、真剣に真似をした。
「こんにちは、皆さん。私は新入りです。私も人類が大嫌いです! 奴らは私に何百万という銃口を向けてきました。でも幸い、恩人が守ってくれたんです。」
「恩人?」
全員が同時に声を揃え、怪訝そうな目でテヒモシンを見た。
テヒモシンはため息をつき、手を振った。
「こいつが僕のことをそう呼んでるんだ。放っておけ、好きに呼ばせろ。」
こうして、皆がテヒモシンを「ご主人様」と呼ぶ中、ただ一人「聖女」Saintlyshuだけは「恩人」という呼び方を頑なに守り続けた。それは彼女が命の恩を決して忘れないという、忠実な証だった。
新居での初日は、Saintlyshuの戸惑いと興奮に満ちていた。彼女が自分自身を守れるようにするため、テヒモシンは特別訓練を始めた。
「集中しろ、Saintlyshu。血管の中を流れるクロムの力を感じ取るんだ。」
テヒモシンはまず、鋭い石を次々と彼女に向かって投げた。Saintlyshuの反射神経は驚異的だった。手を出す必要すらなく、彼女が軽く眉を寄せただけで、地面から光り輝く金属の壁が突然生え上がった。
ガキンッ!
石は頑丈な装甲に当たって跳ね返り、わずかな傷跡すら残さなかった。
「上出来だ! 次は攻撃に転じろ。」
Saintlyshuは目を閉じ、すべての意志を掌に集中させた。強烈な圧力が放出され、一瞬のうちに無数の鋭い金属の刃が嵐のように飛んでいき、近くの古木に深々と突き刺さった。
彼女の能力はテヒモシンの予想を遥かに超えていた。単に体を不壊の装甲に変えたり武器を作り出したりするだけでなく、Saintlyshuには「金属再生」の力もあった。傷がつくとクロムの分子が自動的に再結合し、即座に修復される。さらに周囲の環境を「金属化」する実験も始め、柔らかい地面を冷たく鋭い鋼の棘の罠に変えるほどだった。
一軍団を壊滅させうる力を持ったにもかかわらず、Saintlyshuは変わらない習慣を保っていた。それはテヒモシンの「影」になることだった。
彼女は24時間、常に彼の傍らにいた。本を読んでいる図書室でも、庭を散歩している時でも、他のメンバーと話をしている時でさえ、Saintlyshuは常に正確に三歩後ろに立ち、鋭い目で周囲のすべての動きを警戒し続けていた。
テヒモシンは彼女に定期的な「給料」も用意した。初めてのお金を受け取った時の彼女の満面の笑みを見て、彼女が本当にこの家族の一員になったと感じた。
しかし、一つだけ彼だけが知っていることがあった。
Saintlyshuが彼の護衛に徹するのは、以前の言葉を心底信じているからだった——「アンさんは全力を尽くして私を守ってくれた」。存在時間わずか3時間の、真っ白な心を持つ彼女は、本気で彼が今「弱っている」と思い込み、守ってあげなければならないと信じていた。
実際、あの言葉は彼女に自立心を持たせ、自分に価値があると思わせ、彼に過度に依存しないようにするための方便だった。
ドアの外で小さくも逞しい背中を預けて警護に立つSaintlyshuを見て、テヒモシンは静かに微笑んだ。小さな嘘一つで、絶対的な忠誠と鋼のような意志を得られたのだ……。もしかしたら、それは悪くない取引なのかもしれない。
第4章:侵略者が飲み込まれる時
2021年4月5日 月曜日。
今朝のニュース速報は、衝撃的な情報で世界を揺るがせた。英雄国の東部にある戦略軍事基地が攻撃を受けたというものだ。立ち込める黒煙と轟音に、国際世論は驚愕を隠せなかった。
急を要する事態に、テヒモシンは即座に出発した。今回同行するのはSaintlyshu、DeesSwano、JoouSeeleの三人だった。
「しっかり掴まってて!」
DeesSwanoが空中に軽く手を滑らせると、幻想的な光の楽譜が浮かび上がり、互いに絡み合って浮遊する絹のような帯となった。一行はその「音楽の舟」に乗り込んだ。一歩ごとに澄んだ音色が響き、彼らは風を切り裂いて東へと疾走した。
しかし、英雄国の軍事基地の座標に到着した時、そこは異様なほど静まり返っていた。交戦の痕跡すら見当たらない。
ドンッ!
遠方から地響きのような爆音が響き、黒い煙の柱が激しく立ち上った。
テヒモシンは目を細めて地平線を見つめた。「あの煙の上がってる方向は……小人国の領土か?」
彼は事実に気づき、呆然とした。かつて侵略帝国だった土地に、今や英雄国の旗がはためいていた。
「いつから小人国が英雄国の領土になったんだ?」
DeesSwanoは燃える村々を見て、毅然とした声で言った。
「ご主人様、それは後で考えましょう。今はまず、住民を救うことが先です!」
「Saintlyshu、行って助けてあげて!」
テヒモシンが指示を出した。
しかし、普段の熱血さとは裏腹に、Saintlyshuはその場に立ち止まったまま、憎悪の炎を瞳に宿して言った。
「私は助けません。あそこは私の故郷を踏み荒らした国です。彼らは代償を払うべきです。」
テヒモシンは彼女の肩に手を置き、声を低くした。
「戦争を始めたのは権力者たちだ。民衆に罪はないよ、Saintlyshu。」
その言葉が終わった直後、大地が激しく揺れた。煙の中から、三体の巨大な黒い影が死の息を吐きながら飛び出してきた。人間に似た姿をしているが、全身が灰色がかった奇妙な物質に覆われている。
「Saintlyshu! 絶技『金属の壁』を使え!」
反射的にSaintlyshuが地面を強く踏みしめた。ゴゴッという重い音と共に、輝くクロムの盾が大地から次々と生え上がり、一行を守る堅固な要塞を形成した。
テヒモシンは即座に瞬間移動を使い、Gigyeumuを現場に召喚した。
「Gigyeumu! すぐに分析してくれ。あれは何なんだ?」
Gigyeumuの瞳がデータ解析の青い光を放った。彼女は唸る生物たちをスキャンする——岩のような粗い皮膚、赤く濁った狂気の目、鬼神のような体躯を持つ存在。
「ご主人様……信じがたいですが、生体反応から判断すると、彼らは旧石器時代の先史人類です。」
「は? 250万年前の時代じゃないか!」
テヒモシンは自分の耳を疑った。「どうしてあんな異様な姿と恐ろしい力を持ってるんだ?」
「まずは倒してください。より詳細な分析のため、サンプルが必要です!」
Gigyeumuが急かした。
テヒモシンは頷き、鋭い眼光を宿した。
「Saintlyshu! 決着をつけろ! 連鎖斬撃——鉄剣分解!」
銀の矢のようにSaintlyshuが疾駆した。彼女の体から強大な金属圧力が迸る。一瞬で、手に持った剣が無数の微細な刃に砕け散り、光の粒子のような鋭い破片となった。それらが回転しながら死の旋風を巻き起こし、石のように硬い三体の皮膚を貫いた。
ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!
三体の先史怪人は苦痛の咆哮を上げ、細かな塵となって空中に消滅した。骨すら残らなかった。
「なるほど……そういうことか。」
Gigyeumuは残った塵を一握り掴んだ。「彼らは先史人類と『魔術の塵』が融合した存在です。」
「魔術の塵って何ですか?」
Saintlyshuは剣が元通りに戻るのを見ながら、きょとんとして尋ねた。
JoouSeeleがそっと近づき、微笑みながら説明した。
「長い話になるわね。要するに、以前巨大な魔術の石があったのだけど、Gigyeumuがそれを粉々に砕いて塵にしてしまったの。今はその塵があちこちで問題を起こしているというわけ。」
火災を鎮め、状況を安定させた後、テヒモシンは怯える住民たちに近づき、事情を聞いた。彼らの話に、一同は背筋が凍った。
小人国の軍が英雄国の領土を通過して撤退する際、すでに張り巡らされていた悪辣な罠に落ちたという。英雄国は一切の容赦なく、一夜にして隣国の軍事力を完全に殲滅した。軍を失った小人国大統領は、国民の生存と引き換えに全領土の併合条約に署名せざるを得なかった。
一人の住民が慌てて尋ねた。
「あの……さっき私たちを襲ってきた怪物たちは、一体何だったんですか?」
JoouSeeleが静かに答えた。
「彼らは先史人類です。」
住民たちは目を丸くし、身を震わせた。
「なるほど……原始的な本能のままなんだ。殺戮、虐殺、生肉を食べて栄養を補給……子供まで……」
Saintlyshuが冷たい声で言った。「なんて残酷な……」
ご主人様は首を振り、冷徹なほど落ち着いた声で言った。
「彼らは本能に従っているだけだ。道徳という概念は、彼らには存在しない。」
Gigyeumuが続けた。
「先史人類にとって、すべては一つの法則に集約されます。『狩るか、狩られるか』。それが彼らの生存思考です。」
DeesSwanoが腕を組んで言った。
「対話による平和は不可能ですね。彼らの言語は唸り声と身振りだけですから。」
テヒモシンはGigyeumuの方を向き、尋ねた。
「旧石器時代の人間が軍事基地を襲った理由は分かるか?」
「恐らく、彼らは証明したかったのでしょう。『真の力は機械にはない』ということを。」
Gigyeumuが分析した。
今まで静かに観察していたJoouSeeleが、ぽつりと呟いた。
「戦士こそが人生の到達点です。」
テヒモシンは彼女を見て尋ねた。「どういう意味だ?」
「ある古代文明、特に過酷な環境で生き延びてきた文明にとって……戦いと征服こそが唯一の生存手段なのです。彼らは肉体的な強さ、本能、そして尽きることのない戦士の精神を崇拝します。」
「さすが千年の魂だな。深く理解しているじゃないか。」
テヒモシンは微笑み、JoouSeeleの頭を優しく撫でた。彼女の頰がわずかに赤らんだ。
住民たちの生活を安定させた後、一行は静かにその場を去った。災厄から逃れたばかりの土地を後に——しかし、まだ平和を見出せぬまま。
第5章:死の大地の蘇生
2021年4月12日 月曜日。
小人国での惨劇からわずか一週間後、再び大きな衝撃が世界を襲った。緊急ニュースが伝えるのは、英雄国西部の重要農業地帯が激しい攻撃を受けているという情報だった。
今回、テヒモシンと共に同行するのはSaintlyshu、HuaZessin、DaljoaMoonの三人だった。移動速度を最適化するため、DaljoaMoonが重力操作の力を発動させ、一同の体を羽毛のように軽くした。Gigyeumuが開発した高性能飛行靴と組み合わせ、グループは風を切り裂く速度で空を滑るように進んだ。
しかし、周辺地域に到着した瞬間、鼻を突く腐敗した生臭さが一行を襲った。
「ここで何が起こったというの……?」
HuaZessinが愕然と呟いた。
かつてこの土地の誇りだった黄金色の稲田は、今や荒廃した戦場と化していた。木々はなぎ倒され、大地は毒に侵されたように真っ黒に変色している。大きな爆音も炎もなかったが、この死のような静寂はかえって恐ろしかった。
ゴゴ……ゴゴ……
大地が重いリズムで揺れる。地平線から巨大な影がゆっくりと姿を現した。動きは素早くないが、一歩踏み出すたびに地層が割れるほどの重さだった。
「あいつら、食糧庫を焼き払い、家畜を狩っている!」
DaljoaMoonが拳を握りしめた。
Saintlyshuは筋骨隆々とした獣皮をまとった生物たちを目を細めて見つめた。「あれは怪物じゃない……また旧石器時代の連中だ。」
「残ったものを守るぞ!」
テヒモシンが即座に指示を出した。「HuaZessin、DaljoaMoonは住民の避難と生存者の捜索を支援してくれ。Saintlyshu、僕と来い!」
二つの影が、農地を破壊する巨人の群れに向かって疾駆した。
「Saintlyshu! 絶対鉄斬!」
Saintlyshuは深く息を吸い、体内すべての金属磁場を活性化させた。一瞬で、戦場半径内の鉄鋼や金属片がすべて彼女の剣に吸い寄せられ、純白の輝きを放ちながら爆発寸前の爆弾のように激しく振動した。
彼女が全力で一閃を放つ。金属の刃は空気だけでなく、敵のあらゆる防御を切り裂き、爆散して無数の超微細な鋭利な破片となった。それらは扇状に広がり、先史侵略者たちの体を貫通し、触れたものをすべて分解した。巨人たちは苦痛の咆哮を上げ、虚空に溶けるように消滅した。
脅威が排除された直後、テヒモシンは瞬間移動でNebelselleを召喚した。
「Nebelselle、この土地を浄化する雨が必要だ。『雨雲回天』!」
Nebelselleが天に向かって手を掲げた。四方から黒雲が集まり、空が銀灰色に変わる。奇妙な雨が降り始めた——霧の乙女の意志による癒しのエネルギーを宿した、輝く雨だった。
「次はHuaZessinの番だ! 『生命の種子——大地回春』!」
HuaZessinは跪き、細い両手を黒く染まった大地に当てた。掌から「復活の種子」が輝きながら溢れ出し、破壊された土の奥深くまで浸透していった。癒しの雨と相まって、奇跡が起きた。
鮮やかな緑が驚異的な速度で広がり始めた。焼け焦げた稲の株が新芽を吹き、折れた木々が再び立ち上がり、青々とした葉を茂らせた。HuaZessinは最高レベルの「植物回復」スキルを発動させ、直接大地に生命力を注ぎ込み、すべての毒素を浄化した。
瞬く間に、死の大地は緑豊かな楽園へと生まれ変わり、草木の生命力と香りに満ち溢れた。
「なぜ先史人類は農業地帯を狙うんだ?」
テヒモシンが呟いたその時、Gigyeumuが突然、新型ジェット機を着陸させて現れた。
「私のデータによると、彼らは馬鹿げたことを証明しようとしているようです。『現代人は狩りの方法を忘れた』と。」
Gigyeumuが淡々と答えた。
「どうしてお前がここにいるんだ?」
テヒモシンが驚いて尋ねた。
「新型ジェットのテスト飛行をしていたら、皆さんを見つけただけです。」
彼女は平然と答えたが、誰もが彼女が密かに一行の行動を追っていたことを知っていた。
「悪いが、HuaZessinとSaintlyshuを家まで送ってくれ。」
Gigyeumuが頷いた。ジェット機が空を切り裂いて二人の少女を乗せて飛び去る中、テヒモシンとDaljoaMoonはNebelselleの柔らかな雲の上に腰を下ろし、穏やかな風に身を任せて屋敷へと戻っていった。背後には、灰の中から蘇ったばかりの大地が残されていた。
第6章:都市は鉄の檻
2021年4月19日 月曜日。
英雄国の南の首都——かつて繁栄と喧騒の象徴だったこの街は、今や混沌とした絵画と化していた。摩天楼は薄暗い煙に包まれ、アスファルトの道路は長い傷跡のようにひび割れている。不思議なことに銃声も爆音も聞こえず、ただ暗い路地から低く響く唸り声だけが、恐怖を濃密に漂わせていた。
地中から巨大な生物たちが這い上がり、原始的な憎悪をもって全てのインフラを破壊していく。Gigyeumuのジェット機から降り立ったテヒモシンは、冷たい眼光を宿して命じた。
「Saintlyshu、この混乱を終わらせろ! 金刀絶破!」
Saintlyshuは静かに頷き、体から冷たい金属の気を放った。彼女が手を振ると、鋭利な剣閃が空間を切り裂き、巨大実体の胴体を横断した。怪物たちは倒れ、まるで最初から存在しなかったかのように虚空へ溶け消えた。
「なぜ奴らは街の建造物をこんなに集中して破壊するんだ?」
テヒモシンは折れた電柱と通信基地を見ながら呟いた。
Gigyeumuが荒廃した景色を一瞥して答えた。
「彼らのメッセージは明確です。『都市とは人間を閉じ込める鉄の檻だ』と。彼らはその檻を壊し、全てを最も自然な状態に戻そうとしているのです。」
***
2021年4月26日 月曜日。
一週間の偽りの平穏の後、Gigyeumuが衝撃的な発見を報告した。
「ご主人様、奴らの巣窟を見つけました。英雄国北部『黒石山脈』です。」
そこは不毛の土地で、大量の黒曜石と火山岩が眠る地域だった。当初テヒモシンは、奴らが平和に共存するなら放置するつもりだったが、深刻な情報が入った——先史人類が大規模に女性を誘拐し始めているという。
「間違いなく、最も残虐な方法で子孫を残すためです!」
Saintlyshuが歯ぎしりした。
躊躇なく一行は出撃した。黒石山に到着した瞬間、眼前に広がった光景はまさに地獄だった。何百人もの女性たちが、先史時代の狩人たちに捕らえられ、奇妙な武器で監禁されていた。
「手を止めろ!」
テヒモシンの命令で、Nebelselleが濃い霧を召喚して敵の視界を奪い、DaljoaMoonが重力を巧みに操作して女性たちを煙の中を滑るように安全な場所へ運んだ。
後方ではHuaZessinが「復活の種子」を撒き、瞬く間に「植物回復」の緑が広がり、被害者たちを優しく包み込んで癒していった。
しかし、敵はもはや以前のものではなかった。彼らは進化していた。
「見て! 黒曜石で武器を作り、翼まで生やしている!」
HuaZessinが驚愕した。
彼らの手には鋭利な「黒牙の戦斧」や、光る部族の印が刻まれた「暗夜の槍」が握られていた。二段構造の槍が投げられると、風を裂く光の軌跡を描き、あらゆる障害物を貫通した。
「どれだけ進化しようと、私には勝てない!」
Saintlyshuが戦場の中央に進み出た。
彼女は究極の絶技を発動させた——鉄域滅世。
数万トンの金属が大地から飛び上がり、巨大な死の渦を形成した。Saintlyshuはその中心に立ち、金属と完全に同化し、威厳ある戦神へと変貌した。全金属塊が流星雨のように降り注ぎ、敵を粉砕しながら巨大な鋼の塊へと吸収していった。誰一人として逃れることはできなかった。
激震が収まった時、敵の巣窟は永遠の金属の窪地だけが残っていた。
「先史人類はデータ上、完全に抹消されました。」
Gigyeumuが確認した。
こうして戦いは終わり、貪欲な帝国たちの崩壊を招いた。英雄国と小人国の指導者たちはこの乱世の中で滅びた。そして今、新たな世界地図の上に、三域大陸は正式に『女児国大陸』と改名された——テヒモシンとその仲間たちに守護された、平和と再生の王国となった。
「みんな、帰ろう。」
テヒモシンは穏やかに微笑み、この地を巡る激動の旅の最後の章を閉じた。




